第367話:何だこれ?
エルマの固有能力『大器晩成』は、育成環境が整ってるなら極めて冒険者向きの固有能力なんだが。
「その子も体格や筋力に優れてるなんてことなくて、もちろん武術の経験なんかなし。スライムよりかなり弱い設定になってる、一番最初のテストモンスターにもかなり苦労するくらい」
「どうして『アトラスの冒険者』は明らかに問題のあるやつを選ぶんだ?」
「わかんない。年齢と持ち固有能力? どーも書類上だけで決めてるんじゃないかと思われるふしはあるね」
エルマの場合だと、レアな『大器晩成』の上に『マジックポイント自動回復二%』まで持っている。
だからこの子に決めた、みたいな感じだったんじゃないかな。
「イシュトバーンさんだったら、この子にどうアドバイスする?」
「冒険者は諦めろって言う」
「だよねえ。あたしも諦めろって言って、その子のレベル二六まで上げた」
イシュトバーンさんが特有のえっちな目で見てくる。
その目は相手があたしじゃなければセクハラだからな?
「……あんたのやることのわからねえ部分だな。まず、他人のレベルを上げるってのはどういうことだ?」
「あたしの得意技だよ。魔境連れていって共闘してレベル上げるの」
「何も知らない素人をいきなり魔境へ連れてくのか。ヤベえな」
含み笑いしてる。
別に捨ててくるわけではないとゆーのに。
「経験値を考えると一番効率がいいんだよね」
「ああ、あんたは人形系レア魔物を簡単に倒せるんだったな。で、失格冒険者のレベルをわざわざ上げるのはどうしてだ?」
「『アトラスの冒険者』はいろんなところへの転送魔法陣が出るでしょ? レベル上がればやれることが増えるし、いろんな人に会えるんだよ。冒険者はやんなくても、『アトラスの冒険者』を捨てることはないと思うんだよね」
エルマはテストモンスターを相手にあんなに苦戦してたのに、諦めようとはしていなかった。
あたしみたいな冒険者になりたいと言ってた。
手を貸してやりたくなるじゃん。
『大器晩成』の固有能力持ちが覚えるスキルに興味があったということも、もちろんあるんだけど。
「ははあ、育成的な考え方か」
「あたしも好きで冒険者やってるわけじゃないけど、やれること多いと楽しいもん」
「あんた、好きで冒険者やってるんじゃねえんだ? まあ、やれることが多いと楽しいってのは同感だな。オレはそのために金儲けしてきたが……」
イシュトバーンさんが少し寂しそうな顔になる。
「なかなか精霊使いほど自由には生きられねえもんだ」
「年寄り臭いこと言ってるなあ」
「年寄りなんだぜ」
煩悩があんまり年寄りっぽくないんだけど。
「お姉さん達の着替えが終わったみたいだよ」
「お、楽しみだな」
お姉さん達が嫌がらないえっちな服(意訳)に対する、セレシアさんの回答はいかに?
さあ、答え合わせだ。
白と黒の地味な配色で……。
「……」
「……」
「……いかがですか? 解説のイシュトバーンさん」
「……い、いいじゃねえか」
何だこれ? 何だこれ?
ベースはエルのファッションに違いないのだが、ごく短いボトムスで代わりにソックスが思いっきり長い。
白のシャツは首まで覆い袖がないシンプルなタイプで、腕カバーを装着している。
全体的に身体のラインが強調されているのが特徴的だ。
しかし露出はソックス上と腕カバー上のごく狭い部分に抑えられている。
「どうなってんの? どーしてこれこんなにえっちなの?」
「微妙に見える素肌が刺激的だぜ」
「セレシアさんすげえ!」
お、おかしいな?
エルのファッションをちょっと弄っただけで、こんなにえっちになるとは?
変なトリックを見せられた気分だ。
イシュトバーンさんなんかガン見してるやんけ。
「着心地はどう?」
「バッチリです。よく伸びる生地なんですよ、これ」
なるほど、よく伸びる生地って動きやすいだけじゃなくて、身体のラインも奇麗に見せられるんだ。
これは応用が利く、そして売れる!
「ほへー、ビックリしたよ」
「おう、満足だぜ。いくらだ?」
「二人分で七〇〇ゴールドだよ」
「随分と安いじゃねえか」
「あたしも思った。サービス価格かな?」
おゼゼを受け取る。
イシュトバーンさんだったら一〇倍でも払ったと思う。
だってこのジジイを満足させるって、かなり難しいぞ?
「で、セレシアさんに力貸してくれる?」
「依頼者の要求に応える能力は認めざるを得ないな。協力しようじゃねえか」
「やたっ! イシュトバーンさんありがとう!」
「ハハッ、あんたは他人のことにも一生懸命だな」
自分にメリットがあればね。
「よし、店はいつ出すんだ? 商品は揃ってるのか? ……時間おいてもいいんだぜ?」
帝国戦後にオープンしてもいいんじゃないか、という意味だろう。
あたしも同じ考えだが……。
「セレシアさんに聞かないとわかんないな」
「方針決まったら連絡くれ」
「うん、わかった。じゃああたし達は帰るよ」
イシュトバーンさんがちょっと驚いたような声を出す。
「え、もうか? ゆっくりしてけよ」
「もうだよ。あたしのスケジュールは宝石より希少なのだ。ゆっくりしない」
「昼飯食ってけ」
「ゴチになりまーす!」
皆が笑う。
出された御飯をしっかり食べるのは、美少女精霊使いのポリシーだから。
◇
「さて、これからどーしよ?」
イシュトバーンさん家でお昼を御馳走になったあと、帰宅したが?
うちの子達の意見を聞く。
「夜までどうするって話でやすね?」
「そうそう」
夜はバエちゃんとこへ行く予定なのだ。
「ボクレディーから得たマテリアルがたくさんあるね」
「ボクレディーってエルのことか。それ今度エルに言ってみ?」
エルは案外女の子扱いされると喜ぶからな。
一人称が『ボク』の分際で。
「うーん、素材の換金は海の王国行ってからにしたかったんだけど……」
「『逆鱗』以外を換金する、でどうですか?」
「そうしようか。じゃあ魔境で一稼ぎしてから、アルアさんとことギルドで換金、海の王国に持ってく予定の魔宝玉の一部と『逆鱗』『巨人樫の幹』は置いてく」
クララが聞いてくる。
「『巨人樫の幹』もですか?」
「武器・防具に応用できるかよくわかんないけど、あたし達が手に入れやすいレア素材だから一応ね。ひょっとして欲しいのかもしれないし」
処分するのは女王に聞いてからでも遅くない。
いわゆる絶対領域的なやつです。




