第906話:おっぱいさん家
フイィィーンシュパパパッ。
ギルドへ来た。
「いらっしゃい、チャーミングなユーラシアさん」
「こんにちはー、ポロックさん」
「この時間に一人で来るのは珍しいね?」
うん、夕御飯食べる時は皆で来るからね。
「急いで換金かな?」
「いや、今日これからカトマスのおっぱいさん家行くんだ」
「なるほど……要するにペコロス君の助っ人で?」
「ポロックさんは見通すなー」
アハハと笑い合う。
オニオンさんがおっぱいさん家にお邪魔するとゆーので、助っ人として来てくれってことだったのだ。
あたしが行こうが行こまいが、オニオンさんとおっぱいさんはうまくいくのだが、面白いイベントになるかもしれないから。
エンターテインメントに導かれてしまう美少女なあたし。
ギルド内部へ。
「サクラさん、こんにちはー」
「ユーラシアさん、今日はよろしくお願いしますね」
「面白くすればいいんだね?」
「はい」
おっぱいさんニッコリ。
「五時になりましたね」
業務終了か。
おっぱいさんが荷物をまとめ始める。
「あ、オニオンさん来た!」
「ユーラシアさん、お手柔らかに」
「何を柔らかくするんだ」
笑い。
いや、オニオンさん緊張で硬くなってるみたいだけど、これは全然問題ないやつだぞ?
何よりあたしがいるのだ。
どーんと大船に乗った気でいてください。
フレンドで転移の玉を起動し、カトマスのおっぱいさん家へ。
◇
「ただいま」
「こんばんはー」
「お邪魔いたします」
おっぱいさん家に着いた。
マルーさん家から割と近いところだ。
おっぱいさん一家が皆で出迎えてくれる。
「いらっしゃい、精霊使いさん、ペコロスさん」
「これつまらないものですが」
「あたしからもお土産でーす。つまらなくないものです」
「ありがとうございます!」
コブタ肉を渡す。
弟さんはあたしと同い年かちょっと上くらいだろうか?
おっぱいさんの弟だけあって知的な感じ。
目輝いてるやん。
やはりお肉は贈答品ランキング一位だな。
「どうぞこちらへ」
「お邪魔しまーす」
家の中へ案内される。
あっ、御飯だ!
「召し上がって下さいな」
「いただきまーす!」
「精霊使いさんには一度お会いしたかったんですよ。あの『強欲魔女』をやりこめた少女ということで、カトマスで有名なのです」
「ええ? マルーのばっちゃんはどうでもいいから、可憐で可愛いって広めといてよ」
アハハと笑い合う。
優しそうな家族だ。
おっぱいさんは御両親のいいとこ取りしたんだな。
パーツパーツは似ている。
弟さんが言う。
「魔女はひどいでしょう? ぼったくりだし」
「うーん、マルーのばっちゃんがお金ラブなのは事実だけど、鑑定の料金に関してはぼったくってるとまでは言えないかな」
「そうですか?」
あれ、皆さん興味ありげですね?
大したこっちゃないんだが。
「帝国では貴族の子弟くらいしか鑑定しないんだって。だから鑑定料金もすごく高いの。近衛兵長みたいな偉い人が自分の固有能力把握してないくらい」
「ほう?」
「間違いのない確実な鑑定士で、しかも魔道の装置じゃ把握できないような固有能力の発現条件までわかるんだったら、料金分の価値はあると思うなあ。成人になったら必ず鑑定してもらうっていう、カトマスのやり方に合ってるかどうかは別だけど」
固有能力って、自分でどんなやつ持ってるかで人生変わっちゃうことがある。
カトマスのやり方は個人的にはすごくいいと思う。
「弟さんは何かの固有能力持ちみたいだね?」
「僕は『猫柳』の固有能力持ちだと言われました」
インウェンと同じやつか。
「大したものじゃないから、役に立てようと考えるのはやめときな、と」
「ばっちゃんも言葉足んないんだよな。回避率が高いって特長は冒険者や兵士だとバカにならないけど、弟さんは頭脳タイプだねって意味だよ。まーばっちゃんは嫌味言うけど、裏はないから」
おっぱいさんが嫌そうに言う。
「『『巨乳』以外の固有能力を発現させたかったら金を払いな』なんて、失礼な……」
「サクラさんのことも認めてると思うよ。画集のこと話したら、乳娘がモデルになる画集なら売れるに違いないねいって笑ってたし」
「本当ですか?」
「本当だよ」
どーもマルーさんは業突く張りと憎まれ口で誤解されてる気がする。
しかも誤解を解いたって銭にならんとか思ってそう。
「いや、何であたしがばっちゃんの弁護しなきゃいけないのかな? 今日の主役はオニオンさんじゃなかったの?」
「ハハハ。精霊使いさんから見て、ペコロス君はいかがですかな?」
パパさんが聞いてくる。
えっ? ここはオニオンさんとの会話になるパターンなんじゃないの?
あたしが質問されるのは予想外なんだが。
おっぱいさんとオニオンさんがこっちを見てくる。
オニオンさんをパパさんに認めさせろって?
了解。
「オニオンさんはあたしにとってお兄ちゃんみたいな人だよ」
「お兄ちゃんですか?」
意外ですか?
「広範な知識と的確なアドバイス。そっと背中を押してくれる優しさ。頼りになるお兄ちゃんだねえ」
「……」
ふーむ、どうやらオニオンさんにガッカリしてるっぽい。
あたしと身長変わらない小男だし、一見女の人みたいにも見えるしな?
オニオンさんはいい人なのになあ。
「魔境という難しい環境で、ホワっとしたオニオンさんの存在は癒しだよ」
「ふむ」
「あたしがばっちゃんをやりこめたと評価されている原因の、魔宝玉クエストってやつがあったんだ。オニオンさんの博識あってこその成果だったねえ。やはり魔境は難しいから」
「ほう、なるほど」
オニオンさんに興味が向いてきたようだ。
畳みかけろ。
「今、在ドーラ新大使として帝国の第四皇子が赴任してるんだ。このプリンスが次期皇帝のダークホースで、しかもドーラにとって都合のいい人物でさ。偉くなってくれるとドーラは嬉しいから、その身辺に迫る危険についてオニオンさんに調べてもらった」
「ふむ、かなり重要な役割ですな」
「何だかんだでギルドの職員さんの内、一番あたしが話しているのはオニオンさんのような気がするなあ」
「ペコロス君が精霊使いさんのお眼鏡にかなう、有能な人物であることはわかりました。娘とはどうですか?」
「相性ピッタリですねえ」
この話題になってから誰も口出しして来ない。
どうやら決定権はパパさんにあるらしい。




