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過保護な公爵様に溺愛されましたが、対等になりたいので城を出ます!〜医療チートと神速の抜刀術で無双する借金冒険者生活〜  作者: 月神世一


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30/30

EP 10

嵐の後の大収穫! 違約金はウソ? ここが私たちの新しい居場所ホーム

チュン、チュン、チチチッ……。

ポポロ村の朝は、小鳥たちの長閑のどかなさえずりから始まった。

東の山から昇る眩しい朝日が、荒れ果てた、いや、見事に開拓された村の広場を黄金色に照らし出している。

「……う、うーん……朝、か……」

私は広場に敷かれたブルーシートの上で、ゆっくりと目を開けた。

身体の調子は、恐ろしいほどに絶好調だった。筋肉痛一つなく、肌は高級エステ帰りのようにつややかで、魔力も体力も限界(120%)までみなぎっている。

だが、心だけが、昨夜のトラウマでズタボロに削り取られていた。

「姉御……じゃなかった、キャルル村長の熱いご指導、マジで身に染みました……」

私の隣では、ルナミス帝国最強クラスのネフィリムであるリアスが、死んだ魚のような琥珀色の瞳で虚空を見つめ、引きつった笑いを浮かべていた。

その向こうでは、プラチナブロンドの髪を土まみれにしたルーク(元・公爵令息)が、「俺の闘気が……兎の蹴り一発で紙屑のように……」と、完全に自信を喪失して膝を抱えている。

地獄フルボッコと天国(全回復)の無限ループ』。

それは、満月の夜にのみ発現する月兎族の狂気。私たちは昨夜、一生分の痛みと回復を味わわされたのだ。

「ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!!!」

ズザァァァァァッ!!

私たちの目の前で、特注の安全靴を履いた可愛い兎耳の少女が、凄まじい勢いでスライディング土下座をキメた。

「私っ、満月を見るとどうしても血が騒いじゃって! 皆さんのドクンッドクンッていう素敵な心音を聞いてたら、もっと健康にしてあげなきゃって思って、ついやりすぎちゃいましたぁぁ! 本当に、本当にごめんなさいぃぃ!」

ラフなパーカー姿のキャルル村長は、ボロボロと大粒の涙を流しながら、地面に額を擦り付けて謝罪している。

昨夜の狂気が嘘のように、いつもの「優しくておっとりした村長」に戻っていた。

「ついやりすぎた、だと……? 俺の顎は粉砕され、ルークに至っては首の骨が折れかけてたぞ! 治せばいいってもんじゃねえんだよ!」

リアスが青筋を立てて怒鳴る。

「ははは……だが、見ろリアス殿。俺の折れたはずの首も、微塵の痛みもない。それどころか、以前より闘気の練りがスムーズになった気がする。これはこれで、荒療治の極致と言えるのではないか……?」

ルークはポジティブに解釈しようとしているが、その目は明らかに怯えていた。

「ま、まぁまぁ二人とも! 怪我が治ってるんだから、過失致傷罪はギリギリ不成立ってことで……!」

私がなんとかフォローを入れようとした、その時だった。

「み、美月さぁん!! 大変ですの! は、畑がぁっ!!」

みかん箱の影で寝ていた芋ジャージ姿のリーザちゃんが、目を丸くして畑の方角を指差した。

「えっ!? 嘘、昨夜の害獣駆除で、もしかして作物が踏み荒らされちゃったの!?」

私の10万ポイントが! と血相を変えて立ち上がり、畑へと猛ダッシュする。

しかし、そこに広がっていた光景は、私の予想を遥かに超える『奇跡』だった。

「な、なにこれ……!?」

数日前までカチカチに干からびていた荒れ地。

そこに昨日、キャルル村長が蒔いたばかりの『月見大根』と『ネタキャベツ』の種。普通なら収穫まで数ヶ月はかかるはずの作物が。

なんと、一晩にして私の背丈ほどもある巨大な葉を広げ、大地の魔力をたっぷりと吸い込んだ、極上の巨大野菜へと急成長を遂げていたのだ!

「す、すごい……! 美月さんたちが耕運機で作ってくれた最高の土壌に、リーザちゃんの『Love & Money』の成長バフ、それに昨夜の満月の魔力……! 全てが完璧に噛み合って、一夜にして大豊作になっちゃいましたぁ♡」

土下座から立ち上がったキャルル村長が、兎耳をピクピクと揺らして歓喜の声を上げる。

さらに、畑の横の休耕地には、私が昨夜『閃光』で真っ二つにスライスした、オークキングやジャイアント・ボアの大群の死骸が、まるで精肉工場の出荷待ちのように綺麗に積み上げられていた。

「……おいおい、冗談だろ。これ全部、お前が一太刀でやったのか?」

リアスが魔獣の死骸の山を見て、呆れを通り越して感嘆の息を漏らした。

「Bランク上位のオークキングの魔石に、ジャイアント・ボアの極上肉。おまけにゴブリンライダーの毛皮まで……。これだけの素材、冒険者ギルドに持ち込めば、金貨50枚(約500万円)は軽く下らないぞ」

「き、金貨50枚!?」

「それに、この大量の野菜! 昨夜の魔獣の血が最高の肥料になったんだわ!」

私たちはお互いの顔を見合わせた。

廃村の危機から一転。ポポロ村は今や、莫大な食糧と、換金用の高級素材の山に囲まれた『超・宝の山』と化していたのである。

「やった……やったぁぁぁっ! これで村は完全に復活よ!」

私が両手を高く突き上げて喜んだ瞬間。

パラパラパラッ……!

