第386話:能力主義だから
うちの子達とサイナスさん、アレク、赤の民ビルカに加え、白の民のやんちゃ小僧ケスを伴ってカラーズ緩衝地帯へ行く。
輸送隊を束ねる黄の民族長代理フェイさんにケスを会わせるためだ。
いやあ、面白い子が手に入って万々歳だわ。
話をしながらのんびりと歩を進める。
「ケスはさ、何で最初あたしが精霊使いだってわかんなかったの?」
「だってドーラに名を響かせるスーパーヒロインが、そんな軽装だとは思わねえよ」
「スーパーヒロインか、あんたはわかってるねえ」
普通冒険者と言えば、厳しい装備品に身を固めているというイメージがあったか。
ま、うちのパーティーは見かけ手ぶらだからな。
「こういうものがあるんだよ」
『アンリミテッド』を起動する。
「何だこれ、武器?」
「パワーカードっていう装備品だよ。うちのパーティーで採用してるやつ。これは武器タイプだけど、防具タイプのもあるよ」
「すげえ、これが精霊使いの秘密装備か!」
いや、別に秘密じゃないってばよ。
随分とケスの目、キラキラしてるね?
ジンやハオランも同じだったけど、男の子はこういうの好きみたいだなあ。
いや、エルマは女の子だけどパワーカードに入れ込んでるか。
そー考えるとパワーカードはもっと人気装備でもいいと思うのに、あたし達が冒険者になる以前はほとんど使われていなかったという不思議。
「世の中は知らないことが多いでしょ?」
「ああ!」
「村にこもってちゃ知るべくもなかったことを、これから知るようになるんだよ」
アレクもビルカも聞いてるかな?
カラーズにこもってちゃわかんないままでいることは多い。
輸送隊員として外に出る経験は大きいと思うよ。
そしてその経験を他の人達にも教えて分けてあげて欲しいのだ。
「輸送隊は固有能力ってのを持ってるやつが集められてるんだろ? じゃあアレクやビルカもなのか?」
「うん、アレクは魔法を使える。ビルカは人が何の固有能力を持ってるかわかる」
「ふうん……。おいらの能力は地味だな」
ケスも固有能力の差を考える子か。
『オーランファーム』でもあったけど、固有能力に優劣をつけるのは人間の都合なのにな。
もっと言うと、できる子できない子は固有能力の有無なんて関係がない。
アレクが口を挟む。
「いや、輸送隊では必要な能力だと思うよ」
「どういうことだよ?」
あたしが説明する。
「荷運びの最中に盗賊に襲われたとするでしょ? 眠りの魔法かけられて全員寝ちゃいましたじゃ困っちゃうじゃん」
ケスの『自然抵抗』は、沈黙・麻痺・睡眠に耐性がある。
パッシブな能力は確かに地味で効果に気付きにくいけど、意外と重要な気がする。
あたしの固有能力だって『発気術』以外はパッシブだしな。
「姐さんの固有能力は何なんだ?」
「あたしのは『自然抵抗』『精霊使い』『発気術』『ゴールデンラッキー』『閃き』の五つ」
ビルカとうちの子達以外の皆が驚く。
「ユーラシア、君五つも固有能力持ってるのか?」
「最初調べた時三つだったんだけど、不思議なことに増えてくんだよね。理由はよくわかんない」
「まあユー姉は常識で測れないけれども」
「それ褒めてるんだよね?」
「姐さんも『自然抵抗』持ちかあ」
「お揃いだぞ?」
ビルカが言う。
「私も三つ以上の固有能力を持つ人というのは初めてです。魔法系含めて二つ発現している人は見たことありますけど」
「うちの子達は皆三つ以上だけどなあ」
精霊や悪魔は多いみたいだな。
「おーい、フェイさーん!」
お喋りしてる内に緩衝地帯のショップまで戻ってきた。
ケスに黄の民の族長代理だよと説明する。
「白の民の輸送隊員はこの子にした。一三歳のケス。イタズラ小僧だって。沈黙・麻痺・睡眠の三つの状態異常に耐性がある固有能力持ち」
「精霊使いユーラシアが直々に選んできたなら間違いないな。期待しているぞ」
「お、おう」
握手。
フェイさんのデカい手にビビってるようだ。
……もっとデカいの見たらどうなるかな?
面白いから眼帯男にも会わせとこ。
「眼帯君いる?」
「ズシェン、インウェン! 白の民の新しい隊員だ」
「輸送隊の隊長と副隊長だよ」
フェイさんよりもさらにデカい男に唖然とするケス。
「姐さん、新入りですかァい?」
「うん、白の民のケス。よろしくね」
「よ、よろしく」
「眼帯君はね、この身体でパワーがあるのは一目瞭然だけど、さらに攻撃力を増幅させる固有能力持ちなんだ。間違っても逆らっちゃいけないよ?」
コクコク頷くケス。
「いやァ、姐さんには敵いませんわァ」
眼帯男が豪快に笑う。
「ふ、副隊長は女なのか?」
「輸送隊は能力主義だからね」
「すごい固有能力持ちってことか?」
「固有能力なんてのはおまけに過ぎないんだなー。ま、輸送隊は戦闘が絡む場面があり得るから、あえて固有能力持ちを選抜してるんだけどね。使いでのある固有能力を持ってるからって、トータルで使えるわけじゃないじゃん?」
「わからねえ」
「固有能力持ちなんか数人に一人はいるんだ。選べばケスよりもっと輸送隊向きの能力持ちだってそりゃいるよ? あたしがケスを評価してるのは、固有能力が優れてるからじゃない。落とし穴の出来が良かったからだぞ?」
落とし穴? って顔してる黄の民三人にさっきの出来事を話す。
百発百中がホニャララ。
「ほう、面白いな」
「でしょ?」
フェイさんはわかってる。
何が? って顔をする眼帯男とインウェン。
「クオリティの高い仕事ができる、ということだ」
「うん。すっごい重要なことだよ?」
変な持ち上げられ方されてソワソワするケス。
可愛いやつめ。
「明後日には次回の輸送隊が進発する。朝にここへ集まってくれ。ヨハン殿の隊商について行くのはこれが最後になる」
「「「はい!」」」
ケス、ビルカ、アレクの三人が返事をする。
「この三人はインウェンの役割を補佐できるようになると思うよ。教えてやってね」
「そうですか! 嬉しいですね」
今まで脳筋ばっかりで頭脳労働者がいなかったからな。
インウェンにかかる比重が大き過ぎた。
組織において、代わりがいないポジションがあるのはよろしくないのだ。
「隊員達が次レイノスから帰ってきたらレベル上げしてくれるか?」
「りょーかいでーす」
「うむ、頼むぞ」
「じゃ、あたし達帰るね」
「では、またな」
灰の民の村へ。




