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14,公女の我が儘

「本日はお越しいただき、ありがとうございます」


「こちらこそ、お招きいただきありがとうございます」


我が国の国王と、隣国である公国の大公がお互いに笑みを浮かべながら挨拶を交わす。

半年前までは公国や皇国と戦争をしていたが遂に終結したため、今日は公国から、大公、その公子、そして何故か予定では来るはずではなかった公女までやってきたのだ。


しかし、長年敵同士だった感覚はすぐには抜けず、公国からの貴人を迎えるために、かなり管理体制を整える必要があった。

更に、王妃……エドガー王子のお母様は体が弱く、長年田舎で休養しているため、晩餐会の企画や準備も私がする必要があった。


そのせいか……もう晩餐会に参加する頃にはかなり疲れきってしまった。


「国交が復活するにあたって、さっそく詳細を取り決めていきたいところですが……そちらも着いたばかりでお疲れでしょう。今晩はそれらのことは一旦後に回し、この会を楽しみましょうぞ」


「あぁ、気遣いの行き届いた会ですな。王国の皆さんに感謝いたします」


「気にすることはないですよ。さぁ、皆、乾杯!」


国王の音頭に合わせて、私達はグラスを重ねる。

私は下座に座り、目の前の公女様と何を話そうか、と考えていた。


本来大公と公子のお二人のみ来るはずだったけれど……どうしていらっしゃったのか。

その理由を聞くところから話し始めてみるべきか?


国王は大公と話しているし、エドガー王子は公女とは話したがらないだろう。

それなら、私が何か彼女に話題をふらないと。


せっかくだからこの国に滞在している間、何をしようと思っているのか聞いてみようと口を開いた時、公女は斜め前の人物に話しかけ始めた。


「こんばんは、エドガー王子」


あぁ、彼女からエドガー王子に話しかけてしまったか……と思わず頭をかかえそうになる。


「……こんばんは、イーリス公女」


「あら、名前を覚えてくださっていたのですか? 嬉しいです!」


「公国の貴人ですから」


エドガー王子も頑張って応対しているが、隣で見ている私からすれば話したくなさそうな雰囲気を漂わせている。

それはそうだ、公女は彼が最も苦手とする態度をとっているのだから……


「私、ずっと貴方のことは耳にしておりましたの……今日お会いしてよくわかりました! やはり素敵な方ですわ! 実を言えば、結婚してしまったと聞いてショックで……戦争が終わったら、私とそのようなお話も出るかと思っていましたのに……」


「……」


私やエドガー王子より年若い公女の発言なこともあり、いつもより更に彼の顔が固くなっている。

私も私で、目の前でそんなことを言われると、なんだか胸の内がもやもやとする。


「あまり……その、私の夫を口説かないでいただけると、うれしいのですが……」


その言葉はエドガー王子を救うためのものだっただろうか?

それとも……まだよくわからない、この私の気持ちを晴らすためだろうか?


どちらにせよ、気が付いた時にはその言葉はすでに口に出ていた。


「君は……」


エドガー王子は思い切り私の方を向いて何かを言いかけたけれど、そこにイーリス公女の声が重なった。


「ごめんなさい、私、彼のことを想っていたから……今日、こうして会えたことが嬉しくて……我慢が出来なくなってしまいました……」


彼女の可愛らしい顔から涙がボロボロとあふれ出した。

その様子に気が付いた国王と大公もどうしたものかと頭を抱えているし、公子はひたすらこちらに謝っている。


イーリス公女も泣きながら、ぽつりと声を謝罪の言葉を口にする。


「ごめんなさい……」


あっという間に晩餐会は何とも言えない雰囲気へと変わる。

なるほど……公女がわざわざ王国まで来た理由はそういうことだったのか……

泣き止むことのない彼女の様子をみた大公が、国王に頭を下げる。


「あの、不躾な願いですが……一度だけでよいので、彼女にエドガー王子と一緒に過ごす時間を与えていただけないでしょうか?」


「……ふむ」


国王は顎のひげをなでながら深く考え込む。

そしてエドガー王子の方を、更に私の方を見た後、大公に視線を戻した。


「私が判断することではないでしょう。二人に聞いてみましょうぞ」


私はエドガー王子と顔を見合わせる。

目の前にはいまだ泣いているイーリス公女。


「……」


「……」


「私は……」


行ってほしくない


なぜかそう言いたくなった。

でも……今この状況でそんなことを言うのは間違っている。


「行ってきてもよいと思っています」


「……そうか」


彼は神妙な顔をして、視線を下に向ける。


「皆がそのように言うなら、俺が応えないわけにはいかないですね」


その言葉を聞いたとき、私は自分から「行ってもいい」と言ったくせにどこか心が痛んだ。

エドガー王子ならきっと断るに違いないと頭の隅では思っていた。


「……本当ですか!?」


笑顔になった公女の声が頭の中にこびりついて離れなかった。

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