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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第395話:効率

 ――――――――――八二日目。


「カカシー、これもう株分けしなくていいんだよね?」

「おう、全部凄草に置き換えるから、今までのやつは食べちゃってくれ」


 本来なら今日は、ステータスアップ薬草の株分け日のはずだった。

 しかし今後凄草に場を明け渡すために用済みとなる。

 今まで地味にあたし達の強化に役立ってくれた存在ではあるが……。


「サラダで食べられるほどおいしくないんだよね」

「身も蓋もねえ!」

「味も重要だぞ? しかし旧型ステータスアップ薬草は凄草に何一つ敵わないのだ」

「旧型なのかよ!」


 カカシが苦笑している、多分。

 依り代タイプの精霊であるカカシの表情は、表面上は変わらないけど。


「やっぱりお肉たっぷりの汁物だな」

「おーい、薬草どこ行った?」

「さて、肉狩りだ!」


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「グオングオングオングオングオングオーン!」


 鳴らし甲斐のある素晴らしい音。

 海の王国の銅鑼だ。

 本の世界でコブタマンを狩ってから、海の女王に会いにやって来た。


「肉だなっ!」

「肉だぞっ! 一緒に食べよう!」

「やったわい!」


 女王が転げ出てきたその後に現れる衛兵達。

 うん、実に心配な防衛体制だ。

 台車で調理場へコブタマンを運んでいく。


「約束の藍珠一〇個と透輝珠五個持ってきたよ」

「おお、すまんの」


 魔宝玉を渡し、おゼゼと交換する。


「それからレア素材、『逆鱗』と『巨人樫の幹』ならあるけど」

「『逆鱗』と『巨人樫の幹』か。両方欲しいの」

「同じ値段分の素材と交換して欲しいんだ」

「交換? 同じ値段分の素材と」


 女王が細い目をさらに細める。


「……おんし、妙なことを言うの。何ぞ魂胆があるのかや?」

「魂胆とゆーか……」


 素材とパワーカードの交換ポイントシステムのことを話す。


「ほお? では単価の安い素材が数あるのが有利ということだの?」

「いや、地上では手に入りにくい海底の珍しい素材でもいいんだ。今まで手に入れたことのない素材だと、新しいカードが交換対象になるし」

「なるほど、面白いの!」


 女王が興味を持ったようだ。

 実際パワーカードの交換ポイントシステムはよくできてると思う。

 素材一杯持っていきたくなっちゃうもんなあ。


「この前もらった『大王結石』はよかったよ。すんごいカードになった」

「わらわも鼻が高いの」


 嬉しそうだな。


「で、どうする? 『逆鱗』は一〇枚以上あるけど」

「えっ? 随分たくさんあるのだの。ドラゴンは地上最強の魔物と聞いたが……」

「最強クラスではあるかな。ドラゴン倒せる人は『ドラゴンスレイヤー』って称号もらえるの。大変な名誉らしいんだけど、今んとこ特にいいことない」

「ほう、おんしは強いのだの」


 女王は頷く。

 強いとゆーか、考え方の問題かな。

 大体レベルが解決することを学んだだけだよ。


「したが困ったの。急には準備ができぬゆえ、『逆鱗』一枚だけもらおうかの。引き換えとなるコモンの素材を用意させよう」

「じゃあ先に『逆鱗』一枚渡しとくね」

「うむ。食後までにはこちらも集められるぞよ」

「あ、御飯もう来たかな?」


 給仕人達がお肉を運んでくる。

 お肉から立ち昇る湯気は好きだなあ。


「おお、待ちかねたぞ!」


 皆が席に着く。


「大地と大洋の恵みに感謝し、いただきます!」


 フルコンブ塩フリフリ。

 これ絶対美味いやつ。


「炙り肉はおいしいねえ。今のところコブタは、炙り肉&フルコンブ塩のコンボが最高だと思うよ」

「そうであろう?」


 女王すこぶる上機嫌だ。

 美味さのあまり床をのたうち回っている。

 テカテカになってますよ。

 一度タレつけて食べるのも経験させてあげたいけど、今黒の民のラボは酢に全力だしな。

 醤油はどうなんだろ?


「地上も魚食が根付きつつあるんだよ。まだフライだけだけどね」

「おんしには頭が下がるの」


 魚を地上に売り込むことに関しては、フェスのおかげでスタートダッシュは大成功だ。

 今は定番にすることが重要だ。

 近い内に焼き魚も仕掛けたいが、急いでも仕方がない。


「ところで『逆鱗』は何に使うの?」

「著しい殊勲があったり長年忠義に勤めた武官に、印として勲章を授けたいのじゃ。『逆鱗』を用いるならば火耐性もあり実用的じゃしの」

「なるほど! 格好いいね」


 女王も考えてるんだなあ。


「じゃあ『巨人樫の幹』は?」

「文官も同様に遇したいしの。そちらの勲章に加工しようと思う」


 ふむふむ、とゆーことは?


「いくつくらいずつ必要になるのかな?」

「当面五つずつあれば十分だの」

「わかった。『巨人樫の幹』の数が足りないから狩りに行くよ」

「急がんでもよいぞ? こちらも素材の数を揃えるのに時間かかるでの。一〇日は欲しい」

「りょーかいでーす」


 一番ガツガツ食べてたアトムも腹一杯みたいだな。

 女王がためらいがちに言う。


「……戦争、本当に助力せんでいいのかの?」

「ありがとう。気持ちだけは受け取っとくよ。でもこれは地上の戦いだからいいんだ。お魚売ってくれるだけで大満足だよ。戦争が長引くと、ちょっと発注量が多くなりそうな気配だけど」

「うむ、魚くらいは何でもないことじゃ」


 少し会話が途切れる。


「……なるべく双方の犠牲を少なくしたいんだ」

「双方の、か。おんしは不思議なことを言うの」


 女王がやや表情を崩す。

 これは柔和な優しい顔だ。


「向こうには向こうの事情があるんだろうけど、実際に戦う者同士に恨みなんかないからね。ちゃっちゃと切り上げたいの」

「ふむ、平和主義者だの。いや、平和主義とは違うのか?」


 効率、が近いのだろうか?

 あたしは決して人の命を効率で考えているわけじゃないのだけれど。

 どうもうまい言葉が見つからない。


「ごちそうさま。今日もおいしかったよ」

「うむ、また肉を持ってきてたもれ」

「好きだねえ」

「大好き、大好きじゃ!」


 大笑いする。

 わかってるってば。

 また今度ゴッソリお土産に持ってくるからね。


「あ、素材かな?」


 あれは確か商店街の素材屋さんだ。

 小売りだけじゃなくて、素材は彼が一括で扱っているのかな?


「大体じゃが釣り合う金額だろうとのことじゃ」

「うん、大体でオーケー。じゃ、もらっていくね」

「帰るのか?」


 女王が寂しそうな顔になる。

 エルもなんだけど、あたしの周りにいる人は寂しんぼが多いのかなあ。


「また来るって。じゃあね」


 転移の玉を起動し、帰宅する。

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