第381話:美少女精霊使いのドラゴンを倒す旅
「で、エルマはパワーカードどお? 面白い?」
「すごく面白いです!」
おお、食い気味だね。
熱意が伝わるよ。
これなら職人として続きそうだ。
「使う立場と作る立場じゃ面白さが違うと思うけど」
「ここがこうなるからこの素材を使ってこうだ、みたいな因果関係がとっても!」
楽しみ方がマニアックだな。
いや、職人とゆーものは多かれ少なかれ拘りがあるものなのかもしれない。
口に出さなかっただけで、コルム兄も細々したこと好きだったもんな。
「大変優れた装備なのに、あまり使ってる人がいないのはどうしてでしょう?」
「あまりどころか、この子らが使い出す前は現役の使用者がいなかったんだよ。せいぜい研究用、コレクション用、お守り用に売れるくらいでね」
アルアさんの言葉にゼンさんが聞いてくる。
「うちもそこが理解できねえ。ユーさんらが使い始めて、有用性が初めて知られたみてえじゃねえか。ちょっと見ただけでやたら便利だと思うんだが」
「うーん、理由は色々あるんだろうけど、一番もっともらしいのは示威効果がないからってことかな」
「「示威効果?」」
ゼンさんとエルマが首をかしげる。
「パワーカード使いは一見強そうに見えないじゃん? 兵士さんでも冒険者でも、強そうに見えることってすごく大事だから」
舐められるとよろしくない世界なのだ。
あたしが以前眼帯男や盗賊に絡まれたのも、丸腰に見えたからだろうしな。
「で、でもユーさんらはそんなこと全然気にしてないじゃねえか」
「あたしらは専業冒険者じゃないから、侮られようがバカにされようが一向に構わないんだよね。ちょっとレベル上がってくれば、強いか弱いかなんて見ればわかるし。精霊はパワーカード以外の装備がダメってこともあるけど」
見ただけで他人のレベルがわからんよーなザコにいくら絡まれたって、エンターテインメントのネタでしかない。
ムカつけば実力で黙らせるし。
ゼンさんがパワーカードに見出した一番の価値は、帝国の役人に見つからないという隠匿性じゃないかな。
エルマは装備した時の軽さで興味を持って、パズルにも似た応用力に好奇心を刺激されたんだろう。
装備の厳めしさなんてのは、この二人からすると盲点になる。
「はひー、わからないことでした」
「何でもいいところ悪いところはあるってことだね。でも利点欠点を理解するのは広い意味で大事じゃないかな。特にオリジナルのカードを作ろうとする場合には」
弱点をカバーするためにこうする。
ああいうところは強みなのでより一層強化する。
そのカードではカバーできない部分を違うカードで埋める。
とゆー考え方は大事だと思う。
技術自慢の独りよがりなカードは使いにくい。
「ゼンさんはパワーカード製作すげー頑張ってて、技術的にはもう結構なところまで行ってるみたいじゃん。今後はいろんな冒険者と出会うと、ああ、こういうのが求められてるんだって気付きがあると思うよ」
「おう、気付きか。気付きが大事か」
「うん、エルマを可愛がってやってね」
「お願いします!」
「アンタ、素材の換金はいいのかい?」
「あ、素材結構持ってきたんだったわ」
「かかかっ、しょうがないねえ」
交換ポイントは七一五となった。
新しく『ベヘモス香』を手に入れたので交換対象となるカードは増えているはずだが、あえて交換レート表はもらわなかった。
今のところ用がなさそうなので保留だ。
交換レート表くらい受け取っとけばいいだろうって?
見てると欲しくなっちゃうんだよ。
わかれよ。
「ちなみにアトムは今まで交換可のやつで気になってるカードある?」
「『必殺山嵐』でやすかね」
相手から物理攻撃を食らった時、確率で反撃できるカードだ。
なるほどアトムっぽい、が……。
「あんたは盾役だから、装備枠が七枚じゃ足りないくらいなんだよな。装備枠が余るなら、アトムには『ヒット&乱』か『オールレジスト』を装備させたいんだけどねえ」
『ヒット&乱』には混乱無効が、『オールレジスト』は基本状態異常と即死に耐性がある。
現在アトムには即死/麻痺/スタン付与の『ファラオの呪い』を装備させているので、混乱が怖いのだ。
もっとも『ファラオの呪い』は効果が派手だから装備させてるだけ。
必ずしも有効だとは思ってないので、外したって全然構わない。
その辺はまだ考察が必要なところだな。
「じゃ、あたし達帰るね」
「またおいでよ」「待ってますぜ」「お姉さまさようなら」
転移の玉を起動し帰宅する。
◇
軽くお昼をすませて灰の民の村へお出かけだ。
緩衝地帯黄の民のショップに、各村の輸送隊の候補者が集まってるとのこと。
その中から固有能力持ちを選抜するお仕事だ。
どんな人がいるかなー。
「ふんふーん、腹ごなしの散歩にちょうどいい距離だねえ」
「はい」
温暖なドーラ大陸南部であるが、風が大分冷たく感じられる。
冬が近い証拠だ。
「こんにちはー」
「待ってたよ、ユーラシア」
灰の民の村、サイナスさんの家だ。
既にアレクも来ている。
アレクも輸送隊員になるので顔合わせに参加するのだ。
「行こうか」
「うん」
いざ、緩衝地帯へ出発。
「前ユー姉が交易品にどうかって言ってた、双六みたいなゲームあったでしょ?」
「ああ、『美少女精霊使いのドラゴンを倒す旅』のこと?」
「タイトルは知らなかったけれども」
半分冗談だとゆーのに。
サイナスさんが笑う。
「オレのところにアレクが試作品を持ってきたんだよ」
「やるなアレク。サイナスさんが試しにやって見た感じだとどうだった?」
「面白い。ただ複雑過ぎるんじゃないかな。時間がかかるのもどうかと思った」
その評価にアレクが憮然とする。
「いいじゃんいいじゃん。サイナスさんがこう言うならイケるよ」
「「え?」」
二人が驚く。
「ゲームってさ。簡単なやつを複雑にしようと思うと、大体つまんなくなっちゃうんだよ。複雑なのに面白いなら、重要性の低い要素削ったって絶対面白いよ」
「視点がユーラシアらしいな」
「サイナスさんが合格出すくらいまでブラッシュアップされたら、黄の民に注文出してちゃんとしたやつ作ってもらってさ、ヨハンさんに見せてみようよ」
おーおー、アレク喜んでるみたいだね。
ま、これから戦争があるから、当面販売はムリ。
仕上げはじっくりでいいよ。




