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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第984話:悪役令嬢の角を丸めたろ

 悪役令嬢フィフィが澄ました顔で言う。


「あらあら、躾のなっていないおサルさんだこと。ルキウス様とウルピウス様は、貴方が気軽に声をかけていいお方ではなくってよ」

「サルの国へようこそ。歓迎するよ」


 うむ、初めて出会う個性だ。

 ひっじょーに面白い。

 想像していた高飛車な貴族原色見本のまんまって感じだ。


「要はお父ちゃん元男爵のせいで帝都にいると笑い者になるから、ドーラへ逃げてきたんだね?」


 あまりの図星に鼻白む悪役令嬢様御一同と、苦笑しながら頷くプリンス達。

 お父ちゃん男爵が失脚したのは、どーもテンケン山岳地帯であたしがとどめ刺しちゃったからっぽい。

 ならばその娘くらいはあたしが責任持ってからかって……面倒みてやろうじゃないか。


「どこに住むか、って話になってるんだ」

「レイノスじゃダメなん?」


 貴族が住めそうなところなんて、他にはドーラにないだろ。

 アドルフが説明する。


「貴族が移住してきたとなれば、中町住民の話題になるに決まっている。特にクリーク殿とマックス殿が新聞に紹介され、すぐ受け入れられたという前例があるだろう?」

「理解した。新聞記者は当然情報を欲しがる。情報が足りないとあたしのとこに泣きついてくるから話しちゃう。結果、レイノスにも住めなくなっちゃうということだね?」

「あ、貴方が話さなければいいだけなのでは?」

「何を言っているんだ。サービス精神旺盛なのは、あたしのごまんとある長所の一つだぞ?」

「私にもサービス精神を発揮しなさいよっ!」


 大笑い。

 うんうん、和やかな雰囲気になったね。

 大体あたしが何も話さなかったらレイノスに住めると考えるのは甘いわ。

 帝国風味に尖った性格という、もっと致命的な問題があるわ。


「レイノスがダメとなると、移民のいる開拓地かカトマス、塔の村くらいだけど……」


 当然移民はババドーン男爵の悪評は知ってるだろうしな?

 知らなくても農民の集まる開拓地では存在が浮き過ぎか。

 ならばカトマスか?

 カトマスもレイノスに次ぐ情報集積地だしなあ。

 帝国貴族が目立つのは同じだし、いずれ住めなくなりそう。

 となると……。


「塔の村しかないなあ」


 同じ目立つにしても、レイノスに近いカトマスよりマシだろ。


「村? 貴族の中の貴族たる私がドーラの村? 零落れたものだわ……」

「でも塔の村にはリリーがいるよ」

「リリー、とは誰ですの?」

「帝国の第七皇女だよ」

「えっ? リリアルカシアロクサーヌ皇女殿下が? 何故?」


 すげえ食いついてきたぞ?

 帝国人にリリーの話題は鉄板だなあ。


「リリーは武術が得意でしょ? 塔の村で冒険者活動してるんだよ。ドーラが気に入ったらしくて、去年の秋からずっといるの」

「知らなかった……どこかで御静養されているものとばかり思っていたわ。貴方、褒めてとらすわよ」

「どこまで上から目線なんだよ」


 面白いからいいけど。


「リリー様がいらっしゃるなら、退屈な田舎生活にも我慢できる気がするわ。塔の村とはいずこにあるの?」

「強歩三日くらいの西だよ」

「馬車を用意させなさい」

「えっ?」


 すぐに馬車って発想が出てくるところがブルジョワだなあ。

 貴族の考え方とはこーゆーもんか。

 覚えとこ。


「えーと、サルの国の街道は馬車が通れるほど整ってないんだよ。せいぜい荷駄車くらい。あんなんに乗っていくと、お尻が痛みのあまりどうかしちゃうからお勧めしない」

「まあ、じゃあどうやって行けばいいの?」

「歩いて」

「冗談ではありませんことよ。私のか弱い足が耐えられると思って?」

「きっとリリーが褒めてくれるぞ? 痛みに耐えてよく頑張った、感動したって」

「……それもそうね!」


 悪役令嬢単純だなあ。

 扱いやすいぞ。


「船で揺られるのは何だかんだで疲れるでしょ。今日はゆっくり休むといいよ」

「わかりましたわ」

「アドルフ、適当な宿に案内してやって」

「了解だ」

「執事さん、少し残ってくれる?」

「わかりました」


 悪役令嬢一行、アドルフに連れられて退場。

 プリンスが心配そうに言う。


「よかったのかい? 結構な距離だが歩かせて」

「帝国の社交界はあれで通用するのかもしれないけど、サルの国はあたしみたいに心の広い人間ばかりじゃないぞ? あんなキャラのまま塔の村へ送ったら総スカン食らうわ。他に行くとこないんでしょ? じゃあちょっとは苦労させて、人間性を矯正しないと」

「スパルタだね」


 致命的な問題とは悪役令嬢フィフィの性格だ。

 あたしが塔の村に送れば一瞬ではあるが、悪役令嬢がツンツンし過ぎなのだ。

 西域街道を歩かせて下々の者の苦労を知れという、あたしの親切心。


 ウ殿下が聞いてくる。


「執事を残したのは何故だ?」

「どう見てもあの一行の中で一番使えるからだよ。逆に言うと、執事さんの尽力で高飛車令嬢がどーもならんならそれまで」


 執事を含めた全員が頷く。


「逆にあの子何であんななん? お母さんは普通の人っぽいじゃん」

「お嬢様は旦那様に大変気性がよく似ていらっしゃいまして」


 わかる。

 居丈高で単純だ。

 丸め込むのは簡単そう。


「プリンスルキウスの嫁候補だったのはどうして?」

「元男爵ババドーンはエーレンベルク筆頭伯爵家の出だ。さほど身分に問題があるわけではなかった。兄上はその……どちらかというとモテるタイプではなかったから、浮いた噂とかもなくてな。男爵に押しつけられたのではないかと、傍からは思っていた」

「ええ? 帝国の人、見る目なくない?」


 プリンスと執事が笑ってら。

 悪役令嬢は今後改心していい子になるかも知れんけど、どう考えても次期皇帝候補の妃の器だとは思えん。


「いや、兄上はドーラに来て変わられた」

「精霊使い君のおかげだよ」

「プリンスは人格者だなあ。大体皆、精霊使いの『せい』っていうんだよ。『おかげ』じゃなくて」


 アハハと笑い合う。


「じゃ、執事さんは何が何でもあの子を塔の村まで引っ張ってって。西に伸びる街道の果てにある村だよ。一本道だから迷いようはないはず」

「わかりました。ありがとうございます」


 執事はなかなかできる人と見た。

 中級冒険者くらいの剣術の心得はあるようだ。

 悪役令嬢のお供はもったいないくらいだわ。

 西域でも問題あるまい。


「じゃ、あたしは帰る。健闘を祈る」

「兄上、さらばです」


 転移の玉を起動して帰宅する。

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