プロローグ 元引きこもりは咄嗟に行動してしまう
GWということで新作を書いてみます。
少しダークな感じの主人公を書いてみようと思います。
最初は暗い感じで続くと思いますが、できたら続きも読んでいただけたら幸いです。
幼い頃、正義の味方に憧れていた。
悪者を成敗し、世のため人のための行動が格好いいと思っていた。
だからこそ、真面目に生きていき、間違ったことを注意してきた。
その結果、俺は引きこもりになっていた。
年を重ねるにつれ、正義が求められていないのを実感させられた。
いや、小さい頃から心の奥底では分かっていたのかもしれない。
悪さをする同級生たちに面と向かって注意をし、それでも対処できなければ周囲の大人に告げ口をする。
正しいことをしているが、周囲からは顰蹙を買っていた。
当然、俺は孤立してしまい、いじめの標的になってしまった。
いじめられていたとき、何もしなかったわけではなかった。
クラスメート達に助けを求めようとしたが、見て見ぬ振りをされてしまった。
孤立するほど正義をかざしていたのだから、これは仕方がない。
ならば、周囲の大人に助けを求めようとした。
だが、俺の期待はあっさりと裏切られてしまう。
『いじめられるお前に原因があるんだろう』
当時の担任の言葉は俺の心に深く突き刺さった。
自分の全てを否定された気分だった。
中学3年の春、部屋から出られなくなった。
義務教育間は頑張ろうとしたが、とうとう心がもたなくなった。
突然の事態に両親は驚いたが、受け入れてくれた。
気持ちが落ち着くまでゆっくりするようにと優しく声を掛けてくれた。
その優しさに救われた気持ちになったが、同時に申し訳ない気持ちにもなった。
だが、再び部屋から出られるのに3年の月日が経っていた。
「いらっしゃいませ」
「・・・・・・」
明るい店員とは裏腹に僕はひそひそと入店する。
3年の引きこもり生活で自己肯定感が最低になっていた。
怪しい雰囲気の自覚もある。
店員から怪訝そうに見られている気がした。
「えっと、目的のものは・・・・・・あった」
並んでいる商品を順に見ていく。
思ったよりも多くの商品に迷っていたが、ようやく見つけることができた。
小さい頃から好きだったお菓子だった。
久しぶりに食べたいと思い、それを目的に外出をしたのだ。
こういう小さいことからコツコツとやることが大事なのだ。
商品を手に取り、レジに向かう。
あとは購入するだけで──
「強盗だっ! 金を出せっ!」
「っ⁉」
男の怒鳴り声が店内に響き渡る。
いきなりの出来事に驚いてしまう。
女性店員に向かって男が包丁を向けていた。
彼女の表情から恐怖を感じているのがわかる。
「おいっ! とっとと金を用意しろっ!」
「ひっ⁉」
バンッとカウンターが叩かれ、彼女は短い悲鳴を上げる。
全身もガタガタ震えており、うまく動くことができないのだろう。
それがさらに男の怒りを駆り立てる。
「わからねえようなら、痛い目をみせてやる」
男は包丁を振りかぶる。
その動きに女性は身をすくめる。
激高した相手が攻撃してきたら、当然の反応だろう。
だが、そうなれば彼女が怪我をして──いや、下手したらもっと大惨事になるだろう。
(ダッ)
そう思ったら、自然と身体が動いていた。
その場から駆け出し、体勢を低くする。
(ドンッ)
「うぐっ」
背後から足下に突進され、男は短くうめく。
バランスを崩して、そのまま倒れ込んだ。
「店員さん、警察に通報して」
僕は女性店員に声を掛ける。
少しでもこの危険な場所から彼女を守るためだった。
「あっ」
彼女の驚いた表情を浮かべる。
そして、その視線の先に俺は振り向く。
(ドスッ)
「えっ?」
突然、腹部に激痛が走る。
視線を落とすと包丁が深々と突き刺さっていた。
服に血がにじんでいく。
「お、お前が悪いんだ。じゃ、邪魔しやがって」
男は俺に向かって悪態をつく。
だが、自分のしでかしたことにようやく気づいたのか、その声は震えていた。
(ギロッ)
「ひいっ⁉」
睨み付けてやると、男は尻尾を巻いて逃げていった。
どうせ逃げても警察に捕まるはずだ。
意味はない行動だが、この場においては大変意味がある。
犯人がいなくなることで、女性店員の安全は保たれる。
「大丈夫ですかっ! すぐに救急車を──」
女性店員が慌てた様子で駆け寄ってくる。
彼女が無事なのを確認し、俺は安堵の息を吐く。
だが、それと同時に意識が遠のくのを感じた。
徐々に視界が狭くなり、全身が冷たくなっていくのを感じる。
「あぁ・・・・・・これが最期とはな」
思わずそんな言葉が漏れる。
正しいと思った行動をしてきた人生なのに、その結果がこのザマである。
良い奴ほど馬鹿をみる──そんな言葉を体現しているだろう。
「諦めないでっ!」
女性店員の悲鳴が聞こえてくる。
その目には大粒の涙が溢れていた。
俺が無茶をした結果、彼女を悲しませていた。
見ず知らずの女性を泣かせるのは男として不本意なことだ。
だが、今の俺にできることは何もなかった。
「(こんなことになるなら、正義の味方なんてなるもんじゃないな)」
今までの自分の考えを死ぬ間際に否定することになるとは思わなかった。
そんなことを考えながら、俺の視界はブラックアウトした。
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