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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: K.K.
第5章ー炎神の子ー
98/129

「変身」できない!!ー

アンジュがベルの腕を見て、すぐに言った。


「その腕輪、今すぐ外しなさい」


ベルは慌てて頷く。


「そ、そうね!」


右手でバングルを掴む。


ぐい、と引く。


「……あれ?」


もう一度引く。


回してみる。


押してみる。


「……」


ミリィが不安そうに覗き込む。


「ベルさん……?」


ベルは困った顔をする。


「と、とれない……というより……」


バングルをぐるりと回す。


「外せるようにできてない?」


その言葉通りだった。


バングルには――


繋ぎ目が一切ない。


まるで最初から一体の金属で出来ているような作りだ。


アンジュが目を細める。


「……リック」


「失礼します」


リックが席を立ち、ベルの手を取る。


ベルは少し緊張した顔になる。


リックは指先でバングルを撫で、角度を変えて観察する。


しばらくして、眉をひそめた。


アンジュが尋ねる。


「どうですの?」


リックはゆっくり答えた。


「これは……魔法具には間違いありませんが……」


指で軽く叩く。


「狙いがわからないな」


アンジュが腕を組む。


「どういうことですの?」


リックは少し考えてから言う。


「かなり強力ではありますが……」


バングルに指を当てたまま続ける。


「呪いの類ではない。悪意のある魔法でもない」


一度ベルを見る。


「むしろ……守護魔法に近いものかと」


アンジュが目を細める。


「つまり?」


リックは短く言った。


「害はないと、考えます」


アンジュは小さく息を吐いた。


「なるほど……」


その間。


ベルはリックに手を握られたまま、別の意味で焦っていた。


ちらりと窓を見る。


空が――赤い。


日が沈みかけている。


(やばい……)


心臓が跳ねる。


(ここで変わるわけにはいかない……!)


ベルはそっとミリィを見る。


ミリィも同じことに気付いていた。


二人の目が合う。


ほんの一瞬。


ミリィが――小さく頷いた。


覚悟を決めた顔だった。


そして。


突然。


ミリィが大声を出す。


「あ、あーいたい!」


お腹を押さえる。


「おなか!おなかが!いたーいよー!」


大袈裟な動きでその場にうずくまる。


演技は――


とても大根役者だった。


アンジュが驚く。


「まぁまぁ、それはいけませんわ!」


リックに振り向く。


「リック、薬を早く!」


ミリィは勢いよく顔を上げた。


「それには及びません!」


そして元気いっぱいに叫ぶ。


「部屋に入ってぐっすり寝れば!大丈夫です!!」


一同、沈黙。


ミリィはそのまま立ち上がり、ベルの手を引く。


「ベルさん!行きましょう!」


「え、ええ!」


そんなわけで。


その日は――ここで解散となった。


ベルとミリィはそそくさと宿の部屋へ戻る。


部屋に入る。


ドアを閉める。


鍵をかける。


二人はベッドに腰を下ろした。


その時にはもう――


太陽は沈みきっていた。


窓の外は薄暗い夕闇。


ベルとミリィは窓の外を見る。


沈んだ太陽。


それを見送りながら。


二人はほっとした顔をして――


笑い合った。


「ふぅ……」


「間に合いましたね……」


しばらく静かな時間が流れる。


それから。


ミリィが、そっと言った。


「べ、ベルさん」


ベルが振り向く。


「ん?」


ミリィは不思議そうに首を傾げた。


「もう……夜ですよ?」


ベルも首を傾げる。


「え……」


一拍。


「……あれ?」


夜になったのに。


少女は、少女のままだった。


夜になれば銀髪の少年に変わる。

それがベル・ジットという存在。


それが――今。


ベルは自分の手を見る。

細い指。白い腕。黒い髪が肩から流れる。


何も変わっていない。


「え!?」


思わず声が裏返る。


「なんで私、私のままなの!?」


ミリィも目を見開いていた。


「べ……ベルさん……」


ベルは慌てて立ち上がる。


「なんで……?」


自分の体をぺたぺた触る。


「どういうこと……?」


混乱したまま部屋をぐるぐる歩く。


その時。


ミリィが、はっとした顔をした。


そして――


急に顔を赤くする。


「も、もしかして……」


小さな声。


「『あの日』ですか……?」


ベルは一瞬きょとんとして――


すぐに顔を真っ赤にした。


「ち、ちがうちがう!!」


慌てて手を振る。


「てか!そうだとしても!」


ベルは焦った顔で言う。


「今まで変化しない日なんて一回もなかったのに……!」


ミリィも真剣な顔になる。


「そ、そうですよね……」


二人は同時に、あるものを見る。


ベルの右腕。


そこにある。


さっき付けられた――金属のバングル。


沈黙。


ミリィが恐る恐る言う。


「……もしかして」


ベルも同じことを思っていた。


「……あの人?」


バングルを持ち上げて見る。


鈍い金属の光。


外れない。


繋ぎ目もない。


ベルは少し青ざめた。


「え……」


ごくりと喉が鳴る。


「これ……」


ミリィも小さく呟く。


「リックさんは守護魔法って言ってましたけど……」


ベルの顔が引きつる。


「……守護って」


腕のバングルを見る。


「一体なんなの…?」


その答えを。


二人はまだ知らなかった。


「お腹の具合はいかがですの?」


唐突に――


ガチャ。


部屋のドアが開いた。


開いたドアを、後からコツコツとノックするアンジュ。


ベルは即座に叫んだ。


「順番!!」


心臓が跳ねる。


危なかった。


今日はイレギュラーだから良かったものの――

普段なら今ここには銀髪の少年ベルが立っている。


アンジュとはいえ。

たとえアンジュでも。


(さすがに……勘繰るよね……)


