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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第938話:ハイキング? ウォーキング?

 ――――――――――一七二日目。


「カカシー。ツバキの木、育ってきたねえ」

「おう、そうだな。花は落としておいてくれよ」

「うん、わかった」


 今日は凄草株分けの日だ。

 畑番の精霊カカシと話しながら庭弄り。

 バアルのお宝として得た、油をたくさん取れるというツバキについての会話だ。

 もちろん花を落としては種を絞って得られる油など取れないんだが、今は早く木を大きくしたいのだ。

 挿し木でどんどん増やす予定だからね。

 花は早く落とした方が樹勢が活発になるという、クララとカカシのアドバイスに従っておく。


「いろんな有用な植物を増やせるといいねえ」

「おっ? うちはかなり多いと思うぜ?」

「うちにはカカシとクララのおかげで多いんだけどさ。ドーラ全体で見るとちょっとね」

「今は穀物作るので精一杯なんだろ?」

「食べられるものの量が第一なんだよ。移民の食料の問題があるもんなー」


 でもいつまでも穀物優先ってわけじゃいられない。

 昨日、フルーツとナッツが貧弱だってことに気付いちゃったしな。

 おいしく食べられるものを。

 加工して便利に使えるものを。

 輸出できるものを。

 気候が温暖で土地の面積があるドーラは、植物の栽培で大きく発展できる地なのだ。


「春以降には、また魔境で面白い植物を見つけて取ってこられると思うんだ。どんどん広めてさ、皆の生活を豊かにしたいんだよ」

「ユーちゃんの考えは夢があるなあ」

「協力よろしくね」

「おう、わかったぜ!」


 今日もまた、凄草のフレッシュな甘みを体に染み込ませる。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 ギルドへやって来た。


「やあ、おはよう、ユーラシアさん。今日もチャーミングだね」

「おっはよー、ポロックさん」

「知ってたかい? 今日、掘り出し物屋が来るんだよ」

「知らなかった。教えてくれてありがとう!」


 最近掘り出し物屋さんのチェックを怠ってたな。

 来る日に当たったのはラッキーだ。

 特別欲しいものはないけど……。


「今日の出物は何だろ?」

「色々だって聞いたな。マジックアイテムのアクセサリー等がメインになるとか」

「いつ頃来るかな?」

「しかとはわからないんだ。昼近くになると思うよ」

「ま、参加できなきゃできないで仕方ないわ」


 マジックアイテムのアクセサリーは、うちのパーティーでは必要ない。

 でも出物色々だと面白いもんもあるかもしれないから、できれば品揃えを見たいな。


「今日これからマウさん達と共闘なんだ」

「ほう? 難しいクエストなのかい?」

「ではなくて。あたしゴブリン見たことないから、見せてくれるって」

「えっ?」


 驚くポロックさん。

 やっぱ意外なことなのか。


「普通は中級冒険者になると、頭を使ってくる狡猾な魔物のクエストを振られるものなんだが。ああ、ユーラシアさんはレベルアップが早かったから、その手の石板クエストが配給されなかったのか」

「みたいだね」

「小知恵の働く魔物ですよ。罠や集団戦に注意です」

「ありがとう!」


 頭使ってくる魔物に遭ったことないな。

 どんなことしてくるか楽しみだ。

 ギルド内部へ。


「おっはよー」

「御主人!」


 ヴィルが飛びついてくる。

 よしよし、いい子だね。


「話は聞いた。俺も行くぜ」


 マウ爺、ジーク君、レノアの他に、何故かダンがいる。


「どうしてダンが?」

「いや、俺もあまりゴブリンとは接点がねえんだ」

「あ、そーか」


 ダンが『アトラスの冒険者』になったのはレベル四九の時だった。

 当然、中級冒険者向けのクエストなんか発給されなかっただろう。

 あたしと似た立場だった。


「あんたが喜んで来るってことは面白くなると思ってるんだろう?」

「わかる? ゴブリンって賢いらしいじゃん。対人戦みたいな駆け引きがあるかと思って」

「ほう、対人戦?」


 ダンはドーラ独立戦争(未遂)の時、あたしが帝国に行ってたこと知ってるしな。


「ハハハ。どれ、行くか」

「フレンドって何組まで有効なんだったっけ?」

「五組までじゃな」


 うちとマウ爺とダンとジーク君か。

 四組ならば問題ないな。


「ヴィルはマウさんと一緒に飛んでね」

「わかったぬ!」

「俺も面倒だから、マウ爺と飛ぶぜ」


 マウ爺やジーク君とフレンド登録だけでもしときゃいいのに。

 いや、もうしてるのかな?

 フレンドで転移の玉を起動、マウ爺のホームへ。


          ◇


「いいところですねっ!」

「確かにねえ。お弁当持ってくればよかった」

「おいおい、何しに来たんだよ」

「何ってハイキング? ウォーキング? どっちが正解かな?」


 ゴブリンがいるという、マウ爺のクエストの転送先にやって来た。

 草原と森だ。

 これ新緑の季節に来たいわ。


「マウさんの転送先は、気持ちいいフィールド多くていいねえ」

「ん? 普通じゃろ」

「ユーラシアの転送先が変なところばかりなんじゃねえのか?」

「……気にしたことなかったけどそーかも。普通のフィールドは魔境くらい」

「魔境は普通のフィールドじゃないヨゥ!」

「じゃないぬ!」


 大笑い。

 マウ爺のレクチャーだ。

 しっかり聞こう。


「ゴブリンは森に住んでおる。行くぞ」

「「えっ?」」


 あ、ジーク君とハモった。


「嬢よ、どうした」

「もっとこう、ウンチクみたいなのを期待してたというか、聞かないとあたしの純真な心が納得しないというか」

「注意点はないのかヨゥ!」

「うむ、その言や良し。知らぬ地で情報を求めるのは常道じゃ。ジークよ、聞くのもよいが、見渡して得られる情報もある。例えばこの道は人の作ったものではない。小柄なゴブリンの作ったものゆえ、我らが通るには不便なこともある。罠もあり得る。よくよく注意せい」

「わかったヨゥ」


 ははーん、状況から察しろという教育だったのか。


「ゴブリンは基本臆病な魔物じゃ。好き好んで人と敵対することはないが、負けない戦いと見るや、その後のやり口は残忍極まる。数で押し包まれると危険じゃな」

「ヒットアンドアウェイがいいってことか?」

「やつらの哨戒者と遭遇戦になることは多い」


 なるほど。

 マウ爺はどうやらジーク君とレノアに与える情報を絞ってる。

 自分で見極めろってことみたい。

 ダンが言う。


「おい、あんた何考えてるんだ?」

「危険じゃなくて面白くするにはどうしたらいいかなーって」


 あ、マウ爺笑ってる。

 やっぱ面白志向でいいんだな?

 れっつ、えんたーていんめんとたーいむ!


「では出発じゃ」

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