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「妹がな、よろしくってよ」

「はあ……なんの話っすか? ……なんつー顔してんすか。苦虫百匹口ん中ぶち込まれました?」

「「いつも兄がご迷惑おかけしてすみません。こんな兄ですが今後もお付き合いくださるようお願いいたします」だと」

「え、先輩の妹さんって深窓のご令嬢されてます?」

「たりめーよ。手塩にかけた妹だってんだ」

「手塩て。そういう世話焼きがお節介なんじゃないですかねぇ」

「そう……だよなぁ。はぁ。高校生ってのはむずかしいわ」

 天(戸棚)を見上げる先輩の憂鬱顔に俺は肩を竦める。気付くの遅いんだよ、と。あとこのペースじゃ洗い物が時間内に終わるかわからない嘆きも込めておいた。

「先輩だって二年前には高校生でしょうに。物忘れ?」

「ふっ。ガキの頃のことなんざ忘れちまったぜ」

「ちなみに現役ピチピチ高校生の俺くんは腹減ったらしいっすよ」

「は? だから? 帰りにコンビニ寄ってパンでも買えばいいだろ」

「いや~ん。お世話しておにいちゃ~ん」

「……」

「……」

「……聞かなかったことにしてやるからよ」

「あざっす、恩に着るっす」

 時には盛大にミスるのも人間だよね。

 互いに口を閉じている間は手指の働きが段違いだ。黙々と皿コップスプーンフォーク等々をマメに洗ったり濯ぐだけ濯いで食洗器にぶち込んだり。洗い方ってのがそれぞれに定められているわけだけど、俺も先輩もそこんところはとっくに考えるまでもないくらいに体に染みついている。

 ということはだ。さほどの時間もかからず作業を終えるわけで。

「お先でーす」

 ということになる。


「おっ」

「わ」

「あら」

「ん」

 順に俺、佐藤さん、鈴木さん、高橋さん。

 店を出てすぐ、一分ほど歩いたところの曲がり角にばったりと遭遇したのだった。

「おおこんばんは。びっくりしたわ」

「こっちも。なんでサンタこんなとこにいるの?」

「こんなってことはないだろこんなってことは」

 駅からだってそう離れていない。大通りってわけじゃないが裏って感じもしない。

「そうだけど。でも、うん、やっぱり、なんで? 買い物?」

 とはいえ俺の地元ってわけでもないし、通学路でもない。

「そんなとこ。高橋さんてか三人こそなんでこんな……素敵な場所に?」

「うわうさんくさ。アタシたちは……ちょっとご飯食べに?」

「そうなん。じゃあまぁ、おつかれさん。また明日な」

「あ、ちょっと待ってくださいサンタ君。あの……」

「あの?」

「サンタ。プラモちょうだい」

「プラモぉ? 作り終えたやつ?」

「そうそう。アタシが渡した姫路城でしょ、それに鈴木さんのロボット? のやつ? あと高橋さんのロケット」

「いいけどどうすんの?」

「どうって?」

「飾るとか仕舞うとか……とかなんかそんなやつ」

 さすがに捨てるってことはないだろう。

「アタシは飾るけど」

「わたしも」

「私もです」

「……実はまだ完成してないんだ」

「そうなの? でもこのまえ、完成したって言ってた」

「出来てた、よね?」

「はい」

「だよね」

 佐藤さんと鈴木さんが頷き合うように、組み上がってはいるしそれを完成と称してトークグループに写真を載せたのも確かだ。

「飾るレベルではないってこと。てか時間大丈夫か? メシ、ご飯」

「あ……やば、ギリギリかも」

「じゃあこれで。プラモの件はまた連絡するわ」

「ん、わかった。ばいばいサンタ。気を付けて」

「了解です隊長殿」

 高橋さんと敬礼を、佐藤さんと鈴木さんとは当たり障りない別れの挨拶を交わして互いに背を向けた。


「いらっしゃい」

「うん、お兄ちゃん。ありがとう、今日はご馳走になります」

「おいおいなんだまた猫被って」

「一応、お兄ちゃんのバイト先だから」

「ナイス心掛けだ。社会性大事。と、二人ともそう遠慮するなって。はは。お席にご案内いたします」

「お兄ちゃんこそ、猫被ってるみたい」

「一応、バイト中なので。どうぞこちらへ」

「そうだお兄ちゃん。プラモ、貰えそう。すぐにではないかもしれないけど」

「そりゃ……よかったな」


 くしゃみ一発かましてしまった俺は電車を待つ方々向けに頭を下げる。すみません失礼しました。

 風邪はもう勘弁して欲しいんだがな。

「はぁ」

 と吐き出したため息には体調の心配以外にも、つい今し方に発生したイレギュラーへの苦慮も含まれている。

 どうしたものか。

 俺はいままでも色々とプラモデルを組み立ててきた。それらはすべて俺の中に完結し、そして今は貸し倉庫に保管されている。

 本人からプラモデルを渡されることさえはじめてのことなのに、この上それを返せとは。

「どうするかなぁ」

 電車の中、つい呟いてしまった自分が窓に反射している。

 そいつはどうも、満更でもなさそうに見えた。

完結です。ここまでご愛読いただきましてありがとうございます。

そして申し訳ないです。

半端なところで終わらせること、本当に申し訳ないと思っております。

ただこれ以上続けること、展開等練ることがですね、難しいと判断しここで完結とさせていただきました。


お読みいただきありがとうございました。

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