01
がこんっっっ……!!!
それは黒い虎…『冥牙』(と名付けた化け物)の攻撃を春香が防いだ音。
その攻撃は全身の突進を含めた前足の爪による攻撃で、春香は持ち前の反射神経でアルミ鍋の蓋で防いだ。
そう防いだ。
あくまで冥牙の爪の攻撃を鍋蓋で防いだだけで、全体にかかる力は異常なので、衝撃に全身は吹っ飛ばされた。
窓際の壁に背中をぶつけられるほど飛ばされ春香はすぐさま咳き込む。
無理もない。
別に喧嘩をしたことがあるわけでもない女子ゲーマーだ。
あくまでパリィができるだけで実戦経験はない。
背中の衝撃があまりにもきつく息を吸うのに時間がかかるが、男勝りで負けず嫌いな性格が幸いし敵を睨みながら考える。
咳き込みながら、「とにかく麗を立ち上がらせるしかない」と考える。
正直自分ひとりだけ生き抜くならいま目の前の2人…麗と美優を見捨てて窓から逃げればいい。
ただそんなことはトゥルーエンドには向かわない…とこんな非常事態でもゲーマー脳で中二病的な発想に陥る。
麗も美優も救う。それは善意でも綺麗ごとでもなくそもそも生存者が多い方が勝率が上がる。
春香は麗の両肩を掴んで「麗ちゃん!麗ちゃん!」と呼びかけるも涙を流して我ここにあらずだ…
「くっそ…」
そう言って春香は冥牙と対峙して考える。そんな中で麗の腰で顔上げた美優が春香に声をかける。
「ひうぅぅっ…春香さんっ」
「…!?」
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春香は美優ともリビングで絡んだ事がある。
あまりにも絵に描いたような妹…と言うかガキみたいな甘え具合に引いた記憶がある。
リビングにある調理器具…包丁とまな板…自室にはないので拝借してねぎを刻んで大好物のカップラーメンにトッピングしようとする中で美優が絡んで来たことを覚えてる。
「春香さんネギ刻んでるのっ!?」
…美優がこのシェアハウスに入るまで正直積極的に他人に絡まれた事はなかった春香。
大体が他人に干渉しない最低限の絡みだったからだ。
「刻んでるけどそんな珍しい…?」
と苦笑いで対応するも美優はネギよりも春香に興味を向けている。
春香はそれを軽くあしらいカップ麺にネギを入れてよだれを垂らしながら部屋に戻る。
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美優がシェアハウスに入ってからは野良犬?野良猫?ハムスター?…正式な例えはわからないがとにかく動物ペットのように人になつく。
その標的になったのが水田麗だった。
滅多に帰ってこないこのシェアハウスの主クルミ(管理人、兼、敏腕キャバ嬢)が帰ってきたときもまるで実の姉のように抱き着き甘えまくる美優。
美優の見た目が小動物のような感じなので皆油断するし許してしまう。
どう言う訳かうっとおしいのだが誰も美優を責めれない。
そのようなペットのような、まぁ言葉を選ばず言うとアホの要素とドジマヌケな性格で接してきて誰もほっとけない。
誰だって例えば子犬や子猫が公園で近寄ってきたらアレルギーでもない限りほっとけない。
その感覚だ…
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「麗ちゃん起こすっ!!!」
「…!」
麗の腰にしがみついて顔を突っ伏してた美優が突然、容赦なく麗の右頬をバチィィンッ!と平手打ちする。
「!?」
…突然のことに春香はビクッと目を白黒させ、衝撃を受けた麗も状況がわからず目を白黒させる。
「あれ?え?美優ちゃん?」
と目を白黒させながらハテナマークあげまくる麗に美優が抱き着き
「麗ちゃん!しっかりして!」
と叫ぶ。
それを聞いて麗は改めて気を持ち直し、春香を確認する。
春香はいったん黒い虎…冥牙と再度睨み合うが…
「麗ちゃん!目覚めたなら行こう!」
「え?」
「美優ちゃんも行くよ!」
「へっ?」
「先に窓から逃げて2人ともっ!!!」
…瞬間、冥牙が再び襲い掛かるも遥が鍋の蓋でパリィして壁に背中を叩きつけられる。
「ガハッっっ…!!!!!」
その様子を見て麗は腰にしがみついてる美優ごと移動して春香の腕もつかみ、窓から全員で逃げ出す。