私の頭上に、黄金に輝く紙吹雪が舞い散り、かつてないほどの大音量でファンファーレが鳴り響いた。

【大規模イベント達成:『廃村の復興・地域貢献(特大)』】

【善行獲得:村のインフラ再建および難民救済の基盤確立 +100,000 P】

【現在の所持ポイント:120,822 P】

「じゅ……じゅうまんぽいんとぉぉぉぉぉぉっ!!!」

私はシステムパネルの数字を見て、その場に崩れ落ちて号泣した。

12万ポイント! これなら、日本から無菌室の手術台だって、最新のMRI機器だって、なんだって召喚できる! これで私は、異世界でも本物の『命を救う医療』が提供できるんだ!

「おい、美月。急に虚空を見つめて泣き出すな。お前も昨夜の蹴りで頭がおかしくなったのか?」

リアスが心配そうに覗き込んでくるが、私のポイ活の喜びは誰にも理解できまい。

「皆さん……本当に、本当にありがとうございます!」

キャルル村長が、再び私たちに向かって深く頭を下げた。

「前の村長さんが駆け落ちラビリンス(失踪)して、村人が誰もいなくなって……私、一人ぼっちでこの村をどうしようか、ずっと不安だったんです。でも、皆さんが来てくれて、一晩でこんなに豊かな村に生まれ変わりました!」

彼女の言葉は、嘘偽りのない本心だった。

「……フン。美談にしてるところ悪いが、俺たちにはまだ『違約金一億枚』っていう10兆円の借金があるんだ。こんな辺境の村で一生土いじりをして返すのは御免だぞ。さっさとあのふざけた契約書を破棄しろ」

リアスが冷たい声で、あぶり出し魔法で文字が浮かび上がった依頼書の写しを突きつけた。

すると、キャルル村長は「あっ」と声を上げ、てへぺろっと舌を出した。

「あはは……ごめんなさい! それ、実はただの『冗談』なんです!」

「「「…………はい?」」」

「皆さんが村の惨状を見て帰っちゃいそうだったから、咄嗟に持っていた果汁(レモン汁)で裏に書き足しただけなんです! ギルドの魔力契約は、後から書き足したインクには適用されませんから、法的な拘束力はゼロですよ♡」

「なっ……!?」

リアスの持っていた羊皮紙から、パラパラとレモン汁で書かれた焦げ跡が崩れ落ちていく。

「つまり……違約金一億枚は、ただのハッタリだったってことか……?」

「はいっ! でも、皆さんに渡した前金の金貨10枚は、私が貯めていた村の正真正銘の『へそくり』です! それだけは本物ですから、安心してください!」

キャルル村長が無邪気に笑う。

その瞬間、リアスの額に青筋がピキィッ!と浮かんだ。

「て、てめぇ……! 俺の昨日の絶望と胃痛を返せぇぇぇっ!!」

「ひゃああっ! リアスさんが怒ったぁ! ごめんなさーい!」

リアスが魔刃鞭を振り回して追いかけ、キャルル村長が神速のウサギ跳びで逃げ回る。

そのドタバタ劇を見ながら、私とルーク、そしてリーザちゃんは、顔を見合わせて思わず吹き出してしまった。

「あははははっ! もう、最高ですね! 違約金が嘘なら、私たちは完全に自由の身じゃないですか!」

私が笑いながら言うと、ルークが優しく微笑み、プラチナブロンドの髪を揺らした。

「ああ。だが美月殿、俺はもう、この村を離れる気はないぞ。俺たちの手で大地を耕し、魔獣を退け、共に汗を流したこの場所……。ここには、城にはない本物の『誇り』がある!」

「ええ、私も同感です! ここなら農業もできるし、システムポイントも稼ぎ放題だし!」

私は大きく頷いた。

「はむっ、もぐもぐ……。私も賛成ですの! ここなら美味しい野菜が食べ放題だし、美月さんのお裾分け(カツサンド)も毎日もらえますの!」

リーザちゃんが、もぎたての月見大根を丸かじりしながらサムズアップする。

「……おい、お前ら。勝手に住み着く算段をつけてるんじゃない。俺はこんな狂った兎のいる村になんて……」

追いかけっこを終えて息を切らしたリアスが戻ってきたが、その顔には、以前のような冷徹な孤独の影は消え去っていた。

「リアスさんも、残ってくれますよね? ここなら、あの魔獣の山みたいに、討伐依頼の素材がタダで手に入り放題ですよ?」

私がニヤリと笑って交渉(物理的メリットの提示)をすると、リアスはチッと舌打ちをした。

「……前金の金貨10枚分、しっかり働いてやるだけだ。俺の魔法をタダで使えると思うなよ」

ツンデレなネフィリムの承諾の言葉に、私たちは一斉に歓声を上げた。

「よーし! それじゃあ、大豊作と、私たちの新しい居場所ホームの完成を祝って! 今日の朝ごはんは、月見大根とジャイアント・ボアの極上ステーキよ!!」

「「「おおおおおっ!!」」」

青空の下、ポポロ村の広場に、美味しいお肉の焼ける匂いと、私たちの明るい笑い声が響き渡る。

借金なし(違約金はウソ)。

所持ポイント12万オーバー。

最強のスパチャアイドルと、ハイテンションなヤンデレ村長という規格外の仲間たち。

神城美月、20歳。職業・B級冒険者(元・看護学生)。

愛に生きる元公爵令息と、胃を痛めるツンデレネフィリムと共に歩む、私の異世界『ポイ活&開拓DASH村』生活は、ここからが本当のスタートだ!

(第三章・完)

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