その2
かれこれ歩いて、もう五時間です。
まだ昼間なんですけど、夜通し歩いた祭りのあと並みに疲れてます。
似たような町並みが続いていてるので…もしかしたらぐるぐるまわってるのかもしれません。
…というか、何故に人がいないのでしょう?
…もしかして、この町は呪われてたり…?はたまた襲われたりしたのでしょうか?
ああああ、やめです、無理です怖いのダメ絶対!
こんなこと考えてたら本当に怖いことになりそうなので、取り合えず休む事にします。
先程町を散策してる間に神殿みたいな一際大きくて綺麗な建物を見つけました。多分あそこは公共施設だと思うんですね。なので休んでても怒られないだろうと仮定して、行ってみることにします。
「おぉ――」
やはり遠くから見るのと近くで見るのでは違いますね。なんて言うんでしょうか…パルテノン神殿みたいな?ちょっと詳しいことは分からないんですけどね、とにかく綺麗で神々しい感じです。回りが赤茶色などのレンガ造りの家ばかりなので、余計に神秘的な…というか、異質な感じがします。
近くに寄って見てみると…これまた白い石の柱はツルツルで、すべすべで綺麗でした。
とにかく入口の方に入ってみましょうか。
入口であろう門を潜るとテニスコート1つ分くらいのだだっ広い何もない広間があり、その一番奥にカウンターのような所があります。そのカウンターの奥には1つだけ大きな扉があります。やはりここにも人は居ないようです。床や、カウンター一面が大理石で…なんで言うんでしょうね…国会議事堂のもっと大きくて絨毯がないバージョンと言ったらいいんですかね?
奥まで歩いて大きな扉の前まで近寄ってみました。開けれるかと思って見てみたんですけど鎖みたいのが扉にからめられていて…ちょっと怖いです。禁断の扉みたいな。とにかく入れませんでした。
暫く神殿もどきの中も歩きまわってみましたが、奥の扉をくぐらないことには他の場所に行けないようです。ナイス戸締まりです。
朝足を捻ったというのもありますが、わたしは結構疲れているようです。これ以上歩ける気がしないのでこの神殿もどきの入口であろう門の辺りで休憩することにしました。
門の柱を背にして腰を下ろすと、身体中がパキパキいいました。明日は筋肉痛凄いだろうな…と思いながら空を見上げると、もう空が夕焼けに染まっています。神殿の散策は意外と時間を使っていたようです。
わたしは寝たら家に帰れるのでしょうか?
もし起きてもまだここに居たら、どうすればいいのでしょう?
もしかしてずっとこのままひとりぼっちなのでしょうか?―――世間ではあのお兄ちゃんみたいに、わたしも突然居なくなった事になっているのかもしれない。わたしなんて元々存在してなかったことに?皆から忘れられてしまうのでしょうか?誰も、誰ひとりも、生きてた事でさえ覚えててもくれないのでしょうか?
――いや、嫌、そんなの嫌です
わたしを育ててくれたお母さん、お父さん、お婆ちゃん、お爺ちゃん、幼稚園からずっと同じクラスだった理央ちゃん、兄弟なかはよろしいとは言えなかったけどわたしのかわいい弟と妹、それに
―――お兄ちゃん。
どうかわたしを忘れないで
「ヴゥゥゥゥ」
…あれ?こんな目覚まし時計買ったかな?
こんな重低音では目覚が悪そうです、なんか命の危機を覚えます。
そういえば、変な夢を見ました……
あのあとどうしたんだっけ……?
「グヴゥゥゥゥ…ヴワゥッッ!!」
「…へ?は…えぇっ!?」
あれは夢ではなかったようです、そんなことより、本当に命の危機でした。ヤバイです、狼チックな1つ目のヤツにとっても威嚇されてます。
1つ目の癖に目がとっても大きいです、赤黒く光っててとってもこわいです、く、口から涎が出てます…!?もしかして、わ、わ、わたしをた、食べるつもりでしょうか…!?
取り合えず逃げます、回りをよくみると、他にも狼もどきがいます、多分このままだと、食べられてしまいます。野生の勘ですが。
わたしは神殿もどきの柱から身体を起こして、当てもなく一目散に走りました。
憎いほど綺麗な月と星が瞬くなか、わたしは逃げ続けました
捻った足が痛くても、靴擦れで擦った足が血で滲んでも、原因不明の背中の痛みが復活しても、ずっとずっと走り続けました、狼もどきもわたしの後を追っています。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ…」
息が切れてもう倒れそうなのにわたしの思考は止まりません
物思いにふけてそのまま寝てしまったのが悪かったのか、それとも神殿もどきに入ったのが悪かったのか、何が悪かったのかもう分かりません
わたしが何をしたというのでしょう?
なんで、なんでわたしなんですか?
「ヴァゥッ!!」
「ひゃっ…!?」
挟み撃ちにされました。
前にも後ろにも、もう、逃げ場はありません。
狼もどきが先程よりも凶悪な顔つきになってる気がします。
わたしを食べても、おいしくないのに
こんなことならもっと人生楽しんでおけば良かった
もっと、もっと、もっと、もっと
――生きたい
「嫌ですっッ!!……誰か、誰か助けて下さいッッ!!」
「ХХХ!」
「キャウンッ…」
黒いフードを被った人がいきなり何かを唱えると、雷のようなものがあの狼もどきにあたり子犬のような姿になりました。…焦げてはないっぽいですが、なんとなく、痛そうです。
小さくなった狼もどきを黒いフードの人は素早く回収して袋に詰めてます。そしておもむろにこちらを向きました。
「あれ?もしかして生き残りかな?」
コツコツとブーツを鳴らして、
フードに手を掛けながら彼はこちらに寄ってきます。
「え、いや」
わたしの事を言っているのでしょうか?多分そうですよね。…とにかく弁解しなくては、そう思い前を向き、顔をみると……
「あれ?……女の子?」
彼は躊躇なく右手でわたしの顎をすくいました
――淡い茶色の髪の毛、黒い漆黒の瞳、均整のとれた顔立ち
「わっ、………大丈夫?」
彼はわたしの顔をみて何故かぱっと手を放しました
――この声
「……よく、頑張ったね…もう大丈夫だからね」
彼はわたしの頭をぽんぽんと頭を撫でました
――この頭のさわりかた
「――――っ、っぁ、」
――――お兄ちゃんだ
やっとお兄ちゃんがでてきました。
でも全然話してない…!