アンジュは首を傾げながら部屋に顔を出す。


「騒がしいと思って来てみれば……」


そして、部屋の中を見た。


アンジュが見たのは――


ベッドの上で。


ベルの肩や胸元あたりをぺたぺた触りながら、真剣な顔で確認しているミリィの姿だった。


ミリィはぶつぶつ言っている。


「おかしいです……ここも変わってません……」


ベルは慌てている。


「だから変わってないって言ってるでしょ!?」


その光景を見たアンジュは。


一瞬止まり。


そして。


ポン。


手を打った。


「なるほど!」


ベルとミリィ「?」


アンジュは腕を組み、深く頷く。


「不倫やDVよりは……」


なぜか真剣な顔。


「こっちの方がむしろ安心ですわね」


ベル「???」


アンジュはさらに頷く。


「理解はできませんけども」


一人でぶつぶつ言いながら、完全に納得した様子になる。


そして優雅にくるりと振り向いた。


「それではお二人様」


ドアの外へ一歩出る。


「素敵な夜をー」


ドアを閉めようとする。


ベルがベッドから飛び上がった。


「ちょっと待って!!」


ドアを押さえる。


「いろいろ誤解がある!!」


ミリィも慌てて手を振る。


「ち、違うんです!」


アンジュは半目になる。


「何がですの?」


ベルは必死に説明する。


「ミリィが!私の体が変わってないか確認してただけで!」


アンジュはさらに半目になる。


「……何に?」


ベル「」


ミリィ「」


二人は同時に固まった。


説明できない。


アンジュはふっと笑う。


「安心なさい」


ドアを閉めながら言う。


「他人の趣味に口を出すほど野暮ではありませんわ」


「お腹の具合はいかがですの?」


唐突に――


ガチャ。


部屋のドアが開いた。


開いたドアを、後からコツコツとノックするアンジュ。


ベルは即座に叫んだ。


「順番!!」


心臓が跳ねる。


危なかった。


今日はイレギュラーだから良かったものの――

普段なら今ここには銀髪の少年ベルが立っている。


アンジュとはいえ。

たとえアンジュでも。


(さすがに……勘繰るよね……)


アンジュは首を傾げながら部屋に顔を出す。


「騒がしいと思って来てみれば……」


そして、部屋の中を見た。


アンジュが見たのは――


ベッドの上で。


ベルの肩や胸元あたりをぺたぺた触りながら、真剣な顔で確認しているミリィの姿だった。


ミリィはぶつぶつ言っている。


「おかしいです……ここも変わってません……」


ベルは慌てている。


「だから変わってないって言ってるでしょ!?」


その光景を見たアンジュは。


一瞬止まり。


そして。


ポン。


手を打った。


「なるほど!」


ベルとミリィ「?」


アンジュは腕を組み、深く頷く。


「不倫やDVよりは……」


なぜか真剣な顔。


「こっちの方がむしろ安心ですわね」


ベル「???」


アンジュはさらに頷く。


「理解はできませんけども」


一人でぶつぶつ言いながら、完全に納得した様子になる。


そして優雅にくるりと振り向いた。


「それではお二人様」


ドアの外へ一歩出る。


「素敵な夜をー」


ドアを閉めようとする。


ベルがベッドから飛び上がった。


「ちょっと待って!!」


ドアを押さえる。


「いろいろ誤解がある!!」


ミリィも慌てて手を振る。


「ち、違うんです!」


アンジュは半目になる。


「何がですの?」


ベルは必死に説明する。


「ミリィが!私の体が変わってないか確認してただけで!」


アンジュはさらに半目になる。


「……何に?」


ベル「」


ミリィ「」


二人は同時に固まった。


説明できない。


アンジュはふっと笑う。


「安心なさい」


ドアを閉めながら言う。


「他人の趣味に口を出すほど野暮ではありませんわ」


ベルは必死だった。


「だから〜そうじゃなくって!」


アンジュは腕を組んだまま、落ち着いた顔。


ベルは身振り手振りを交えて説明する。


「なんだか、私が私のままなの!」


アンジュは数秒沈黙したあと、真顔で言った。


「……今夜は燃えないということですか?」


ベル「違う!」


アンジュは少し考える。


「えっと……よくわからないのですが」


とても真剣な顔。


「そんな気になれない日も、あるとは思いますわよ」


ミリィが横で顔を覆う。


アンジュは優しく頷いた。


「大丈夫」


そして――


サムズアップ。


「明日がありますわ!」


ベル「だから違うってば!!」


ベルは頭を抱える。


「私が私のままなの!」


必死に身振りをつける。


「いつもならもっとこう……」


腕を大きく振る。


「グアーッと!」


さらに両手を広げる。


「ガバーッと!」


「そんな感じになるのに!」


アンジュは静かに目を閉じた。


そして――


とても穏やかな声で言う。


「大丈夫です」


まるで聖母のような微笑み。


「きっと疲れているんですわ」


ベル「違う……」


アンジュは優しく続ける。


「大丈夫」


「大丈夫だから」


ベル「聞いて……」


アンジュはベルの肩にそっと手を置いた。


「気にしないの」


完全に慰めモードだった。


そして柔らかな声で言う。


「さぁ」


「早く寝なさい」


ミリィが小声で呟く。


「ベルさん……」


ベルは天井を見上げた。


「……もういいや」


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