第383話:十分儲かったら
「黄の民は、パワーと道中に襲われた際の安全を考えて輸送隊の主力にしています。どっちかというと商才にはあまり期待してません」
とゆーかインウェン以外の脳筋どもは、丸っきり当てにしてない。
輸送隊だけならともかく、商売するのに脳筋だけの価値観を修正するのは時間がかかるだろうな。
しかし輸送隊に他色の民が含まれているならどうなるか?
「だから今日加入した皆さんにはよく観察してきてもらいたいね。あんた達の村で生産できるもので、レイノス市民が欲しがってるのは何か」
「「「はい!」」」
黄の民にない視点で売れるものを発見してくるのがいい。
パワーで黄の民に勝てない他色の民が自分の存在意義を知り、活気付く。
「もう一つ、手ぶらで帰ってくるのはやめよう。行き輸送隊帰り歩くだけじゃ、徒労感ハンパない。帰りも輸送隊であることを自覚してください。レイノスで何か買ってきてカラーズで売れば、その儲けは君達のものだ!」
沸く輸送隊員達。
「好き勝手に買ってきて売れないと損するよ。まず、各村でレイノスで買ってきて欲しいものを調べる。輸送コストとして二割までは見てもいいと思う。レイノスより二割高くても売れるものは何か」
ちょっとは商人らしい目付きになってきたか?
「途中に聖火教の礼拝堂があるでしょ? あそこで御用聞きしてもいいんだよ? 礼拝堂で必要なものをカラーズから売ってもいい。レイノスで買いつけてもいい。輸送費が折り合えば買ってくれるはず」
ほらほら、儲ける手段なんて多いでしょ?
工夫次第だぞ?
「レイノスでの買いつけは、さっきの一〇万ゴールドを使ってもいいよ。輸送にミスなく、レイノスから仕入れた商品が売れれば一〇万ゴールドの原資は増えることになる。つまり輸送と交易は成功で、君達にも分け前が出るんだぞ?」
喜び頷く面々。
戦争が起こることや戦後に移民が増える可能性には触れたくないけど……。
「これからドーラで人口が増えるとすると、多くはこの前掃討戦があったアルハーン平原クー川右岸域に住むことになります。何故なら肥沃な平地だから。今から輸送のノウハウを確立しておくと、掃討戦跡地の交易も独占できるぞ。大儲けのチャンスだ!」
「お、大儲けか」
「胸躍るな!」
ハッハッハッ、ノってきたね。
ま、掃討戦跡地を含むクー川下流域が今後のドーラの中心になっていくのは間違いないだろうという、デス爺の見立てだ。
つまり帝国との戦争なんかなくても人口は増える。
レイノスとの交易規模が大きくなるのも理の当然なのだよ。
「今日集まってもらった皆さんは固有能力持ちです。何故なら戦闘になった時有利だから。あたしが盗賊や魔物に襲われても安心なところまで強制的にレベルを上げますので、油断さえしなければ世界最強の輸送隊になります。信頼できる輸送隊に依頼が来るのは当たり前。はい、ここでも大儲けのチャンスだ!」
「世界最強か!」
「大儲けだ!」
テンション上がってきたね。
おっと赤の民の女性が挙手?
「ごめんなさい、私、戦闘向きの固有能力じゃないんです」
「あんたは自分の能力を知ってるんだ?」
「は、はい。『鑑定』で……」
「やたっ! 一番欲しいやつ!」
喜ぶあたしを見て当惑する彼女。
「はい注目。彼女の能力は『鑑定』、他人の固有能力がわかるというものです。確かに直接戦いに強いというものではありませんが、敵の能力がわかるのは非常に大きいです。もっと言うと、レイノスでこっちに有益な能力の持ち主を探す際にも使えます。例えばものの価値がわかる『道具屋の目』とか」
彼女の顔が紅潮する。
この子は輸送隊に入りたいと言うより、将来レイノスで鑑定士でもやりたかったから、伝手を求めて入隊を希望したのかもしれないな。
理由なんか何でもいいよ。
有用な能力の持ち主は大歓迎だ。
「早速協力してよ。あたし、何の能力かまではわからないんだ。今日のメンバーの能力教えて?」
「はい!」
眼帯男ズシェンは『狂戦士』(魔法を覚えられない代わりに物理攻撃によるダメージにボーナス)、極めて強力だ。
インウェンが『猫柳』(回避率が高い)、他の黄の民が『格闘』など、全員が肉体系の能力だった。
ふーん、固有能力も村で偏るんだなあ。
魔法の面はどうかというと、赤の民のもう一人が『火魔法』、黒の民の一人が『雷魔法』だった。
回復魔法の使い手はいなかったが、まあ『些細な癒し』を使えるアレクがいるし。
「輸送隊になかなか夢があることはわかったね? 軌道に乗るまでは各村とあたしが全力でバックアップするから、心配しないでいいよ。代わりにうまく回るようになったら、各村に還元してください。いいね?」
「「「「「はい!」」」」」
「最後に一番大事なこと」
皆の表情が引き締まる。
「十分儲かったら一〇万ゴールドは返してね。利子はなしでいいから」
笑うな。
一番大事だと言っとろーが。
◇
「御苦労、ユーラシア」
顔合わせ会後、フェイさんに声をかけられる。
サイナスさんもピンクマンも安堵の表情だ。
「もう皆やる気になってるから、多分大丈夫だと思うよ」
「いや、上々だ」
フェイさんも上機嫌だ。
「この後はどうする。レベル上げしてくれるか?」
「いや、レベル上げは全員揃ってからにしよう」
「全員とは?」
「白の民の候補者の中に固有能力持ちいなかったでしょ? 白の民の村に今から行って、いい人いないか探してくる」
「ふむ、助かる」
フェイさんが納得する。
輸送隊の人数としては足りてるけど、隊員から省かれたことが白の民の心象を悪くするかもしれないからな。
最初から揉めてもつまらん。
白の民から寄越された候補者中に該当者なしだったから、適当な人がいないのかもしれない。
しかし配慮だけはしておかないといかん。
「白の民に行くなら、オレが了承してからにしてくれよ」
「ごめんね」
可愛い子ぶって謝ってみた。
サイナスさんが苦笑する。
あたしは白の民の村の有力者と面識がないので、サイナスさんと一緒に行くことは決定事項なのだ。
「レベル上げの日は追って連絡するよ。もう一回隊商について行って、帰ってきたあとになると思う」
「うむ、わかった」
「レベリングの時はピンクマンも手伝ってね」
「了解だ」
さて、よさそうだな。
「じゃ、白の民の村行ってくる」




