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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第397話:『アトラスの冒険者』のメリット

「家に通してくれてありがとう。精霊連れはちょっと目立っちゃうんだよね」

「いえいえ、こちらこそ気が利きませんで」


 エルマのお母さんと小さな弟がいたが、二人で買い物に出かけ、家を空けてくれたのだ。

 いや、目立ったってべつに構やしない。

 でも緑の民の事情があんまりわからないからな?

 あたしがカラーズ交易推進派(実際その通り)として見られているかもしれない。

 緑の民は交易に消極的だから、あたしが姿を見せていることでエルマの家が色眼鏡で見られるとよろしくない、とゆー配慮。


「パウルさんは、エルマが冒険者になりたいと言った日のことを覚えているかな?」

「はい、五日前です。何をとち狂ったことを言い出すんだ、転んで頭でも打ったのかと本気で心配しました」

「だろーなー」


 愛されてるじゃないか。

 エルマの耳が少し赤くなっている。


「キーワードが二つあるんだ。『固有能力』と『アトラスの冒険者』」

「『アトラスの冒険者』……」

「冒険者って胡散臭いじゃん? 根無し草だし定職についてないしチンピラの親戚みたいなものだし。特にカラーズではあんまりなり手がいないし」

「え、ええ」

「『アトラスの冒険者』とゆーのは、典型的な冒険者の欠点を改良したようなシステムだと思ってもらえばいいよ。本部からクエストという名の一種の依頼が配給され、それをこなしていくことによって経験値とお金が得られるという。で、『アトラスの冒険者』のメンバーのホームには、クエスト先までの転送魔法陣が形成されるんだ」

「あっ、庭の魔法陣はそういうことですか」


 『アトラスの冒険者』の転送魔法陣は、不思議と興味本位で中に入る人いないな?

 何か魔道的な仕掛けでもあるんだろうか?

 いや、ダンテはあえてどこぞの転送魔法陣に踏み込んで、ギルドまで来たんだったか。


「家から通いで冒険者活動をすることができるというメリットがあるんだよ。だから兼業も容易で」

「なるほど……」

「あたしも兼業なんだ。自給自足を目指して灰の民の村から外に出たんだけど、勝手に『アトラスの冒険者』にされて」

「エルマはどういった経緯で『アトラスの冒険者』になったのでしょうか?」

「『アトラスの冒険者』はなろうと思ってなれるもんじゃなくて、勝手に選ばれるんだ。本部の選定基準は詳しく知らないけど、道徳心があって『固有能力』を持つ者だってよ。成人になりたての若い人が多いみたい。パウルさん、固有能力は知ってるかな?」

「く、詳しくは……」

「生まれつき魔法を使えたりとか、アイテムの真贋がわかる人とかがたまにいるでしょ? ああいうやつだよ。他にはキズが治りやすいとかやたら運がいいとか、様々なものがあるんだ。数人に一人の割合で持っていると言われるんだけど、固有能力が発現していても自分で気付かないことは多いみたい」

「エルマも固有能力を持っているということですか?」

「うん。『大器晩成』っていう、極めてレアで強力な固有能力を持ってる。でもレベル一の内は固有能力を持たない人と何の違いもないから、気付かないと思う」


 エルマは『大器晩成』に加えて『マジックポイント自動回復二%』も持っている。

 冒険者からすると自動回復も嬉しい能力だけど。

 パウルさんが黙り込む。


「……いや、しかしいくら強力な能力を持っていたとしても、娘に危ないことはさせられない……」

「お父さま……」

「あたしも同じこと思って、エルマに冒険者は諦めろ、代わりにちょっと可能性を大きくしてやろうって言ったんだ」

「可能性を?」

「初めて会った時、まーパウルさんが思ってた通りのエルマでさ。到底魔物と戦うなんてできそうになかった。『大器晩成』がまたクセのある固有能力でさ。強力なスキルをレベルアップとともに次々と覚えていく反面、肝心なレベルアップ自体が遅いとゆー大きなデメリットがあるんだ」

「ということは、冒険者活動でレベルを上げようとすると最初がすごくキツいと?」


 お、パウルさん理解してるね。


「うん。筋力がないから武器に振り回されてしまう。レベルアップが遅いからなかなか強くもなれない。頼りにならない一三歳の女の子とパーティーを組んで行動しようなんて物好きはいない。ハッキリ言って詰んでたな」

「確かに……」

「でも『アトラスの冒険者』の転送魔法陣は面白いでしょ?」

「えっ?」

「クエストをこなせば、手持ちの転送魔法陣は増えていくんだ。つまりいろんなところへ行けるようになるの。多くの人と出会い、多くの物事を知ることができる。人生の可能性が広がるでしょ?」

「ふむ。しかしエルマの場合、肝心のレベル上げが難しいのでしょう?」

「難しい。エルマを放置しといたんじゃクエストを完了できないんで、ちょっと手を貸してレベル上げしたんだ。これがエルマが逞しくなった理由だよ」

「納得しました。ユーラシアさんには娘がお手数をかけてしまったようで、すいませんでした」


 パウルさんが深々と頭を下げる。

 あたしの興味もあったからいいのだ。


「ちょっと見てもらえるかな?」


 『アンリミテッド』のカードを起動する。


「これは?」

「パワーカードという特殊な装備品だよ。エルマは普通の武器・防具は重くて使えないので、これを勧めたんだ。偶然だけどあとでエルマの転送先にパワーカードの製作工房が出て、構造や理論に興味を持って職人になりたいと」

「ああ、だから職人と言い出したのですか。ようやく理解できました」


 当面冒険者とパワーカード職人の二刀流でいいんじゃないかな?


「あと一つ、魔宝玉の出所がわからないのですが」

「ごめんなさい、それはあたしなの。『アトラスの冒険者』の集まるドリフターズギルドというものがあって、たくさんの知識や情報が得られるんだ。エルマは工房の師匠に、ギルドにはなるべく馴染んでおけと言われてた。で、他の冒険者達と歓談してるところへたまたまあたしが出くわして、その冒険者達と一緒に一稼ぎ探索に行って。あの魔宝玉は人形系と呼ばれる一群の魔物のドロップ品で、エルマにも正当な分け前を渡したんだ」


 あえて魔境とは言わないけれども。


「では怪しい出所じゃないんですね? 安心しました」


 ホッとするパウルさん。

 こっちこそごめんよ。

 全然考えが至らなかったよ。

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