第379話:どうせ力技で解決する
――――――――――八〇日目。
今日は朝からいい天気。
凄草の株分け日だ。
「カカシー、昨日はごめんね。凄草あげちゃって」
「何言ってんだ。人助けだったんだろ?」
「うん。全部食べられたって言ってたから、もう大丈夫だと思うんだ」
ポロックさんの娘ちゃんに体力が足りなかったので、凄草を食べさせた。
ちょっと量を食べられるようになりさえすれば、必ずしも凄草じゃなくてもいいのだ。
多分シバさんがステータスアップ薬草を取ってきて、少しずつ御飯に混ぜて食べさせるだろ。
もう必勝法が見えてるからバッチリ。
「オイラもユーちゃんに救ってもらったようなもんだ。今すごく充実してるんだぜ」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。炊きつけの薪にしなくてよかった」
「洒落にならねえよ!」
アハハ、冗談だってばよ。
カカシは寄り代タイプの精霊なので、自分で動いて何かをするということができない。
ここで働いて役に立っているという実感が嬉しいのかもしれないな。
「これで凄草二四株か。増えたなー」
「六日後を楽しみにしていてくれよ」
今のパターンだと六日で株分けできるまでに大きくなる。
四八株になると、一日一人一株計四株消費したとして、六日後までに二四株消費する。
そこで株分けすると、残りの二四株が四八株になるので、なくならない勘定なのだ。
日々過ごしているだけで強くなれちゃうという、ドリームな状況が実現する。
「これ甘くておいしいから、本当に楽しみなんだよ。ワクワクするなあ」
「ハハハ、任せてくれ。オイラはやるぜ!」
「カカシかっくいー!」
「照れるぜ」
表情わかんないけど、何となく照れてるのはわかるぜ。
◇
イシュトバーンさんの元にヴィルを飛ばす。
『御主人、代わるぬ!』
「ありがとう。イシュトバーンさん、聞こえる?」
『おう、聞こえるぜ。何の用だ?』
「例の服作ったセレシアさん。商品持ってスタッフ連れてレイノス行くって」
『もう商売始めるつもりかよ。あの別嬪さん、戦争あること知らねえのか?』
当然そーゆー反応になるよなあ。
後先考えず突っ走っちゃってる感がある。
「もちろん教えたけど」
『戦後開店が安全だろうにな』
安全危険で判断するなら確かに。
でも商売の成功失敗って、安全危険とは別物だから。
セレシアさんがやると決めたなら応援したい。
『まあいい。いつこっち来るんだ?』
「明後日にカラーズを出発する予定だな。レイノスに着くのは三日後の多分午前中になると思う」
『あんたも来るんだな?』
「面白そうだから行く。何せカラーズからレイノスに出店する初めてのケースだからね。成功失敗はこっちの士気に関わるんだよ」
『楽しみにしてるぜ』
イシュトバーンさんは何を楽しみにしてるんだろうな?
いや、主役はあたしじゃないからね?
『用は別嬪さんの出店についてだけか?』
「うん。オープンの日は協力よろしくね」
『じゃあ何か愉快な話を聞かせろ』
「は?」
『オレは精霊使いから愉快な話を聞かないと死んでしまう病なんだ』
「何だそれー!」
まったく何を言っているんだ。
あたしは玩具箱じゃないんだが。
もーしょうがないなあ。
披露できる話と言えば……。
「……愉快な話ってわけじゃないんだけど」
『おう』
「魚フライフェスの時に会った、シバさんの孫娘覚えてる?」
『ああ、あの可愛い娘な……』
ポロックさんに肩車されていた娘さん。
フェスの時、何も食べてなかったことをイシュトバーンさんも覚えているだろう。
「あの子、あれからずっと体調悪かったんだって」
『おい、後味の悪い話はやめてくれよ?』
「昨日、ギルドの受付のところで、シバさんとその娘婿のポロックさんが深刻な顔して話してたんだよ。病気じゃないんだけど、元々細い食が体調のせいでほとんど食べられないって」
『……』
「で、賢いあたしは閃いた。凄草持ってきて食べさせたんだよ。バッチリ体調が良くなったって感謝されたんだ」
イシュトバーンさんがホッとしたような声を出す。
あたしだって後味の悪い話は嫌いだわ。
愉快な話を要求されてるのにウェットな話するほど、空気の読めない子じゃないわ。
『凄草か。いや、あんたが凄草持ってたって驚きゃしねえが、何で凄草を?』
「要するに病気じゃないのに虚弱っていうのは、ステータス値が足りない状態だと考えたんだよ。ステータス値が上がれば、食べられるし動ける」
『ほほう、道理だな。でも何も食えねえくらいの子が、よく草なんか食べたな』
「イシュトバーンさん、新鮮な凄草はすごくおいしいんだよ。甘くて子供好み」
『凄草が甘くて美味い? 知らなかったぜ』
経験豊富なシバさんやイシュトバーンさんが知らないくらいだ。
魔力たっぷり新鮮凄草の真の味は、おそらくほとんど知られていないんじゃないかな。
美味な凄草が毎日食べられるようになっちゃうのかー。
あたしは幸せだなあ、カカシ様々だよ。
『あんた新鮮な凄草が生えてる場所でも知ってるのか?』
「凄草はマンティコアのドロップアイテムなんだよ。何でだかわかんないけど新鮮なの」
『ほお、マンティコアの肉が美味い理由はそれかもな』
「えっ、そーなの?」
魔境の魔物は肉食だから不味いっていう先入観があったな。
『魔境の魔物で美味いのは、マンティコアだけと言われてるんだぜ』
「知らなかったよ。イシュトバーンさん、ありがとう! 今度食べてみる」
『おいおい、マンティコアを食うのは至難の業だぜ。あんなデカいのを持ち帰るのは大変。現場で捌いて肉にするのはもっと困難だ』
イシュトバーンさんの言う通りだ。
でもおいしいんだったら食べてみたいし。
「うーん、何とか工夫する」
『ハハッ、どうせ力技で解決するんだろ? あまりムリすんなよ』
あたしに力技しかないと思って。
ゴリ押しだってパワープレイだって得意技だわ。
マンティコアがいるドラゴン帯は敵影が濃いのはわかってるが、うちのパーティーには解体名人のクララ先生がいる。
少し時間を稼げれば何とかなると見た。
次から魔境行く時はクララのデカ包丁を持っていこう。
「以上でーす。じゃ、三日後行くから」
『おう、じゃあな』
「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」
『わかったぬ!』
よし、連絡終わり。
「午前中はコブタ狩りしてからアルアさんとこね」
「「「了解!」」」




