第371話:おにくのかずだけつよくなれるよ
「おにくのか~ずだけつよくなれ~るよ~あぶらの~っている~ばらの~ように~」
「バエの姉貴絶好調でやすねえ!」
「あはは、アトム君も飲んでよ~」
「ゴチになりやす!」
チュートリアルルームに夕御飯を食べにやって来た。
飲兵衛どものテンションが上がってる。
まあたまにはいいか。
気晴らしが必要な夜もあるだろ。
それにしてもバエちゃんがテンション上がった時に吟じる詩みたいな文句、あれ何なんだろうな?
即興で作ってるんだろうか?
クララが話しかけてくる。
「ユー様、自由開拓民集落バボの黒妖石の台ですけれども、どういたしましょうか?」
黒妖石は魔力を溜めておける特性がある。
今後色々な用途が考えられるので、バボの村人達に頼んでキープしてあるのだ。
クララが言うのは、現在いくつか買い取れるだけのおゼゼがあるからどうすべきかということだろう。
「魔宝玉クエストのお金が入ったら買っちゃおうか。いっぺんにお金払うのはバボの人達のためにならない気もするけど……」
いい気になって使っちゃうとよろしくないかもと思ったのだ。
でも気の回し過ぎかもしれない。
まとまったおゼゼがないとできないこともあるしな。
ヴィルはダンテの膝にちょこんと座っている。
ヴィルは案外ダンテの側が好きみたいだ。
「あっ、アトムがひっくり返った。もーしょうがないなー」
「『キュア』かけましょうか?」
「帰るまで寝かせとき」
今酔いが醒めたらまた飲むに決まってる。
きりがない。
「バエちゃん、チュートリアルルームで何か変わったことあった?」
「昨日のエルマさんからの報告があったわよ。朝、新しい石板のクエストをこなしたら、次の石板がすぐに来て驚いたって」
「ふーん? あたしらの石板、海岸に流れてくるから、一日に何度も取りに行かないんだよね。来るの早いなとは思ったたけど、クエスト終わってすぐ次が来るとは知らなかった」
そーいやダンは、農場の従業員のレベル上げの日には既にギルドカードを持っていた。
チュートリアルルームの次の日には、いくつかクエストを終えていたからだろう。
してみると遭難皇女の石板クエストは、やっぱ前日に来てたんだろうか?
リリーが落ちたのあたしが聞いた時点で一日以上前って言ってたしな。
考えてみるとヤバかった。
至急クエストには今後も注意しておかねば。
「で、もう一つのクエストも完了したら、ギルドへの転送魔法陣が設置されたって」
「クエスト二つでギルドか。ツイてるねえ」
「女の子だから配慮したのかも」
「何であたしの時は配慮しないんだ。物申すぞ」
チュートリアルルーム終わってから間三つあったぞ?
もっとも三つ目はアルアさんところだったが。
いや、エルマはレベルが既に高いから、早めにギルドに呼んで情報交換に参加させるべきという判断だったかもしれないな。
女の子だから配慮したというより納得できるわ。
「ユーちゃんは全然大丈夫だったわよお。何も考えてなければ時間はかかったかもしれないけど、問題なくクリアできたってば」
「そーかなー?」
情報のない最初はかなりきつかったぞ?
アトムが仲間になってパワーカード入手の目処が立って、初めてイケると思ったけど。
運の要素が大きいなと感じたわ。
「エルマさん、明日早速ギルド行ってみるって言ってた」
「ギルドで楽しんでくれるといいなあ。次からクエストの難易度上がるかもだよね?」
「ユーちゃん、過保護ねえ」
「可愛い妹分だからなー」
バエちゃんが笑う。
弟分妹分には甘いけど、弟子には厳しい。
ラルフ君ごめんよ。
「シスター・テレサはどーなの?」
「エルマさんが二つクエストを終えたことを報告したら喜んでた」
「『アトラスの冒険者』って、固有能力をえらく重視してるんかな? 固有能力だけで冒険者決めるんじゃなくて、初期のパラメーターやスキルもよく考慮して決めてよ。エルマは放っといたらまず脱落してたぞ?」
脱落者が多いのはその辺が原因のような気がしてきた。
「でも初期パラメーターや持ちスキルを重視するのなら、ソール君も多分選定から漏れてただろうし……」
「あ、ほんとだ。案外難しいな」
ソル君もあたしと同じ、初期は何の心得もなくて弱かったしな。
今や最年少ドラゴンスレイヤーだけど。
「……現役の『アトラスの冒険者』が最初だけ手伝ってくれるのが、一番脱落者を少なくできるわねえ。ちらっ」
「何なの『ちらっ』って」
「魔境レベリングができるの、ユーちゃんだけでしょ?」
「レベル一の冒険者に魔境レベリングはいらないわ」
「エルマさんには魔境レベリングしたじゃない」
「エルマはそもそも冒険者自体に向いてないから、苦労してまでやる意味ないと思ったんだよ。レベルアップしてどんなスキル覚えるのか、興味もあったし」
行けるところが多くなれば、自分に適した道があると思ったのだ。
冒険者としては邪道だってば。
「じゃあユーちゃんは、現役冒険者が新人に何らかの手伝いするのには反対?」
「賛成だけれども」
初っ端のノウハウを教え込み、レベル三~四くらいまで面倒みるだけでも、初期脱落者の数はおそらく激減する。
とゆーか絶対にそうすべきだろ。
ド素人に武器だけ渡して魔物と戦えって放り出すのは鬼畜の所業だわ。
「でしょう? 私、上申してみるね。シスター・テレサも賛成してくれると思うし」
「簡単に意見が通るわけじゃないんでしょ?」
「大丈夫! ユーちゃんが賛成って言っとけば必ず通るから」
「マジか」
最近あたしの影響力大きくない?
まあこれは現場の冒険者の負担が増えるだけだから、普通に通りそうだな。
面倒なの嫌いなんだけど。
「大体、脱落する冒険者が少なくなると、クエストの数が足りなくなるんじゃないの?」
「クエストは山のようにあるはずよ? 世の中の困りごとなんてなくなりはしないわ」
今のバエちゃんの口振りからすると、やはりクエストは自動で収集してるっぽい。
もう少し突っ込んでみるか。
「困りごとを集めてくるのは可能かもしれないけど、分配するギルド職員の仕事量は増えるんじゃない?」
「かもしれないわね。ギルド職員の数は増やせないし」
ははあ、『アトラスの冒険者』の運営予算か職員の定員は決まってるんだな?
どんどんボロが出るなあ。
面白くなってきた。




