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死ねない死神は今日も泣く  作者: 無色といろ
Ⅳ 閻魔地蔵の贖罪
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チャプター20 裁きの狼煙

 大門は天津と一緒に端末の新たな機能のテストを行っていた。それは天津が大門に依頼してから約一週間経とうとしていた。突然、天津はテストの終了を告げていた。


「…うん、これでオッケー。すべてのテストが無事に終了したよ。お疲れ様、大門」

「なんだ、こんなもんだったのか?」

「こんなもんって…その台詞を聞いたら一之宮君が怒るよ?貸神(れんかん)1000年も使ってるのに」


笑いながら天津は大門に呆れていた。天津がいう貸神(れんかん)とは借神(しゃっかん)とは対義語である。つまり、大門は自分の資産の中から1000万円ほど犠牲にしたことになる。そんな大出費をしながらも大門は当然だという表情を見せていた。。


「これは俺の問題だ…そう考えれば貸神(れんかん)1000年など、どうでもいい」

「ま、そうかもね…新機能も完成したことだから、閻魔地蔵に僕は依頼しよう。今回もレイちゃんと一之宮君を同行させてね」


任務の説明をしようと天津は自らの端末を取り出した。端末に入れておいた今回の任務に関する情報を探し出そうと指を動かす。大門はそんな神の代行者を見ながら、以前から抱いた疑問をぶつけていた。


「今回は俺だけでもいいんだが、また一之宮と零花の同行付きか…お前、一之宮の依頼をわざとつらいものにしてるだろ?」

「まあねー、彼には早く一人前になってもらわないと困るんだよ。禁忌(パンドラ)の暴発を防ぐためにもね…」

「お前はあいつのことをどこまで知っているんだ?」

「まったく知らないよ。禁忌(パンドラ)を二個持っていること以外はね…」


疑いをあっさりと認めた天津は本当に何も知らないようで、大門は追及することをせず任務の内容を頭に入れる。説明を終えた神の代行者は自分の端末から全ての死神に対してメールを送り、端末を静かにしまった。それと同時に彼は目を伏せ、自分の行動が正しかったと無理矢理思い込ませていた。



 天津のメールは当然はシロにも届いていた。そのときシロはベッドの中で目を瞑り、自分の体を制御していなかった。平たく言えば睡眠をとっていたのだ。



パ~パッパッパ パ~パパパ~


けたたましく流れた高音のメロディはシロが目覚めるには最悪だった。シロが生前に聞いたことがあるそのメロディはシロの端末にメールが届いたことを知らせていた。メールのタイトルには”ジャパゴッド天津”の文字が書いてある。


「…なんだよ…こんな設定にしてないぞ…」


まだ起きたばかりで目がうまく開いていないシロは天津のふざけたメールのタイトルにツッコむことも出来ず、とりあえずメールを開いた。そこには200行を超える説明が書いてあり、メールの本文の一番上には”ジャッジメント機能追加”と書かれていた。しかし、圧倒的なまでの説明文の文字数の前にシロの眠気が負けるわけもなく枕に顔うずめ再び眠りについた。


再び起きたときには正午になっていた。シロは静かに体を起こし始めた。自分の不安を零花に吐露してしまったシロは一週間経った今でも気恥ずかしで頭を抱えていたが、自分の存在がここにあってもいいということを認識できだ彼はその気恥ずかしさでさえ心地よさを感じていた。そしてその気恥ずかしさと心地よさを隠すように今日もまた訓練を行うために、準備を整え部屋を出た。


シロが訓練を終え自室に入ろうとしたとき、シロは大門に話しかけられた。彼の表情はいつもよりも心なしか硬かった。もともと大門がそれほど表情豊かではなかったが、今日は一段と強張りを見せたその表情だった。


「一之宮、天津の依頼だ。明日10時にミーティングをやるから、いつもの会議室まで来いよ」


その大門は端的に内容を伝え終わるとその場を後にしようとしたため、シロは思わず尋ねていた。


「わかりました。今回の依頼は大変そうですか?」

「まぁ…な」


なぜ大門が口篭るのかわからなかった。仮にも彼は二つ名を持つ死神である。普通の任務であるならばさほど苦労しない程度の実力はもっているはずだった。そんなことを考えていても自分の労力はかわらないと思い直し、シロは自分の部屋にはいって、床についた。


