第388話:ノリで行動が決まる冒険者
――――――――――八一日目。
フイィィーンシュパパパッ。
朝からギルドへ来た。
主な目的は買い取り屋さんで不用品の処分だが、予期せぬエンターテインメントが飛び込んでくるならそれもまたやぶさかではない。
とゆーか飛び込んでこい。
「ユーラシアさん!」
「おっ? おおう」
いきなりの大声でビックリした。
角帽を被った大柄の男、ギルド総合受付のポロックさんだ。
「どうしたの、ポロックさん。娘さんはあれから大丈夫かな?」
「もうすっかり元気なんだ。あれから義父が凄草を一株取ってきて食べさせてね。かなり動けるようになったんですよ。同年代の子と比べて、そう見劣りしないくらいにはなったんです」
嬉々として娘の現況を報告するポロックさん。
すげー嬉しそうだな。
めでたしめでたし。
「シバさんすごいなー。凄草なんて取ってこようとして取れるもんじゃないのに。どーなってんだろ?」
「ユーラシアさんには何とお礼を言ってよいか」
「何ってそりゃあ、『チャーミングな』っていう重要な修飾語をつけてくれないと」
「はっ、チャーミングなユーラシアさん」
アハハと笑い合う。
いいことしたあとは気分がいいなあ。
「凄草の葉っぱは甘いけど、根っこは甘くないんだよ。イモみたいな感じで。そっちはスープかシチューに入れるとムダがないと思う」
「なるほど、早速試してみますよ。ところでこれをどうぞ」
でっかい袋?
「あっ、素材!」
「義父が集めたレア素材です。精霊使いに進呈すると」
「えっ、こんなにたくさん? 却って悪いんだけど」
滅多に手に入らないレア素材ばかりだぞ?
パワーカード使いのあたしとしてはメッチャ万々歳だけど、凄草一株の代金としては全く釣り合ってないよ?
ポロックさんが首を振る。
「いえ、娘の命には代えられません。心ばかりの品ではありますが、どうか受け取ってください」
「じゃあ遠慮なくもらっとくね。メッチャありがたいわ。シバさんにもよろしく」
「ええ」
ギルド内部へ。
あ、ラッキー、エルマがいる。
ピンクマンとダン、先行させたヴィルと一緒だ。
輸送隊のレベル上げ手伝って欲しいってこと伝えとこ。
換金をすませて食堂へゴー。
「皆、元気? あたしはこの通り元気だよ」
「お姉さま!」
「御主人!」
「おはよう、ユーラシア」
「どうした、頭でも打ったか?」
ヴィルが失礼なことを言うダンに捕まって手足をバタバタさせている。
あれ? でもヴィルも楽しんでるのかな?
嫌がってるわけではなさそう。
「あんまりヴィルに意地悪してると塵にされるぞ?」
「ハハッ、塵は困るな」
ダンの束縛から逃れたヴィルが飛びついてくる。
よしよし、いい子だね。
ぎゅっとしたろ。
しかし何でこの三人が午前中からギルドに?
エルマは工房、ピンクマンは売り子、ダンは使用人の訓練やってるべきなんじゃないの?
「珍しい組み合わせだけど、何これ? どうしたの?」
とゆーかダンとピンクマンはよくつるんでるからまだわかる。
けど、何でエルマが混ざってるの?
ロリの国の変態紳士がいるよ?
混ざると危険だよ?
「わたしはアルア師匠に、ギルドにもなるべく馴染んでおけと言われまして。時々来ることにしたんです」
「さすがアルアさん。もっともなことだね。特にエルマは年少だから、皆に可愛がってもらうのは大事だと思う」
「酢の販売の主力がレイノスへの出荷になったから、カラーズでの売り子は一旦卒業なのだ。サフランも醸造ラボにかかりっきりになっている」
「増産しても品質安定させなきゃだもんね。サフランはラボで指揮を執るべきか」
「農場の連中は冬越しの準備で大忙しなんだ。まあ戦闘も一応形になったしな」
「……」
ダンとアイコンタクト。
要するにロリ子と変態紳士じゃ会話にならないから、ダンが間に入ってるんだね? わかってるじゃねえか。サクラさんと対極の意味を思い知ってたとこだぜ。あんたも混ざってくれ。りょーかーい。
「こういう時のダンは本当に優秀だねえ」
「ん? 何がだ?」
「いや、こっちのこと」
つい声に出て、ピンクマンに不思議がられてしまった。
「そうだエルマ、四日後くらいになると思うけど、カラーズ輸送隊のレベル上げ手伝ってくれないかな? ピンクマンも一緒なんだ」
「はい、手伝わせていただきます」
「ありがとう。これで一安心だなー」
ダンが笑う。
「またあんたは一ゴールドの得にもならねえことに首突っ込んでるのか」
「あたしが楽しいからいいんだよ。プライスレスだわ」
帝国との戦いになった時の戦闘員をカラーズにも作っとくのか、というダンの意味ありげな表情だ。
まあそう。
あたしにできることはやっとくの。
「ユーラシア、懐具合は大丈夫なのか? 一〇万ゴールド出資してたろう?」
「「一〇万ゴールド?」」
エルマとダンが驚くけど、これはあたしが出すつもりだったから。
「あんたちょっと前まで金がない金がないって言ってたじゃねえか」
「ビンボーだったのは一ヶ月も前の話だわ」
今は人形系を狩りまくってるから、クエストに関係ない魔宝玉も結構得ているのだ。
おゼゼがないわけじゃないわ。
「出資で寂しくはなってるけど、心配されるほどじゃないよ。ダンのほうが厳しいんじゃないの? 結構出て行ってるでしょ?」
「まあな。美少女精霊使い殿が魔境へ散歩に行くなら同行させていただきたいぜ」
「いいよ。今から行こうか」
海の王国でも行こうかと思ってたけど、まあ今日じゃなくてもいいし。
魔宝玉クエストを進めておくのも冒険者としての使命だしな。
「じゃあせっかくだから、エルマもピンクマンも行く?」
「はい、お供させていただきます!」
「では、小生も行こうか」
イベントが入った。
こーゆーノリで行動が決まるのも冒険者らしくていいな。
「ノリで行動が決まるのも冒険者らしくていい、なんて思ってるだろ?」
「力一杯思ってる!」
「お、おう」
ハハッ、ダンを怯ませたったぞ。
あたしも新たな芸風を開拓しないといけないのだ。
「エルマは魔境行きの石板って出てるんだっけ?」
「まだです」
「じゃ、ダンかピンクマンと一緒に来て。ベースキャンプで待ち合わせね。あたしもうちの子達連れていく」
「はい!」「わかったぜ」「了解だ」
「ヴィルは通常任務に戻っててね」
「了解だぬ!」
転移の玉を起動し帰宅する。
楽しくなる予感。




