第400話:本日開店!
――――――――――八三日目。
次の日の朝、うちの子達の前で話をする。
「じゃ、今日は自由行動でよろしく」
「「「了解!」」」
青の民族長セレシアさんの店がオープンの日なので、顔を出してくるのだ。
間違えた、あたしの可憐な顔を出してくるのだ。
現場が人の多いレイノスなので、うちの子達は置いていく。
たまには自由行動の日があってもいいよね。
「ユー様は、様子だけ見て帰ってくる予定なんですよね?」
「予定は未定だね。予定通りになる気がしない」
「「「あー」」」
うむ、うちの子達もあたしの主人公体質を理解している。
「ボスはトラブルメーカーだからね?」
「トラブルメーカーちゃうわ」
ダンテは何を言っているのだ。
主人公体質と言っとろーが。
トラブルメーカーではニュアンスが違うわ。
「あっしは『マジックボム』の実験がしたいでやすね」
『マジックボム』を爆発させずにそのままにしておくとどうなるか、以前疑問に思ったことがあったのだ。
結果によっては面白い使い方ができるかもしれない。
「よし、アトム偉い。よく覚えてたねえ。危なくないところでやるんだよ」
「へい!」
「ミーは『サンダーボルト』で魚取りがしたいね」
「もう水が結構冷たくなってるぞ? そーだ、クララ。浮いてきた魚は『フライ』で回収してくれる?」
「はい」
「ぷくーっと丸く膨れる魚は毒だから逃がしてやってね」
この知識は誰から教わったものだったっけ?
コモさんかな?
いや、コモさんじゃなかったような。
記憶がおぼろげだ。
「じゃ、あたし行ってくる!」
レイノスのイシュトバーンさん家へ。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「精霊使い殿、おはようございます」
イシュトバーンさん家の警備員だ。
ここの警備員はキビキビしてるなあ。
どこぞの魚人衛兵とえらい違いだ。
「おっはようございまーす。今日、カラーズ青の民のショップが開店するってことで来たんだけど」
「先ほど、商人ヨハン・フィルフョー殿から先触れが届いています。まもなく到着とのことでしたが……」
ヨハンさんが気を使ってくれてるのか。
ありがたいなあ。
来たかな?
門の外が騒がしい。
「ユーラシアさん!」
「……大勢だね?」
ラルフ君パパとラルフ君パーティー、セレシアさんとスタッフ、青の民輸送隊員、あと何故かアレクとケスがついて来ている。
とりあえず屋敷へ。
イシュトバーンさんが顔を出す。
「よう精霊使い、ヨハン。やけに賑やかじゃねえか」
「そうだねえ」
「別嬪さんよ。注文に見事答えてくれたな。なかなかイカす服だったぜ。そっちはスタッフだな?」
「はい、よろしくお願いします」
「でだ」
アレクとケスをじろりと睨むイシュトバーンさん。
「こっちの小僧二人は何だ?」
「何って言われても困るんだけど、輸送隊員として採用した子達なんだ」
「子供だろう?」
「二人とも一三歳だよ」
どーして他の輸送隊員と離れてイシュトバーンさん家まで来たのかはわからない。
開店の様子を確認しにきたのであろう、青の民輸送隊員が一人で帰ることになると危ないからかな?
すでにレベル上げの終わっているアレクがいれば何とかなるだろうから。
「小さいほうアレクはあたしの弟分だよ。灰の民で一番賢い子」
「ほう?」
「大きいほうケスは、あたしを落とし穴に落とそうとした白の民の子」
「あんたを? ハハハ、ドラゴン狩るより難しいだろ!」
イシュトバーンさんは二人に興味を持ったようだ。
「落とし穴の出来が良かったから輸送隊に誘ったんだよ」
「輸送隊というのは、カラーズ~レイノス間のだな?」
ラルフ君パパが答える。
「はい。今後はカラーズの輸送隊に委託しようと思いまして」
「おう、いいじゃねえか。で、二人はレイノスは初めてなんだろう?」
「「はい」」
「じゃあ、本屋に行ってこい」
「「はい?」」
何だろう?
アレクは元々本屋に行く予定だったろうが。
「配達員が使うためのレイノスの地図を売ってる。一部三〇ゴールドだ。買っとくと色々捗るぜ?」
「地図一五部買って輸送隊全員に配って。一部はあたしの分ね」
そーゆー便利なもんがあるとは。
レイノスのどこに何の店があるか把握するのにピッタリじゃないか。
アレクに五〇〇ゴールド渡す。
「買えたらその地図とにらめっこして、オレ達がこれから行く場所に来い。レイノスで服屋やるのに一番適した場所だ。わかったな?」
「「はい!」」
アレクとケスが駆け出していく。
地図から服屋の場所を見当つけさせるのか。
うんうん、勉強になるねえ。
イシュトバーンさんはやるなあ。
「じゃあ行くか」
「ちょっと待って。セレシアさん、商品何がある? 女の子の服だけ?」
「いえ、小物もメンズもありますけれど」
ふーん。
イシュトバーンさんのお付きの女性に言う。
「例の服、持ってきといてくれる? 使うかもしれない」
「「はい」」
準備は以上かな。
「イシュトバーンさん。一応護衛の人、連れてく?」
「ん……?」
考えてるね?
「念のため泳げるやつ一人ついて来てくれ!」
◇
イシュトバーンさん家を出発、皆でゾロゾロと空き店のところへ行く。
イシュトバーンさんはいつもと同じように、あたしに抱っこされている。
「で、さっきの出来のいい落とし穴って何だ?」
「気になっちゃう? 上から見てほとんど痕跡がないんだけどさ。イシュトバーンさんが白の民の悪ガキだったら、落とし穴の中に何を仕掛ける?」
「白の民だな? じゃあウシの糞とウマの糞とヒツジの糞のミックスだ」
「さすがイシュトバーンさんだね。ケスはウシの糞とウマの糞とヤギの糞のミックスだったんだよ」
「おお、見所あるじゃねえか」
「でしょ?」
明らかに話の内容を聞いているお付きの女性達やラルフ君パーティーが、すげー疑問符の嵐になってる顔付きだ。
ほぼ気配を感じさせない、ふっと意識が外れそうになるポジションに落とし穴を掘るということもいい。
三重に家畜の糞を敷いてクッションにしておくことも心憎い。
クオリティが高いというのはそーゆーことだ。
「精霊使いは落とし穴なんかに引っかかったりはしないだろ?」
「そりゃまあ。でも白の民の族長は、ケスの落とし穴は百発百中だって言ってたよ」
「ほう、ますます見所あるな」
「あたしもこれはスカウトするしかないなーって」
イシュトバーンさんが頷く。




