『軍師と軍師』
…このショッピングモールに春香達が到着して3日が経った。
東条達の行動もあり女性たちは屋上からひとつ下のフロアの銭湯の休憩スペースなどで寝ると言うのが自然の流れとなり、男性陣は屋上での雑魚寝だ。
…その流れをつくった東条を神崎は2日目の夜に呼び出して問う。
「お前か!?女性陣 下にやったの!」
「…」
神崎は相変わらず缶の酒を片手に酔いながら声を荒げる。
「俺のイケメン具合見せれなくなるだろっ!なにしてんだ東条!」
…と、やはり神崎は特に女性陣に直接手を出すわけでもないただの承認欲求バカなんだと再認識する。
…そんな中でもずっと薄ら笑いの赤髪…立花が気になるが東条はあまり必要以上に視線を立花に向けないようにする。
「東条お前昨日聞いたけど事業家なんだっけか!?いろいろ事業作っては売却して金持ちなんだろ!?金持ちの考えはわかんねーわ!!!」
そう言いながら酔ったまま缶ビールを飲み干す。
…そこで立花が神崎に声をかける。
「…まぁまぁ、神崎さん、俺が東条に軽く説教しますわ…♪」
「おん…?」
眠そうな声で返答する神崎。
「神崎さん…あんたはまだまだ酒楽しんでください…♪」
「おおー立花、おけー、まぁあんま東条をイジめてやんなよ…」
と言いながらフラつきながら立ち上がり新しい酒を取りにストック場所へ向かう。それを青髪がサポートする。
…立花は東条に目を向けて「まぁ端っこ行きましょうや東条さん…」と笑顔で言う。
警戒しながらも東条は応じて付いていく。
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屋上の神崎達から離れた端の方で、地に座り込みタバコに火をつけ月を見上げる立花。
東条は無表情で立花を見る。
「東条さん…あんた神崎をどう見る?」
「…!」
立花はひょうひょうとした声で問いかける。
「俺はね東条さん…神崎さんの尻ぬぐいなんでもして来たし…逆にあの人が上手くいきそうならブーストかかるようにめっちゃサポートして来たんだよ…」
陽気な感じで続ける立花。
「…困るよねぇ、大将がバカだと。おかげでこっちの労力はすげー。その代わり恩恵はナンバー2それ相応のショボイ恩恵だ…」
「…」
「頭のいいアンタならわかるっしょ?」
…濁った眼。
…立花の濁った眼が東条の目を突き刺す。
しかし東条もそれに動じるような男ではない。
別に現場を見たわけではないし全てを理解しているわけではないが、
恐らく神崎が半グレ集団で暴君としてリーダーを張れたのは、
この立花が有能だったからなのだろう。
戦争で言えば『軍師』
神崎はただの脳筋な特攻隊長と言うところか…
「俺はね東条さん…もう神崎を支える気はない…」
「…」
「もう飽きた…」
「…」
「いっつもいっつもアイツばっか金も女も手に入れて…」
「…」
「俺は神崎の跡目を狙って組織の上の方にも名を売ってきた…」
「…」
「そんな矢先にこんな世界…」
立花はギャグっぽく頭を抱えて泣くフリをする。
「あぁ~…なんて不幸っ…この立花ちゃん暴君を全力で支えて来たのにっ…金も女も楽しめないまま世界崩壊っ…!」
「…」
立花は東条を見る。
「東条さん…組まないっ…?」
「…!」
…悪魔のような狂気の目をしている立花。
「あんたも軍師タイプでしょっ?…いや、まぁ俺もある程度は喧嘩できるタイプだしあんたも身体は鍛えてると思うけど根は軍師タイプっしょ…」
「…」
濁った眼。
「人を操る事に快感を覚える…」
「…」
濁った眼。
「操るって言っても操作ではなく"持ち上げる"…"褒める"…相手を優位にさせて自分の思い通りに動かす…それが快感っ…♪」
濁った眼。
「立花…」
「…!」
東条が口を開く。
「アンタは賢い…それは認める」
「でしょっ?♪」
「でも…俺はあんたとは組まない…と言うか出会ってから日が浅い」
…まぁ『日が浅い』と言うのは苦し紛れのフォローで本心は『組まない』がメインだが
「ふーん…♪まぁそうだろうね」
「…」
「じゃあ俺もそろそろ退屈だし、色々と動こうか…♪」
「…!」
タバコの火を消して立ち上がる立花。
「女性陣にちょっかい出そっかなー♪それか誰かひとりケガさせてみよっかなー♪それかいっその事どっかに放火してみよっかなー♪」
「…」
東条が殺気立つ目で立花を見る。
…その視線に気付いた立花がふざけたように言う。
「ちょっ!冗談冗談!神崎が嫌いなのは本当だけど!いま言ったような事はしないって!」
ニコニコしながら言う。
…そして間を開けて東条の目を改めて見た後、歩き出し、東条とすれ違いざまに言う。
「まぁなにするにしても有能そうなお前が一番邪魔だわな…」




