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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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989/2453

第989話:塔の村にお知らせ

 ――――――――――一七八日目。


「うーん?」


 今日は凄草株分けの日。

 曇っちゃいるけど、この先天気はどうなんだろ?

 畑番の精霊カカシが言う。


「雨は降らねえのか?」

「ダンテ、どう思う?」

「トゥデイはモーマンタイね。トゥモローはレインね」

「となると……」


 明日は海の王国とソロモコがいいな。

 今日は雨降らない内にやっておくべきことをやるか。

 ダンテの天気予知の力は予定を立てやすいんでありがたい。


「カカシ。帝国から果樹をもらえることになったんだよ」

「ほう?」

「お礼だって」

「ユーちゃんの活躍の賜物じゃねえか」

「いやまあ、そんなことあるよ」


 果物やナッツの木はドーラに足りないものだ。

 帝国の優れた品種をもらえるのは実にありがたいなあ。


「おそらく何種類かくれるんじゃないかな。全部は難しいと思うから、カカシ好みのやつ一、二本うちに植えようよ。残りは灰の民の村で育ててもらおう」

「そりゃあ楽しみだな」


 うむ、カカシも喜んでくれている。

 うちの農業にはドーラの未来が懸かっているからな。

 カカシのモチベーションが非常に重要なのだ。


「ドーラをフルーツの国にしたいねえ」

「ガンガン増やすね?」

「ガンガン増やしてしまうねえ。もー勘弁してやらん」


 アハハと笑い合う。


「よーし、植え替え終わり! カカシ、頼むね」

「おう、ユーちゃん任せとけ!」


 うちの子達は皆頼りになるなあ。


「ユー様、御飯ですよ」

「今行くー」


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 塔の村にとうちゃーく。

 輝く頭部はどこだ、と。


「おーい、じっちゃーん!」

「ユーラシアじゃないか」

「バルバロスさん、久しぶり!」


 西域のクマ男ことバルバロスさんが一緒でした。

 相変わらずでっかいし、もっさい。


「朝からどうしたのじゃ?」

「昨日独立後第二弾の移民が来たじゃん? 種をたくさん持ってきてくれたんだよ」

「おお、助かるの」

「先月の移民はほぼ裸で放り出されてきたと聞いたぞ?」

「マジなんだよ。独立前のべらぼうな出国税がまんま適用されてたからなんだって。冗談じゃないわ」


 あたしも帝国に行けるようにはなったが、政治の事情はまだよくわからない。

 メキスさんとバアルという情報源を失ったことで、主席執政官ドミティウス第二皇子の手腕に陰りが見えている説があるが?


「今は友好国法が施行されてドーラへの出国税は撤廃になったんだ。もう大丈夫だけどね」

「お主が何をしに塔の村へ来たのか、もう一つわからんのじゃが」

「移民が持ってきた余剰の種ってのがあるんだよ。トウモロコシとか結構あるから、メキスさんに渡しておこうと思って」

「ふむ、ありがたいことじゃの」

「塔の村もできる限り自給して欲しいしね」

「ユーラシアは働き者だな」

「おっ、バルバロスさんはあたしを正確に把握しているね」


 アハハと笑い合う。


「そーだ、じっちゃんこれどう思う?」


 グロちゃん製の魔物除けの札を見せる。


「これは……ん? 今までのものより効果が高いか?」

「黒の民が最近売り出したやつだよ」

「値段はいくらじゃ?」

「今までのと変わんないよ。一枚五〇ゴールド」

「「ほう!」」


 興味津々の二人。


「デスさん、これなら西域の自由開拓民集落でも有効だろうか?」

「うむ、かなりの効果が期待できるのではないか」

「バルバロスさんに一〇枚あげるから、検証してみてくれないかな」

「ガハハ、気前がいいな」

「じゃねー」


 二人と別れ、正門外の畑へ。


「おーい、メキスさーん」

「おお、精霊使い君じゃないか」

「畑順調だねえ」

「ああ、ダイコンは食堂に回せるようになったな」


 充実してるんだろう。

 いい顔してる。


「昨日移民が来たんだよ。ようやく種が手に入ったから持ってきた」

「これはすまんね」

「いやー、働いてもらってるこっちがすまんねなんだよ」


 アハハと笑い合う。

 本当にありがたいのだ。


「移民でちょっと面白いことがあったんだ。何とプリンスルキウスの元婚約者がドーラに来たのでした!」


 すげえ微妙な表情になるメキスさん。


「どうしたの? 酸っぱいものでも噛んだような顔だけど」

「……フィフィリア嬢だな? ババドーンの娘の」

「そうそう」

「つまりババドーンの失策で婚約解消になったか」

「みたいだね」

「よくは知らんが、とんでもなく我が儘で辛抱の利かない娘という噂を聞いたことがある。実際会ってみてどうだった?」

「とんでもなく我が儘で辛抱の利かない娘だねえ。おサルさん扱いされたから、サルの国へようこそって言ったった」


 笑い。

 まあ我が儘なのはあたしも一緒だけどな。


「レイノス住みになるんだろう? オレには関係なさそうだ」

「いや、塔の村を目指してるの」

「どうして?」

「レイノスの港近辺の住民は、帝国の情報に敏感なんだよね。おそらくレイノスじゃ噂が広がっていたたまれなくなっちゃうし、塔の村にはリリーがいるから」

「ははあ、しかし、ここまで来られるのか? 徒歩なんだろう?」


 メキスさんの懸念はその通りです。


「まー実にドーラ向きじゃない言動だからさ。ちょっと苦労させてドーラ向きの性格に矯正してやろうかと思って」

「ハハハ、剛腕だな」

「そんなこと言うけど、あんな高飛車じゃどこ行ったって通用しないぞ? 一目で切り捨てないあたしをいい子いい子してもらいたいくらいだよ」


 苦笑するメキスさん。


「貴族らしい貴族こそ、潰しが利かないものなのかもしれないな」

「ドーラには知識か技術を持ってる有能な人に来てもらいたいんだけどなあ」


 貴族って皆かなりの教育を受けてるんじゃないの?

 実地で生かして欲しいわ。


「君が見捨てないのは何故だい?」

「いや、リリーもプリンスも気さくじゃん? お貴族様キャラの人って見たことないから新鮮で。もうちょっと楽しもうかと思ったの」


 頑張って塔の村まで辿り着くことができるようなら、根性くらいは認めてもいい。


「でもまだわかんないよ? ここまで来られそうになったら、リリーにも教えてやろうかと思ってる」

「ふむ、皇女殿下と仲は悪くないと聞いている」

「リリーは器が大きいなあ。見直したよ」


 もっともあの悪役令嬢は、身分が高い人には諂うタイプっぽい気がするが。


「じゃあね。メキスさんも記憶だけしておいてよ。忘れたって全然構わないけど」

「ハハッ。ではまたな」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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