第6話:『学園の枠を超えて――転生魔女、王都へ』
学園祭の後日談が落ち着いた朝。
春菜は校庭に立ち、冷たい風に頬をなでられながら考えていた。
「学園の事件は解決したけれど……あの黒い影の目的はまだわからない」
セレストが隣に現れ、静かに声をかける。
「春菜、君の能力なら、学園の枠を超えて動くこともできる」
「国家……?」春菜の目が輝く。
「君に与えられた記憶魔法の力は、単なる学園内での調査に留まらない。王都に行き、国家の記録や陰謀の証拠を集めるべきだ」
ミリエルも後ろから歩み寄る。
「私も一緒に行くわ。あなたが一人じゃ危険すぎる」
こうして、春菜はセレストとミリエルと共に王都へ向かうことを決意する。
学園の門を出る瞬間、春菜は深呼吸する。
「弱くても、ここから先は見えないものを見せる力で切り拓く」
馬車に揺られながら、春菜は過去の記録を思い返す。
・王家と魔女の関係
・学園祭での事件の影
・黒いローブの人物の警告
「このまま放置すれば、国家規模の陰謀が再び動き出す……」
王都に到着すると、その規模と威圧感に春菜は息を呑む。
高くそびえる宮殿、煌びやかな街並み、そして至るところに配置された魔法防衛の結界。
「ここが……国家の中心……」
記録室で春菜は、古い文書や王族の日記、禁書の束を前に集中する。
記憶魔法で断片を紡ぐと、学園祭の事件と王都の政治的陰謀の繋がりが浮かび上がる。
「やっぱり……私たちの学園祭の事件は、ほんの一部だったんだ」
そこへ突然、宮殿内の魔法陣が反応する。光と衝撃が走り、警報が鳴り響く。
「誰かが、王都に干渉している……!」
春菜は心を落ち着け、手をかざす。断片を追い、攻撃者の位置と目的を推測する。
セレストが盾役、ミリエルが攻撃支援として連携し、春菜は記憶魔法で攻撃者の過去の行動や隠された動機を読み取る。
戦いの最中、春菜は一瞬、転生前の自分の記憶がフラッシュする。
「私……転生して、この世界に来た理由は……」
記憶の断片はまだ完全には見えないが、自分に課された使命の重さを感じる。
敵を撃退した後、王都の夜空に三人は立ち止まる。
「ここから先が、本当の戦いね」ミリエルがつぶやく。
「私の力で……見えないものを見せる」春菜は握りしめた手を空に向け、静かに決意する。
学園編の一区切りを経て、転生魔女・紺野春菜の物語はついに学園の外、国家の陰謀と対峙するステージへと進む――。