『神田春香』
―――14年前。神田春香12歳。
「こら!またジョーをイジメたな!?」
田舎の川辺で春香の声が響く。
…小学校6年生の春香が同じクラスの3人の男子、犬井、猿川、鳥山に向かって飛び蹴りを繰り出す。
ショートヘアの春香はよく男の子に間違われる見た目をしており実際のところ『男』と言っても過言じゃないくらい男勝りな性格をしていた。
この年頃だと女子の方が身長が伸びやすい傾向もあり春香の方が3人の男子より体格が大きい。
「うわ!デカ女だ!逃げろー!!!」
と犬井、猿川、鳥山が逃げ出す。
そんな3人に何やら嫌がらせをされたのかわからないが泣いている弱気な男の子が春香の後ろでうずくまっている。
「…」
春香はジョーを見る。
…名を『神田丈』と言う。
神田春香と同じ苗字だが血はつながっていない。春香と同じ12歳。同じ家に住んでいる。だが血は繋がっていない。
「ジョー…行くよ」
春香は泣いている丈の手を取り無理やり立ち上がらせる。
この弱弱しい内気で泣き虫の男に少しイライラしながら強引に腕を引っ張り歩かせる。
「ひっぐ…!」
「泣ーくーなっ!!!」
夕日が2人を染める。川が夕日を反射し美しい。ひぐらしやセミの声がまだ鳴り響く。
「ジョー…!帰ったらストリートバトラーだからねっ!まだ決着ついてない!あんたがケガして弱くなったら嫌なんだからっ!」
ストリートバトラーと言うのは格闘ゲームの名前。
春香はジョーと連日連夜この格闘ゲームで対決していた。
「ひっく…ひっく…」
「だから泣ーくーなっ!!!」
…こんなにも泣き虫なジョーに春香は一度もストリートバトラーで勝った事がなかった。
いま思えば…ここが原点なんだろうな…ゲームが生きがいになった………




