第375話:天才美少女精霊使いの領分
「最後にもう一度リッチー倒していこう。ドロップが気になってしょうがない」
「「「了解!」」」
北辺西に多数生息するデカダンスとウィッカーマンでしこたま高級魔宝玉を稼いだ帰りに、中央部を経由する。
やはりどうにも気にかかるリッチーなのだ。
昨日はあの強力なアンデッドを二体倒して、一体から邪鬼王斑珠を得、もう一体は何も落とさなかった。
それで固定ドロップなし、魔宝玉の価値を考えてレアドロップが邪鬼王斑珠と考えたのだが……。
「一粒万倍珠とはね?」
スーパーレアなのかもしれないが、邪鬼王斑珠と価値が変わらないという点が引っかかる。
どーなってんだろ?
よくわからんことはイライラするものだ。
もう何体か倒してドロップを確認しないと、乙女の睡眠時間が何分か削れてしまうわ。
「リッチーね」
「出たぞー。とっとと魔宝玉を落とせ!」
レッツファイッ!
以下略!(今日三回目)
「降魔炎珠です!」
また違う魔宝玉だ。
ええ? マジでわけわからんな。
降魔炎珠は、ランクとしては邪鬼王斑珠や一粒万倍珠ほどではないが、黄金皇珠よりは価値のあるものらしい。
いずれにせよクエストの対象となる高級魔宝玉だから、その点はいいんだが。
「リッチーはバラエティドロップね?」
「かもしれないね。もし推測が当たってるなら、いろんな魔宝玉を集めろっていうお題には最適かもしれんけど」
魔宝玉クエストが終わったら寂しくなっちゃう。
せっかく磨いた魔宝玉狩りの腕が泣くから、また誰か似た依頼出してくれないかな。
それこそ魔宝玉の種類を集めろっていうクエストでもいいんだけど。
「予定変わるけど、ベースキャンプに寄って行こう。オニオンさんに報告だ」
「「「了解!」」」
ベースキャンプを目指し南下。
あ、ワイバーンがまた卵ドロップした。
いいお土産になるから、帰り道に拾うのは嬉しいな。
ベースキャンプにとうちゃーく。
「ただいまー」
「あ、お帰りなさいませ」
オニオンさんが意外そうだ。
「直接お帰りになるはずでは?」
「そのつもりだったんだけど、面白いことがわかったんだよ」
「ほう、何でしょう?」
ホクホク顔だ。
オニオンさんは研究者肌だから。
「まずイビルドラゴンのレアドロップは一粒万倍珠だとゆーことがわかった。それから『逆鱗』は三枚取れることもある。結構倒し甲斐のある魔物だね」
「ハハッ、ドラゴン帯のドラゴンに比べると格段に強いですから、手応えはあるでしょうけど」
ノーマルドラゴンと違って『雑魚は往ね』が効かないから、マジックポイントの消耗が激しい。
倒して割のいい魔物とは言えないか。
「で、問題はリッチーなんだ。今日二体倒して、それぞれ一粒万倍珠と降魔炎珠落としていったんだよ」
「昨日、邪鬼王斑珠のドロップを確認されてるんでしたよね?」
「うん。計四体倒して、一体がドロップなし、残りが邪鬼王斑珠、一粒万倍珠、降魔炎珠のドロップという結果だね。どういうことだろ?」
「……何でもいいのかもしれません」
「え?」
何でもいいってどゆこと?
オニオンさんが説明してくれる。
「今でこそ魔境の生滅輪廻に取り込まれたアンデッドの魔物に過ぎませんが、最初のリッチーは高名な魔道士であったと言います。自らを不死化するのに高級魔宝玉を触媒として使用したとも」
リッチーってそーゆー魔物だったのか。
クララがコクコク頷いてるわ。
「魔道士時代の記憶というか、本能が高級魔宝玉を求めるのか。あるいは人ならざる妄執と魔力で、魔宝玉を作り出すのかするんじゃないでしょうか」
「……簡単に言うと、リッチーはいろんな高級魔宝玉をランダムドロップする可能性があるってことでいい?」
「はい」
「メッチャ楽しみだなー」
まだ見ぬ高級魔宝玉を見られるかもしれない。
ただ数を稼ごうと思うと向かないな。
やっぱマジックポイントを調節しながら、ウィッカーマンとデカダンスを倒すのが効率がいい。
「ありがとう、オニオンさん。今日は帰るよ」
「またのお越しをお待ちしております。さようなら」
「さいならー」
転移の玉を起動し帰宅する。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
手持ちの高級魔宝玉が多くなってきたから、預かってもらいにギルドに来たのだが?
「……何事?」
エントランスでポロックさんとシバさん、それからダンが話をしている。
深刻そうだが?
「御主人!」
先行させていたヴィルが飛びついてくる。
よしよし、いい子だね。
でもちょっと雰囲気読もうか。
「あっ、ユーラシアさん、いらっしゃい」
「どうしたの?」
いつものポロック節が出ないぞ?
『チャーミング』って言ってもらわないと、あたしも調子狂うんだけど。
ダンが説明する。
「ポロックさんの娘さんが、この前のフェスの日から調子崩してるんだってよ」
「ひょっとして『オーランファーム』直営店の食べちゃった?」
「風評被害だ。根も葉もない噂はマジでやめろ」
ポロックさんとシバさんが口々に言う。
「弱い子でねえ。病気というわけではなさそうなんだけど……」
「もともと細い食が、体調のせいかさらに細っているのだ」
「要するにこの前のフェスで人酔い人疲れしちまったんじゃねえか、ってことなんだ」
「なるほど」
「医者にも診てもらったんだがね……」
ポロックさんもシバさんも心配そうだ。
「あんた、ポロックさんの娘さんを見たんだろ?」
「見た」
「どうだった?」
「身体の魔力の流れが全体的に細くは感じたけど、特別どっかが悪いとかはなかったよ」
ポロックさんが驚く。
「ユーラシアさん、わかるんですか?」
「レベル上がって魔力の流れが見えるようになったんだと。どこが悪いか見当つくんだとよ」
「やはり悪いところはない、のか」
落ち込む二人。
「……見てられねえんだが。どうにかなんねえのかよ?」
「……どうにかって言われても、お医者さんじゃあるまいし」
「……悪いところないんじゃ医者の領分でもないだろ」
「……だからって天才美少女精霊使いの領分なのかよ」
無茶振りも過ぎるだろ。
大体悪いところないんじゃ……あれ? 悪いところないんだよな?
なのに調子が悪くて食が細い?
ということは……?
「あっ!」
三人が驚く。
「どうした?」
「な、何か?」
「閃いた! 治る治る! ちょっと待ってて、すぐ戻るから!」
転移の玉を起動し帰宅する。
ユーラシアのレベル上がって魔力の流れが見えるようになったのは、『閃き』の固有能力でカンが一層よくなったからだと思われます。




