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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第390話:ピンクマン式スクランブルエッグ

 ダンとこっそり話す。


「……あの二人、いい雰囲気じゃねえか?」

「あたしの高性能センサーにラブい気配は感じられないけど」

「時間の経過とともにどうにでもなるだろ。あんたと俺の関係のように」

「ダンとあたしの関係が何だって言うんだ。単なるオチ担当が信頼できるオチ担当に変わっただけでしょうに」

「俺が信頼できるって? 大きな変化じゃねえか」

「『信頼できる』は『オチ』に係る修飾語だぞ?」


 こっちがくだらない掛け合いしてる間にも、エルマとピンクマンは話が弾んでいるようだ。

 どゆこと?

 いや、共通の話題があるのはわかってるけど。

 パワーカードに関するマニアックな興味とか、ともにカラーズ出身であるとか。


「……おかしいな? こんなはずじゃなかったんだけど。あたしはカクカク歩くピンクマンを見たかった」

「カールがロリとまともに喋ってるの初めて見たぞ?」

「サフランに悪いことしちゃったかな」

「あの黒ドレスの子か。でもカールはあの子とも普通に喋れるんだろ?」

「うんまあ。あれ? ということは状況がより面白くなっただけか」

「退屈しないぜ」


 結論、放置。


「おい、ドラゴンがおいでなすったぜ」

「レッドドラゴンだね。やつは『カースドウインド』っていう、こっち全員の能力値を一時的に下げる嫌らしいスキルを使ってくるんだ。ただのドラゴンだからって舐めちゃダメだよ」

「ドラゴン舐めてるのはユーラシアだけだ」


 だから舐めてなんかいないとゆーのに。

 ただ『逆鱗』一枚しか実入りのないノーマルドラゴンを相手にするのは、テンションが上がらないってだけだ。

 まあ雑魚は往ねなんですけれども。


「はい、エルマに『逆鱗』あげるから、研究に使いなさい」

「ありがとうございます、お姉さま!」

「……お姉さまってのは何なんだよ?」

「そこ突っ込むのは勘弁してよ。あたしも妹ができたみたいでこそばゆいんだ」

「あんたの妹にしては可愛いな」

「あっ、ピンクマンが言うならわかるけどダンが言うとは!」


 いつもあたしのことを可愛いって言ってくれるじゃないか。

 いつもではなかったか?


「そういう意味じゃねえ。カテゴリーが違う」

「わかる」


 何故かピンクマンも頷いている。

 何なん?

 あんたらの『可愛い』には、複雑なカテゴリー分けがあるのかよ?


「着いたぞー。魔境北辺西側にあるパーラダーイス!」

「ふわー。人形系レア魔物がたくさんですねえ!」


 エルマが興奮して眺めている。


「いいでしょ? ここ見つけた時は、エルドラドは本当にあったんだと思ったね」

「人形系を簡単に倒せるのは、あんたんとこのパーティーだけだからな?」

「それ以前にこんな魔境の北の果てまで来られない」

「さて、稼いでいくよー」


          ◇


 お昼の食事タイムだ。

 岩上の見通しのよいところでピンクマンが火を起こす。


「卵の上部を切り取って塩を投入する」

「ふむふむ」

「火にかけながらかき混ぜる。以上だ」

「殻ごと火にかけるんだ?」

「うむ、これなら鍋は必要ないだろう? 適当にトロトロになったらスクランブルエッグのでき上がりだ」

「なるほどー。殻を調理器具代わりに使うのか。家でも使えるな、この方法。教えてくれてありがとう!」


 家から持ってきたふかしイモと茹で肉を取り出す。


「いただきまーす」

「おお、オツなもんだな」

「おいしいです!」


 ふー、卵の量が多くてお腹一杯になってしまった。

 ピンクマンが周りを見渡している。


「こんなに人形系ばかり出現するエリアがあるとはな。驚きだ」

「魔境に来る人って、用があるのはせいぜいドラゴンまでっぽいんだよね。北辺はあまり情報なかったって、オニオンさんが言ってた」

「レジャー感覚で魔境探索しまくってるのはあんたしかいねえ」

「お姉さますごいです!」


 いやまあ、もっと褒め称えたまえ。


「……これ、奥はどうなってんだ?」


 重なるような岩で囲まれた奥をダンが指差す。

 やっぱ気になっちゃうよねえ。


「奥ほど強い人形系レアがいるよ」

「一番奥には?」

「未知の赤い人形系レアが一体だけいた。倒しちゃったから、またいるかはわかんないな」

「「ほう?」」


 ダンとピンクマンが興味深げな反応だけど。

 赤の女王(仮称)を倒しにいくのはさすがにムリだぞ?


「いや、その人形系を倒せたのたまたまなんだよ。岩で囲まれたとこだったから、そいつ逃げようとしたけど逃げられなかったの」

「すげえのドロップしたんだろ?」

「すげえ魔宝玉をドロップしたよ。でも世界にそれ一個しかないだろうって話だったから、今イシュトバーンさん家に飾ってある。値段つかないやつはクエストの対象になりそうにないじゃん?」


 相場の五割増しで引き取るって話だもんな。

 今まで存在が知られていたやつは何とか査定価格を算出できるかもしれないけど、知られてなかった魔宝玉に相場があるわけない。

 エルマが聞いてくる。


「あのう、クエストというのは?」

「エルマは知らなかったか」

「ユーラシアは、黄金皇珠以上の高級魔宝玉を可能な限り持ってこいという依頼を請けているのだ。ギルドへもう一七〇個以上納品していると、かなり話題になっている」

「ほへー。今日だけでもいくつかドロップありましたね?」

「ごめん、クエストで必要だから高級魔宝玉はもらうね。それ以外の魔宝玉は三人で分けていいから」

「普及品クラスのがうんと多いじゃねえか。今日は手加減して弱めの人形系レアを相手にしてくれてるんだろ?」

「魔境ツアー添乗員としては、ゲストをもてなさないといけないもん」

「ハハッ、サービスがいいな」


 ダンが笑う。


「もうあの奥には行かねえのか?」

「すごく危ないんだよ。一番奥行くまでに、『メドローア』っていう強力な魔法を連発してくるウィッカーマンが山ほど出る。あれ一体ずつなら倒せるけど、二体一度に現れると自信ないな」


 ピンクマンが頷く。


「ウィッカーマンを唯一倒せるユーラシアのパーティーが危ないと言うなら不可能だ。あの奥を調査したいなら、『隠密』か何かの固有能力を持つ者でなければならないだろう」


 『隠密』とは気配を気取られにくく、魔物の襲撃を受けにくい固有能力だという。  

 存在感を薄くするという面では、うちのダンテの持つ『陽炎』にちょっとタイプが似てる。

 なるほど、『隠密』持ちなら奥まで調べられるだろうな。

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