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RUN&GUN ― 二人で一人の逃走譚 ―  作者: F94
第10章ー西大陸・カダブランカ篇ー
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英雄核保持者対策ミーティング

翌日、昼。


ベルとミリィ、アダラとビビは、アダラ御用達の個室カフェに集まっていた。


ランチという名目の対策ミーティングである。


柔らかい光が差し込む部屋の中で、ミリィが勢いよく手を挙げた。


「昨日のお話は聞きました。お2人それぞれ事情があるとのことで……そこも考慮しつつ、皆さんの納得いく方法を模索しましょう!」


やけに張り切った、そしてどこか明るい声。


その様子を見て、アダラとビビが顔を見合わせる。


「ミリィ……なんか変じゃね?」


「こんな〜キャラじゃなかったよね〜?」


ひそひそ声。


ベルはその横で、軽く苦笑した。


「なんか……昨夜いろいろあったらしくて」


ミリィはそんな周囲の反応に気づいていないのか、あるいは気にしていないのか。


上機嫌のままノートを開き、きちんと姿勢を正す。


「まずはですね、感情と事実を分けて整理することが大事だと思います」


妙に堂々とした進行役ぶり。


アダラが小声でつぶやく。


「絶対なんか吹っ切れてるだろ、これ」


ビビも頷く。


「むしろテンション上がってない〜?」


ベルはコーヒーを一口飲んで、肩をすくめた。


「……まぁ、機嫌はいいっぽいな」


ミリィはふと顔を上げて、にこっと笑う。


「はい、では次にいきましょう!」


ミリィはノートに視線を落としながら、丁寧に言葉を選んだ。


「シュプリムさんもアラランさんも、どちらも拒否……ということですが」


ペン先が紙の上で小さく止まる。


部屋の空気が、ほんの少しだけ静かになる。


アダラが腕を組み、軽く息を吐いた。


「まぁ、そういう結論になるな。少なくとも今のままだと」


ビビも肩をすくめる。


「うん〜、思想の方向性がバラバラすぎるんだよね〜」


ベルはコーヒーのカップを両手で持ちながら、少し困ったように笑った。


「うーん……そうだね。たしかに、そのままだと難しいかも」


やわらかい声。


どこか気遣うような、控えめな言い方だった。


ミリィは少しだけ眉を寄せるが、すぐに顔を上げる。


それでも表情は明るいままだった。


「では、排除ではなく“調整”という形での再検討は可能でしょうか?」


アダラがちらりとミリィを見る。


「……調整って言うけどよ、それ具体的にどうすんだ?」


ミリィは少し考え込んでから、きっぱりと言った。


「まずは、目的の共有と……感情ではなく、役割での整理です」


ビビが目をぱちぱちさせる。


「ミリィ、急に進行役うまくなってない〜?」


ベルは小さく笑って、少し安心したように言った。


「うん、ちゃんと考えられてると思うよ」


ミリィはその言葉に少しだけ表情を和らげたまま、資料へ視線を戻した。


「まだ結論を急ぐ必要はありません。まずは……対話の場を作りましょう」


ミリィは少しだけ考え込むように、ノートの端を指でなぞった。


「まずは……何より英雄核を取り出す方法が決まらないと……決められないですよね」


アダラがあっさりと頷く。


「それなー」


ビビも軽く手を振りながら続ける。


「わたしの時は〜たまたまうまくいった感じだもんね〜」


その言葉に、場の空気が少しだけ軽くなる。


ベルはカップを持ったまま、静かに相槌を打った。


「そうらしいよね」


ミリィはそのやり取りを聞きながら、視線を落とす。


真面目な顔のまま、少しだけ唇を結んだ。


「たまたま……というのは、再現性がないということ、ですよね」


アダラが肩をすくめる。


「まぁ、言い方悪いけどそうなるな。手順として確立されてねぇ」


ビビも少しだけ真顔になる。


「成功例が一個だけって、ほぼ偶然扱いなんだよね〜」


ベルは少しだけ眉を寄せて、小さく言った。


「でも、逆に言えば……できたことはあるってことだよね」


ミリィはその言葉に顔を上げる。


少しだけ希望を含んだ目。


「……はい」


小さく頷く。


「なら、まだ方法は探せます」


その声は、さっきより少しだけ強くなっていた。


小さなミリィが、少しだけ不安そうに視線を上げる。


「他の姫神さんたちは……どうなんでしょう?」


ベルはカップを持ったまま、少しだけ困ったように目を逸らした。


「そのなんだけど……そこは私じゃなくて、あいつに聞いてもらうしか」


アダラがすぐに頷く。


「魔王殺しかー」


ビビはにやっと笑って、軽い調子で言う。


「じゃー今夜お風呂に入りながら〜聞いてみる?」


「そだな!」


アダラも普通に乗った。


ベルは即座に反応する。


