第374話:おっぱいさんの喜ぶ顔が見たいから
魔境から一旦帰宅したので、畑番の精霊カカシに声をかける。
「カカシー、凄草ゲットしたぞ。いい株だよ!」
「やったな、ユーちゃん!」
畑番カカシも大喜びだ。
凄草は甘くて大変おいしいので、株が増えて毎日食べられる体制になるのが待ち遠しいなあ。
「おう、かなり立派な株じゃねえか。今分けてもいいくらいの大きさだが、明日株分け日だろ? そのまま植えといてくれよ」
「うん、わかった」
現在これで一三株、明日には二六株か。
増えたなあ。
これも全てカカシのおかげだ。
実にありがたい。
「ユーちゃんよ、明日からは凄草以外のステータスアップ薬草は全部食べちゃっていいからな」
「りょーかい。お世話になったステータスアップ薬草もお役御免になるかと思うと、感慨深いねえ」
「ハハッ、次々回の株分け日からは毎朝凄草サラダだぜ?」
「素晴らしいなあ。夢のようだよ」
凄草も魔力の管理が難しくて育てるのは最初苦労したけど、何とか今のところはうまくやれている。
早めに魔力の供給を自動化できるといいんだが。
今後の課題だな。
「ユー様、お昼にしましょう」
「はーい、今行く」
お弁当用に魔境へイモと茹で肉持っていってたんだけど、まあせっかく帰ってきたことだから。
家で食べるとリラックスできるもんね。
クララがもう一品スープを足してくれた。
「午前中はなかなか調子良く稼げたんじゃない? 魔宝玉ハンターに相応しい仕事ぶりだったと自画自賛したい」
「そうでやすね。午後もこの調子だと、今日ギルドへ持っていく分が一〇〇個近くになりやすぜ」
「一〇〇個かー」
一〇〇個はオーバーにしても九〇個くらいにはなりそうだ。
前納めた分も加えるとかなりの数になるな。
最初冗談ですんごい魔宝玉を一〇〇個持ってきたとして、この依頼者が正当な依頼料払えるかどうかがわかんないって言った。
ところがその倍以上の数を納められるのがほぼ確定になってきた。
依頼者がどんな顔するか、ワクワクするなあ。
加えておっぱいさんがどんなに喜んでくれるか、怖いもの見たさ的に楽しみだ。
……ヴィルは呼ばないほうがいいかな。
「ユー様は魔宝玉クエストの依頼人ドーラ総督説をどう思われます?」
ドーラ総督は帝国皇帝のドーラにおける代理人だ。
とはいうもののほぼ実権はなく、お飾り的な地位とされる。
貴族の地位の上下とかはよく知らんけど、現在のドーラ総督は帝国皇帝の幼馴染って聞いた。
であれば魔宝玉クエストの依頼が出せるほどのお金持ちであっても、全然おかしくはないのだが。
「うーん、オニオンさんの話聞くとありそうなんだけど、おっぱいさんの執着はどう考えても個人的な確執だよねえ?」
おっぱいさんとドーラ総督に接点があるのか?
個人の関係までわからんしな?
「クエスチョンね?」
「少なくともあたしはピンと来ないね」
「姐御がピンと来ないんじゃ、多分違うと思いやすがねえ」
「やっぱそーなのかなあ?」
ドーラ総督の人品骨柄を知らないから、何とも言えないんだよなー。
「ごちそーさま。まあ材料のないことはわからないよ。できることは魔境で稼ぐことだ。ごそっと稼いでがばっと納品することこそ魔宝玉ハンターだ!」
「「「了解!」」」
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「美少女精霊使いユーラシアあーんど愉快な仲間達再び登場! オニオンさん、こんにちはー」
午後もバリバリ稼ぐぞー。
おっぱいさんのために、そしてうちのパーティーのために。
「いらっしゃいませ、ユーラシアさん。ホームに戻られてましたか?」
「うん、荷物満杯になっちゃったから、置いてきたんだ。ついでにお昼御飯も食べてきた」
「また午後も人形系狩りですか? 仕事熱心ですねえ」
「おっぱいさんの喜ぶ顔が見たいから」
アハハと笑い合う。
「今からの探索も荷物一杯になっちゃうと思うんだ。多分ここへ戻ってこないで直接帰るよ」
「了解です」
「じゃ、行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」
本日二度目のユーラシア隊出撃。
◇
アトムが聞いてくる。
「真直ぐ北でやすね?」
「真ん中突っ切って魔宝玉狩りだね」
午前中はベヘモスに遭いたいという目的があったのでワイバーン帯を大回りした。
もうその目的は達成したから、午後は真っ直ぐ中央部。
ある程度の知見が得られたら北辺の人形系パラダイス行きだな。
ザコ魔物をばったばったと倒しながら、魔力濃度の高い中央部へ。
「イビルドラゴンね」
「やあやあ、我が手を塞ぐそこな悪しき竜よ。潔く退くがよい!」
「変わったノリですね?」
「あたしにだってサービス精神はあるからね。倒される側だって、いつもと違う口上が聞きたいでしょ」
「倒される側はいつも違う個体でやすぜ?」
「おおう、ごもっとも」
レッツファイッ!
以下略!
「翡翠珠と、何だろ? 見たことない魔宝玉だ。結構良さそうなものだと思うけど」
「一粒万倍珠です! これも世界的な秘宝ですよ」
イビルドラゴンのレアドロップはこれか。
クエストに貢献する魔宝玉がまたしても手に入ったのだが……。
「何か世界の秘宝ばっかり手に入るから、感覚が麻痺してきたなあ」
「ボスはパラライズに耐性があるはずね」
「忘れてた設定だわ」
あたしの固有能力『自然抵抗』は、沈黙・麻痺・睡眠にある程度の耐性があるというものだ。
ダンテよく覚えてたな。
「姐御、『逆鱗』が三枚もありやすぜ!」
「マジか? よっしゃ儲かった!」
イビルドラゴンの『逆鱗』は三枚のこともあるんだなー。
強いドラゴンは複数の『逆鱗』が手に入るようだ。
いろんな知識が増えていく。
「幸先がいいねえ。あそこのリッチー倒したら北へ離脱」
「「「了解!」」」
レッツファイッ!
以下略!(二回目)
「一粒万倍珠ですね?」
クララが困惑する。
「リッチーのレアドロップって邪鬼王斑珠じゃなかったっけ?」
「昨日はそう思いましたが……」
「どっちかがレアでどっちかがスーパーレアね?」
「かもしれませんけど、邪鬼王斑珠と一粒万倍珠は価格的にも希少価値も似たようなものです。どちらが上かと言われると……」
ふーむ?
「オニオンさんに報告したい知見だねえ。まあいいや、マジックポイント減ってきたから、自動回復させとかないと」
「北辺西でやすね?」
「うん。真経験値君デカダンスを相手しようじゃないか」
人形系レア魔物エリアへ。




