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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第991話:土産話を記録する

「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「やあいらっしゃい。精霊使いのパーティー全員は初めてかい?」

「そーかも」


 魔境から帰還し、ギルドでの昼食の後、レイノス西門へクララの『フライ』で飛んで来たのだ。

 警備兵達が笑いながら話しかけてくる。


「精霊悪魔連れでレイノスに入るなら、よっぽど気をつけてくれよ」

「まあ君なら大丈夫だろうけどな」

「え? いやいや、さすがにそんな非常識なことしないって」

「ん? レイノスに用があるんじゃないのかい?」


 レイノスじゃなくて、あんた達に用があるんだってばよ。


「悪役令嬢出て行かなかった?」

「悪役令嬢? ああ……」


 プリンスルキウスの元婚約者フィフィリアと愉快な仲間達のことだ。

 警備兵達がヤレヤレといった体で顔を見合わせる。

 ハハッ、悪役令嬢で通じるじゃないか。


「悪役令嬢とその母、侍女二人、執事、下男の計六人の一行だな?」

「うん。悪役令嬢はプリンスルキウスの元婚約者なんだってよ」

「「「「えっ?」」」」


 やっぱり知らないのか。


「悪役令嬢の父ちゃんがやらかして、爵位剥奪されたんだそーな」

「だから婚約解消ってことか」

「そゆこと。プリンスルキウスが在ドーラ大使になったのは、やらかし父ちゃんのスキャンダルに巻き込まれないようにするためとゆー側面があるって、昨日ウルピウス殿下に聞いた」

「ふうん、新大使殿下も大変なんだなあ」


 あんなんが婚約者なのは大変だと思うわ。


「で、悪役令嬢はどーしたかな?」

「いやあ。扇で口を隠したまま、オレ達に一瞥さえくれずに門を通っていったぜ?」

「あたしなんかサル言われたわ」


 ふむ、まあ出発はしたか。

 やはりレイノスでは暮らせないという考えは変えなかったらしい。

 ここまで予定通り。


「あの一行はどこへ行ったんだ? レイノスに帰ってくるんだろう?」

「いや、西の果ての塔の村を目指してるんだ」

「「「「塔の村?」」」」


 驚く警備兵達。


「父ちゃん男爵がやらかして家族ともどもドーラに流れてきた、なんて愉快な話が伝わったら、レイノスじゃ笑い者になりそーじゃん? 上級市民なんか貴族の動向に興味津々なんだから。よって遠いところに逃げる。ユーシー?」

「ははあ、でも令嬢の足じゃムリじゃないか?」

「普通ならね。でもあたしが手を貸すから」

「どうして? 放っときゃいいじゃないか」

「貴族がしたことのない苦労するって面白くない? なのにすぐリタイアされちゃつまらんから。もっとあたしにエンターテインメントを提供して欲しいの」

「いい性格してるなあ」

「褒めてくれてありがとう」


 生温かい笑い。


「二時間くらい前に出て行ったよ」

「二時間前か。一番近い自由開拓民集落ってどこかな? そこが今日の目標になるだろ」

「リレイヤだな。強歩二時間くらいだが……」


 まあ着いてるわけない。


「行ってくるね。さよなら」

「バイバイぬ!」

「おう、またな」


 クララの『フライ』でびゅーん。


          ◇


「あ、いたいた。半分以上来てるじゃん」

「思ったより頑張ってやすね」

「まーね」


 フワリと着地、立ち往生している悪役令嬢一行に話しかける。


「やあ、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「あ、貴方は昨日のおサルさん! どうしてここに?」

「亜人?」

「うちの子達は精霊と悪魔だよ。どうせこんなことだろうと思って笑いに来たんだ」

「ななな……」

「執事さんの言うこと無視して、靴擦れでも起こして歩けなくなったんでしょ?」

「!」


 見てくれ重視の貴族の靴が、長距離歩くのに適しているもんか。


「一番近くの自由開拓民集落まで送るよ。手を貸すのはこれっきりだぞ?」

「くっ、おサルさんの手を借りなければならないとは……」

「この期に及んでまだそのセリフを口にできるのか。ビックリするほどメンタルが強いなあ」


 ますます面白い。

 あくまで観察対象としてはだが。


「クララ」

「はい、フライ!」

「おお、飛行魔法ですか。何と見事な!」

「うちのクララの飛行魔法は世界一だよ」


 アトラクションを楽しんでください。

 びゅーんとすっ飛ばし、数秒で自由開拓民集落リレイヤへ。


「とうちゃーく。リフレッシュ!」

「あっ! 幻の聖女のスキル?」


 この執事は結構知識あるなあ。

 中級冒険者に近いレベルはあるし、悪役令嬢にはもったいないわ。


「これでもう皆歩けるでしょ」

「あ、貴方は何の目的で……」

「気にすんな。ただのあたしの酔狂だから」


 お母さんとか執事とか、あたしを尊敬の目で見てるが困ったな。

 マジで酔狂だって言い出しにくいじゃないか。


「執事さんにはこれあげる」


 先ほど買った『ホワイトベーシック』のパワーカードと『アクアクリエイト』のスキルスクロールを渡す。


「こ、これは?」

「『ヒール』と『キュア』を使えるドーラ独自の装備品だよ。使ってみて。ちょっと魔力を流せば起動するから」


 うむ、問題ないな。


「スクロールは飲み水を作れる魔法だよ。それがあれば塔の村まで行けるでしょ」

「ありがとうございます。助かります!」

「ど、どうして私に寄越さないのっ!」

「アホか。あんたみたいな低レベル者が持ってて何の役に立つんだ。すぐマジックポイント切れ起こすだろーが」

「くっ……」


 一々反応が愉快だけど、悔しがる前にやることあるでしょ。


「今日中にもう一つ先の集落まで行く手はあるけど、まあムリだからやめとき。じゃあこのリレイヤの集落でやっとかなきゃいけないことは?」

「お、お腹がすきました」

「歩きやすい靴が必要です」

「今夜の宿を……」


 侍女や下男が次々と意見を言う。

 うんうん、いいね。


「大変よろしいでーす。この先の情報収集も必要だね。明日は雨だから注意して。明後日出発のつもりでいてね」


 頷く執事。


「大事な必須事項があるよ。なーんだ?」

「「「「「「……?」」」」」」

「あったこと、やったことを記録につけておいてね」

「どうして記録なんて必要なのっ!」


 ヒステリー起こすなよ。


「あんた土産話の一つも持たずにリリーに会うつもりなのかよ」

「えっ?」

「実はリリーは、ドーラの西域街道についてさほど詳しいわけじゃないんだ。変わったことを見聞したら話してやればいいし、目新しいことじゃなくても旅の失敗談なんか鉄板だぞ?」

「そ、そうね」

「健闘を祈る。じゃねー」


 たーのしみだなー。

 転移の玉を起動して帰宅する。

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