「ちょいちょい!何かにつけて誘惑しようとしない!」


ぴしっとツッコミが入る。


ビビはけろっとした顔で肩をすくめた。


「え〜、だってその方が出てきそうじゃない?」


アダラも腕を組みながらうなずく。


「実際、タイミングって大事だしな」


「そういう問題じゃないから!」


ベルは珍しく少し声を強める。


そのやり取りを見ながら、ミリィはきょとんとした顔で固まっていた。


「……お風呂……?」


小さくつぶやいた声は、完全に話の流れを追えていない。


ベルはそれに気づいて、すぐに姿勢を正す。


ベルは軽く手をひらひらと振って、場の空気を整えるように笑った。


「ミリィ、2人のノリに合わせると話がそれちゃうから、スルーしよ」


ミリィはすぐにこくりと頷く。


「はい、わかりました」


姿勢を正して、資料に視線を戻す。


「シュプリムさんは思想のためとのことですが……どうしたらいいでしょう?」


アダラがあっけらかんと肩をすくめる。


「なんだよ、なんか策があるわけじゃねぇのかよ」


その言葉に、ミリィは少しだけ困ったように目を伏せた。


「そこは……みんなで考えられたらなー……と」


正直で、でも投げ出しているわけではない声。


一瞬、空気が少しだけ静かになる。


ビビが頬杖をついて、ゆるく笑った。


「いいじゃん、その方が会議っぽいし〜」


アダラも鼻を鳴らす。


「まぁ、丸投げじゃねぇだけマシか」


ベルは小さく息を吐いて、少し柔らかい声で言った。


「シュプリムさんって、たぶん“正しさ”が強すぎるタイプだと思うんだよね」


ミリィが顔を上げる。


「正しさ……ですか?」


ベルはうなずく。


「うん。だから、正面から否定すると多分もっと固くなる」


少しだけ考えるように間を置いてから、続ける。


「だから、“別の正しさもあるよ”って形で見せるのがいいのかも」


ミリィはその言葉をゆっくり飲み込むように頷いた。


「……対立ではなく、並列、ですね」


小さく、でも確かに整理された言葉だった。


アダラは少し椅子の背にもたれながら、ぽつりと言った。


「これは私の意見なんだけどなー……」


ミリィはすぐに背筋を伸ばす。


「はい、なんでしょう」


アダラは片目を細めて続けた。


「魔王殺しと合わせてみるってのは、どうだ?」


ベルはカップを置き、少しだけ眉を寄せる。


「アラランさんはまだしも、シュプリムさんはあいつのこと目の敵にしてるんじゃ……?」


アダラは肩をすくめる。


「そいでも、男としては興味あるみてぇだから、話は聞いてくれっと思うんだよな」


ビビがにやっと笑う。


「よく見とかないと食べられちゃうかもだけどね〜」


ベルは即座に顔をしかめる。


「そういう言い方やめて」


そのやり取りの横で、ミリィがぱっと顔を上げる。


「じゃ、じゃあ私が同行します!」


勢いよく言い切る。


アダラはあっさり首を横に振った。


「ミリィが同行してもしゃーねぇだろ。相手は軍人だぞ?」


「んむむ……」


ミリィは悔しそうに口を結ぶ。


けれどすぐに諦めるわけではなく、拳を小さく握った。


ベルはその様子を見て、少しだけ困ったように笑う。


「まあ、まずは話の場を作るのが先かもね」


ビビが軽く手を叩く。


「じゃあ〜お見合いじゃなくて面談会だね〜」


アダラが即座に突っ込む。


「言い方が最悪すぎるだろそれ」


ミリィは姿勢を正したまま、少し緊張した声で続ける。


「と、とにかく……ベルさんと直接会話するのは私も賛成です。どちらからにします?」


その言葉に、アダラが腕を組む。


「順番か……まぁ、揉めてる度合いで言うとシュプリムの方がやべぇな」


ビビも軽く頷く。


「うん〜、思想強いのはあっちだしね〜」


ベルは少しだけ考えてから、静かに口を開いた。


「じゃあ……シュプリムさんから、お願いしたいかも」


ミリィがすぐに顔を上げる。


「理由を聞いてもいいですか?」


ベルはカップを両手で持ったまま、少し言葉を選ぶようにして続ける。


「うん。あの人って、自分の中の“正しさ”がすごくはっきりしてる気がして」


一度だけ視線を落としてから、続ける。


「だから、時間が経つとその考えがどんどん固まっていきそうで……」


軽く息を吐く。


「だから、早めに一度ちゃんと話しておいた方がいいと思ったの」


アダラが鼻を鳴らす。


「まぁ、理由としてはわかる」


ビビはにやっと笑う。


「じゃあ〜まずは圧の強い人から攻略だね〜」


アダラが即座に突っ込む。


「攻略って言うな」


ミリィはそのやり取りを真面目に聞きながら、小さく頷いた。


「では、シュプリムさんとの対話の場を優先で準備します」


そして、少しだけ表情をやわらかくして付け加える。


「できるだけ……穏やかに進むといいですね」

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