夜は明け、大門が告げた約束の時間にあわせて会議室にシロは入っていった。そこにはいつもと変わらないメンバーがそろっているものだと思っていたが、いつもミーティングに参加しない天津が混じる。大して驚きもせずシロは椅子に座ろうとしたところに天津の挨拶が飛んできた。


「おはよ、一之宮君」

「おはよう…ございます?」

「なぜ、疑問なんだい?」


呆れた表情の天津は苦笑いを繰り出した。シロの疑問は当然天津がここにいるということであり、その理由が見当つかないためである。


「いや、なんで天津がいるんだよ、なんかあったのか?」

「今回は特別だからね」

「特別?」


それ以上の会話は大門が許さなかった。


「まず聞こう。昨日届いたメールは読んだか?」

「昨日?」


思い出せないシロに零花は呆れながらも教えてくれていた。


「ジャッジメント機能のことだよ」

「あーあれね…あれ」


その場にいるシロ以外の死神と神は心の中で、読んでないな…コイツと思いながらも話を続けていた。


「で、今回の任務はそのジャッジメント機能を始めて使って行われるの」


零花はジャッジメント機能について簡単に説明し始めていた。


「簡単に言えば、死神を殺すためのシステムだよ。基本的には死神同士は殺しあうことができないから」

「ってことは、今回の対象は死神ってことか…」

「そ、正解だよ。普通に死神を殺そうとすると尋常でないほど死力を必要とする。それは二つ名を持つ死力でも不可能なんだ」


そこに天津が割って入っていた。


 ”ジャッジメント”

裁きを意味する言葉をつけられた機能は、その名の通りだった。殺したい死神を対象者、殺す役割を担う死神を執行者とすると、執行者はまず対象者の額に自分の端末を当て、ジャッジメントと叫ぶ。叫ぶことによってジャッジメント機能は起動し対象者の思考、記憶をすべて読み取る。そして執行者が思う対象者の罪に関する記憶、思考だけが端末内に残り、それを動画としてまとめ全死神に配信される。動画を配信された死神はそれをみて対象者が死に値するかどうか決める。死神の多数決によって殺せるかどうかが決まるのであった。

それを聞いていたシロは純粋な疑問がわいていた。


「相手が強かった場合、額に当てることすら出来ないんじゃ意味がないんじゃないのか?」

「その時点で執行者は対象者にジャッジメントする権利はない。権利というか、仮に額にあててジャッジメントを起動することができても自分より強い相手を殺すことなんて出来ないだろ?」

「ああ、そうか。ん?多数決によって決まったら即死じゃないんですか?」

「違う。対象者が多数決で有罪になった場合、執行者の手で殺さないといけないんだ」

「けっこう…面倒…」


冷静な大門がシロの疑問に答えていた。

そしてそんな面倒なシステムになった理由を天津は語る。


「ジャッジメント機能を即死するようにするための代償がこの世界のルールに引っかかったんだ。執行者の命と引き換えに対象者の即死は可能なんだが、執行者が死ぬために自分より弱い対象者を道連れにしかねなかったからね」

「死にたいと思うと死ねないってやつか…」

「そう。だから起動の条件付け、多数決、そして執行者自らの死刑執行…あと…」

「まだあんのか?」

「こんなもんで死神の命が消せるわけがないだろう?死刑執行に借神(しゃっかん)100年、あと執行者が負けた場合、借神(しゃっかん)400年のペナルティが発生する」

「おいおい、待て。参加に100年?そんなものやりたくないんだが…報酬が1~2年なのに対して借神(しゃっかん)100年はバランス悪すぎだろ」

「大丈夫。それに関しては神の依頼で死神抹殺をする場合、報酬として100年を保証することになっている」


そんな話を聞いていた零花はぼそりと呟いた。


「死神同士の殺し合い防止のため…」


その言葉を肯定した天津であった。


「そう。できればこんな機能は作りたくなかった…」


天津はそういいながら視線を落とした。天津が視線を落とした理由がシロにはわからなかった。しかし、シロは自身が心配していた不条理ともいえる参加費用の問題が解決したためミーティングの続きを聞こうとした。


「で、誰が対象なんだ?」

「…こいつだ」


少しの沈黙のあと大門はプロジェクターで対象の顔を映し出した。シロはその男の顔に見覚えがあった。以前、死神としてではなく実体を持った状態で人を殺していた男である。


黒田(くろだ)康友(やすとも)…」


大門の表情が今まで見たこともないほど暗くなったのに気がついたシロはただ息を飲むことしかできずにいた。

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