第363話:戦争に関係のあること
胡散臭げな目をしてあたしに聞いてくるデス爺。
何だその顔。
美少女を見る表情にチェンジしろ。
「で、輸送隊は安全のために全員レベル上げする予定なのじゃな?」
「うん。黄の民主体でやるんだけど、族長代理のフェイさんとそう決めた」
「建て前ではじゃろ?」
「建て前?」
あっ、デス爺は完全にあたしの目的について気付いてる。
アレクはわかってないみたいだけど。
「どうせレベリングするなら固有能力持ちにしようってことになったんだ。でも今灰の民の村は、掃討戦獲得地の整備に全力じゃん? 色々条件を考えるとアレクしか輸送隊員候補者になりそうにないんだよね」
「ほう、アレクは固有能力持ちじゃったか」
デス爺が嬉しそうだ。
固有能力持ちであることを喜ぶ人って案外多いな。
使えてこそだと思うけど。
「あたし、固有能力持ちかじゃないかはカンでわかるんだよ。何の能力かまではわかんないけど。アレクは変な魔法の使い手だったよ」
「変な魔法?」
「『小魔法』です。様々な系統のノーコストの魔法ばかり覚えました」
「ほう、珍しいの」
デス爺何か考えてるね?
睨むなってばよ。
可憐な少女を見る目ではないとゆーのに。
「ユーラシアよ、多人数をレベル上げする真の目的は何じゃ? キリキリ白状せい。戦争に関係のあることか?」
真っ直ぐ来たなあ。
とゆーことはアレクにも帝国との戦争のことは伝えてあるんだな。
「デス爺が最後にパラキアスさんと会ったのはいつ?」
「む? おかしなことを聞くの。アルハーン平原の掃討戦前じゃぞ。お主が灰の民の村に来てパラキアス殿と顔合わせしたあの時じゃ」
とゆーことは、デス爺には最近の情報は入ってないか。
当然といえば当然。
デス爺は塔の村の経営にかかりっきりだったろうし、パラキアスさんが西の果ての塔の村まで来るのは大変だから。
「帝国には海の一族の監視を抜けて小舟で上陸する技術があるんだ。ゲリラ戦を展開して、レイノスへの物流を止めようとするだろうと思ってる。規模は数十人くらいじゃないかな」
「ふむ?」
デス爺はあたしが本の世界のマスター、『全てを知る者』ことアリスとコンタクト取れることを知っているから、情報源の推測はつくだろ。
「ドーラ側では、物流の大きい西を守ろうって話になってるの。『アトラスの冒険者』は西域に出動だって指示がもう出てるんだ」
「うむ、当然じゃな。ではレイノス東はどうなる?」
「レイノス東には自由開拓民集落が三つしかないし、どの集落もレイノスに近い位置にあるじゃん? 本当に攻められることを察知できれば、そこ取りまとめてる商人さんの私兵とレイノス守備隊で何とかなりそう。でもカラーズまでは……」
「手が届かぬと」
こっくり。
カラーズはマジで平和で、冒険者ともあんまり縁がない土地柄だから。
「ドーラ側にはカラーズに派遣する戦力はないんだ。カラーズは今までレイノスとほとんど取り引きなかったし、戦略的に帝国がカラーズ攻めるのは意味が少ないから大丈夫と思いたい。けど陽動作戦くらいはあるかもしれないから……」
「自衛のための組織を作っておくと」
こっくり。
輸送隊をレベル三〇くらいまで鍛えておこうと考えてるのは、いざという時のカラーズ防衛戦力として見ているとゆーこと。
「見よアレク、ユーラシアはこういうやつじゃ」
「さらに言うと、可愛い孫が巻き込まれそうなら、じっちゃんが手を貸してくれるんじゃないかなと思ってる」
唖然とするデス爺。
「……お主はどうなのじゃ?」
「カンなんだけどね。戦時にあたしはカラーズにいない。ヒロインにはヒロインに相応しい場が用意されているはずだから」
何か言おうとしたデス爺の動作が止まり、再び話し出す。
「まあ、お主はフリーハンドで動くのがよいかも知れぬの」
「うん。アレク、スキルや装備が足んない時はじっちゃんに泣きつくんだよ。必ずどうにかしてくれるから」
デス爺とアレクが苦笑する。
◇
アレクとうちの子達で食堂に来た。
ヴィルも呼んである。
そろそろ皆が塔から帰ってきてもいい時間だ。
アレクが言う。
「ボクはフェイさんのところへ挨拶に行くのがいいのかな?」
「いや、まだいいよ。アレクを輸送隊にって決めてたわけじゃなかったし。いずれ黄の民の村に行く機会があるから、その時ついておいで」
「わかった。あっ、エルさん!」
エルのパーティーが食堂に入ってくる。
「あちゃー、エルが最初か」
「どういう意味だい?」
「よく見て。精霊が自由に喋れるメンツでしょ?」
「何か問題が?」
「エルはもうちょっと危機意識を働かせなよ。言い換えよう。コケシが自由に喋れるメンツでしょ?」
急に不穏なものを感じたか、顔を顰めるエル。
「大丈夫ですエル様。コケシがお側におります」
「一番の不安材料が何か言ってるぞ? でもヴィルを用意してるから安心しなよ」
「安心するぬ!」
「君、味方面してるけど共犯者だからな?」
「まことに失敬だな」
あたしはわざわざ特効薬ヴィルを呼んでるだろーが。
無差別クラッシャーのサディスティックコケシと一緒にすんな。
クララの声がかかる。
「レイカさん達がいらっしゃいましたよ」
「「ちっ」」
「あっ、君達今、舌打ちしたろう!」
誰と誰を指してるかは言うまでもない。
そして正解。
「やあ、ユーラシア。久しぶりだな」
「元気そうだね。ジンもハオランも」
レイカパーティーの剣士ジンと拳士ハオランが会釈する。
「アレクはいつまでこっちにいるんだ? ん、ちょっと雰囲気変わったな」
「こんにちは、レイカさん。明日戻ります。カラーズ交易の輸送隊に入れてもらおうかと思って、ユー姉にレベル上げしてもらったんです」
レイカが頷く。
「カラーズの交易ってどうなってるんだ? 話だけは聞いたが」
「ふっふっふっ。もうレイカがいた頃とは全然違うよ。今日もレイノス行き三回目の隊商が出てるはず。村同士で協力もしてるんだ。黒の民の酢が大ヒットで、その容器を赤の民が作ってるから、結構儲け出てると思う」
「ふうん、随分変わったんだな」
あ、リリーも帰ってきた。
「おお、今日は賑やかだの」
「リリー、相変わらずお嬢っぽい気品がないね」
「何だとお!」
皆が笑う。
リリーと黒服が席に着いたところで内緒話モード発動。
精霊達とヴィルがさりげなく周りを警戒する。




