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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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982/2453

第982話:ウ殿下とレイノスへ

 ギルドから『遊歩』による飛行の練習がてらレイノスへ飛ぶ。

 ウルピウス殿下の『遊歩』操作はとっても上手。

 実につまらん。

 軽やかに着地、レイノス西門の警備兵に挨拶する。


「こんにちはー」

「やあ、精霊使い君こんにちは。そちらは?」

「帝国の皇位継承権四位の皇子、ウルピウス殿下だよ」

「……いきなり連れてくるの、心臓に悪い」

「警備兵がそんなことでどーする。事件は予告して起きるもんじゃないんだぞ?」

「予は事件扱いか」


 アハハと笑い合う。


「あたし、帝国の皇宮にクエストで行けるようになったんだ」

「なるほど。今日、殿下は何か用でいらしたのですか?」

「いや、観光のようなものだ。精霊使いを育んだ国はどんなところなのか、興味を惹かれてな」

「え? この子のやってることでドーラを知った気になっちゃダメですよ?」

「うむ、重々理解した」

「ひどいなー」


 あたしを知った人が皆こーゆー態度になるのには物申したい。


「今日移民が来る日でしょ? 様子見に来たんだ」

「ああ、港でしたか。どうぞ」


 レイノス外町へ。


          ◇


「ドーラは税金なしでどうやって国が成り立っているのだ?」


 道々殿下と話しながら行く。


「税金がないってのは正確じゃないんだ。ここレイノスの港近くに住んでる人達は、元々帝国に直接税金を納めてたんだよ。ドーラ独立前は帝国の市民権も持ってたの」

「ほう、そうであったのか」


 まあドーラの統治なんか知らんわな。


「で、旧帝国市民の人達は、帝国の債権持ってたりして裕福なんだよね。ドーラが独立してからは、税金を行政府に納める代わりにその人達を優遇しようねってことになってる」

「不平等ではないか」

「うん、よろしくないんだよ。しかも税金を取られてる人達は文句言ってるんじゃなくて、特権階級意識持っちゃってるからさ」

「金を払ってる者が発言権を持つのは当然のことだ。仕方あるまいが」

「殿下の言う通りなんだよなー。でもドーラみたいな移民の国で身分の上下があると良くないじゃん?」

「……新たな移民がさらに下に見られる可能性があるのか」


 理解が早いですね。

 身分は平等、扱いも平等というのが望ましい。

 けど上級市民からの税金徴収を止めると、行政府が動かなくなっちゃう。

 これが現実と理想の狭間か。


「今は首都レイノスを除く各集落が自治してるね」

「分裂しないのか?」

「ドーラは魚人の領域の関係で、レイノスしか港として機能しないの。だからレイノスとケンカすることは発展を諦めるのと同義なんだよね」

「ふうむ」


 というか指導者層がドーラを一つにまとめる方向で動いてる。

 でも二ヶ月前はオルムスさんとバルバロスさんが取っ組み合いしてたってゆーしなー。

 平穏な内に行政府の権威を確立したい。


「レイノスのみが貿易港たり得ることを利用して、輸出入の品に税金なり手数料なりをかけて政府の収入にすればいいんじゃないかなと。個人から税金取らなくても、政府機関が機能するんじゃないかとあたしは思ってるんだけどね」

「ふうむ。しかしユーラシアはこんな話、つまらなくないか?」

「ドーラの女の子はおゼゼの話大好きだぞ?」

「いつまでも純真な予を謀れると思うな」


 アハハと笑い合う。

 あ、来た来た。


「ユーラシアさん。そちらのイケメンはどなたですか? 逢引きですか?」

「醜聞ですか密会ですかスキャンダルですか?」

「カル帝国皇位継承権第四位の皇子、ウルピウス殿下だよ」

「「へへーっ、平にお許しを!」」

「何だ? ドーラの芸人か?」

「いや、新聞記者なんだよ。芸風は確立されてるけど」


 期待するような目で見てくる新聞記者ズ。

 うんうん、ネタを探してるんだね?


「殿下とは例の皇妃様呪殺未遂事件で知り合ったんだ。ドーラを見物したいってことだったから、あちこち案内してるの」

「えっ? その皇妃様呪殺未遂事件というのは、どこまで本当なんですか?」


 ちょっと曖昧に伝えたんだった。

 まだ黒幕側が引っかかってくる可能性がないではないから、呪術師グロちゃんがドーラにいる真の理由を言いたくないしな?


「予の母上が皇宮の塔から呪われてな。あわやというところで駆けつけたユーラシアの配下の精霊によって呪いは除去された。しかも配下の悪魔によって実行犯の呪術師の居場所を特定、逮捕したのだ」

「おー、さすが殿下。簡潔でわかりやすいわ」

「実行犯の呪術師はユーラシアさんがドーラに連れてきたんですよね? 何故です?」

「ユーラシアにねだられたのだ。美少女にねだられると嫌とは言えぬ」

「殿下はマジでやるなあ」


 まだこの事件は解決したわけではない。

 ウ殿下としても情報を絞りたい意図があるんだろう。

 黒幕側への揺さぶりについては触れていないが、一面の真実だ。


「皇妃様の御様子はいかがなんですか?」

「すこぶる達者であるぞ」

「いや三日間も呪われて暴れてたんだよ。普通だったら精根尽き果てて数日間は体調戻らないと思うんだけど、二日後の昨日見舞いに行ったらピンピンしてんの。ビックリした」

「大層お元気ということですね? よかったです」

「裏で糸を引いていたのは誰なんです?」


 殿下と顔を見合す。

 セウェルス第三皇子というグロちゃんの発言はあったが、まるで証拠のないことだ。


「残念ながらわかんないんだよ」

「うむ。しかし呪いの実行現場である塔の使用許可は、皇族の誰かにしか出せぬはずだ」

「となるとやはり、皇族の……」


 塔はほとんど使われてなかったみたいだからな。

 皇族じゃなくても中に入り込むことはできたかもしれない。

 でも皇妃様を呪う動機、塔を使う発想、呪いを発効させるためのアイテムを用意する力、これらが揃っているとなるとなあ。


「皇妃様呪殺未遂事件についてはそれくらいでしょうか?」

「うん。近衛兵が捜査はしてるんだけど、はかばかしくないんだよね。最初から呪術師を切り捨てるつもりで、手掛かりを徹底的に隠されちゃってるみたい。黒幕まで辿り着くことはなさそう。記事になる?」

「もちろんですとも!」


 喜んでもらえてよかった。


「殿下とユーラシアさんはどうされるんですか?」

「港へ行くんだよ。今日移民来る日でしょ?」

「私どもも後ほどオルムス知事の話を伺いに行こうかと」

「そーかー。じゃねー」

「「ありがとうございました!」」


 新聞記者ズと別れ、港へ。

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