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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第393話:滑らない話炸裂

「エルマはパワーカードの工房に出入りしてるの」

「嬢の勧めか?」


 偶然の要素が大きいような。


「テストモンスターと試闘してた時、ショートソードに振り回されてたんだよね。軽いパワーカードの使用を勧めたのはあたしだけど。たまたま工房行きの転送魔法陣が出て、仕組みが面白いと興味持ったみたいで」


 マウ爺が顎をさする。


「いいのではないか? 未成年では親御殿も心配であろうし、冒険者よりも工房に勤めるのがずっとまともであろう。何より嬢の行う魔境レベリングなど、常人には理解できぬであろうし」


 全員が頷く。

 やはり専業冒険者は厳しい。

 あたしだって兼業だしな。

 何か他に拠りどころはあるべきだと思う。


「最近思うんだけど、固有能力って偏るのかな?」

「ん、どういうことだ?」

「黄の民は明らかに肉体系の能力だし、赤の民は火魔法使い多い気がするんだよね」


 これはよく知っている人の意見を聞きたかったことだ。

 マウ爺が言う。


「ワシも感じたことはあるな。親子で同じ固有能力持ちになることはかなり多い。血縁でそうなるのか、育った環境で発現する能力が決まるのかはわからんが」

「あんたはどうなんだよ。両親とか」

「亡くなった母ちゃんは普通の灰の民だったよ。父ちゃんは旅人だって聞いたけど、記憶にないからわかんないな」

「きっと父ちゃんがとんでもないやつなんだぜ? ユーラシア基準の『普通』も当てにならねえ」

「うむ、普通の両親からユーラシアが生まれるはずがない」


 何だそれ?

 ひどいことを言うなあ。


「あんたらはあたしの扱いがぞんざい過ぎる」

「正当な評価だぜ?」

「もーあたしのいない世界なんて、刺激が足りなくて考えられないクセに」

「かもしれんが、自分で言うところがユーラシアだな」


 皆で笑う。

 あ、ヴィルが来た。

 よしよし。


「……固有能力と言えば、精霊使いの少女が西の果てにいるという話を聞いたな。ユーラシアのことを言ってるのかと思ったが、どうも違うようだ」

「ああ、エルのことだね?」

「何、知ってるのか?」

「どういうことだよ。面白えネタを隠すなよ」

「隠しているわけではないとゆーのに」


 マウ爺も聞きたそうだし。


「西域の街道の終点に塔の村ができたじゃん?」

「例の『永久鉱山』のところだな?」

「そうそう。うちのじっちゃん、灰の民の元族長デス爺ね? が塔の村を開いたんだ」

「デス殿が関係してるのか?」

「じっちゃんは、塔の村の近くに精霊と共存する今の灰の民の村みたいのを作りたいんだって。塔の村が大きくなった時に農作物を供給したいという意向があってさ」


 マウ爺が疑問を呈する。


「精霊と共存する必要性がわからん」

「じっちゃんは今のカラーズ制度はいずれ崩壊すると見てるの。ドーラが発展した時に人口を支えられるのは、アルハーン平原しかないからだって。となると精霊の行き場がなくなっちゃうから、西へ連れていこうという構想なんだよ」

「ほう、デス殿らしい。スケールの大きな構想じゃの」


 マウ爺が感心する。


「で、向こうでの精霊の認知度とか地位を上げるために、精霊使いを連れてきて塔の村の冒険者のエースに据えたの。元々『精霊使い』の固有能力持ちに心当たりがあったのか、偶然見つけたのかは知らないけど」


 ま、この辺は曖昧にしとく。


「おかしいじゃねえか。何でユーラシアをエースにしなかったんだ?」

「あたしは言うこと聞かないからだって」

「「「なるほど」」」


 全力で納得するなよ。

 こっちへ来たヴィルをぎゅっとする。


「その塔の村の精霊使いはどんな人となりじゃな?」

「年齢はあたしと同じくらいで、やはり精霊を三人連れて冒険者やってる。真面目であたしより少し背は低いかな。人形みたいに可愛い顔をしていてボクっ娘で、おっぱいがないの」


 ダンが苦笑する。


「最後の情報いるか?」

「エルを理解するには必要不可欠の情報なんだよ」


 一様に頷くうちの子達を見たダンが説明を求める。


「どうやら爆笑ポイントだな?」

「カンがいいね。エルはおっぱいないことをすごく気にしていて、自分よりおっぱいがある女性を目の敵にするんだ。あたしも初めて会ったとき敵扱いされたから、おっぱいの大きさだけで敵味方決めると、人類の半分が敵になるからやめときって言ったった」

「あんたの追及が少々のところで収まるはずはねえ。続きがあるんだろ?」

「実に鋭いね」


 その通りなんですけれども。


「エルは言動がファンキーな精霊を連れてるんだ。コケシって名前でうちのクララと仲良しなんだけど、性格は真逆でサディスティックなの。あたしとコケシが喋ってるとどんどんエルの精神が削られるって現象が発生する」

「ははあ、その場面が目に浮かぶようだぜ」

「で、エルの精神がささくれた時は、同じぺたんこのヴィルがぎゅーしてあげる。エルが『ああ、君は天使!』って喜んでたけど、ヴィルは『悪魔ぬよ?』って不満がってた」


 滑らない話炸裂で爆笑。

 ヴィルが大変嬉しそう。

 ここから内緒話モード発動。


「塔の村では、デス爺とエルをはじめとする数人の冒険者だけが、帝国との間に戦争が起きることを知ってるんだ」

「どこまで知ってるんだ? 半端だと裏をかかれるかもしれんぞ?」

「あたしの知ってることは大体話してある。これからも情報が増え次第伝えておくつもり」

「だったらまあ……」


 納得するピンクマン。


「向こうの冒険者はパワーレベリングしてるわけじゃないから、全体的にそうレベル高いわけじゃないんだけど……」

「む、戦略的に重要な地点ではないじゃろ?」


 頷く。

 レイノスの食料事情に関係がなく、戦力の冒険者が固まってるところ。

 普通に考えれば帝国軍潜入部隊の標的となることは考えづらい。

 ただ塔の村には皇女リリーがいる。

 帝国がその情報を掴み、かつリリーを保護しようと動いた時には塔の村が狙われるかもしれない。


「ぶっちゃけ落とされたところで街道の端っこなんで、どうってことはないな。しかもデス爺の転移術があれば物流も止まらない」

「すげえな、転移術」

「帝国が長期戦を企図していれば確保する意味もあるが……」


 うん、ドーラが刃向かったわけじゃない、ムリ筋の戦争だ。

 他の植民地の存在や国内の反対派もあるだろうから、初めから長期戦狙いってのはちょっと考えられない。

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