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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第358話:エルマ

 フイィィーンシュパパパッ。

 チュートリアルルームにやって来た、が?


「あっ、いらっしゃいユーちゃん」

「んー? 珍しい取り合わせだね」


 おそらく新人さんだろう。

 知らない女の子がテストモンスターと戦っている。

 で、それを見つめるのがバエちゃんとピンクマンとゆー構図だ。


 バエちゃんはカツラさえ着けてりゃ美人だし、ピンクマンの顔は優にハンサムの部類にカテゴライズされる。

 一見美男美女の組み合わせだけど、残念ながらピンクマンのファッションセンスは壊滅的だし、かつ呪われしロリの国の住人でもある。

 この二人じゃどう頑張ってもラブい話にならないんだなあ。

 実につまらん。 


「ピンクマンは何しにチュートリアルルームに来たの?」

「ダンにノーコスト魔法の販売を聞いてな。スキルスクロールを買いに来たのだ」

「あ、もう新しい魔法が入ってたか。あたしも確認したかったんだ」


 ピンクマンは魔法を弾として込めて撃ち出す魔法銃の使い手だ。

 ノーコスト魔法の恩恵は大きかろう。

 早めにノーコスト魔法を販売できるよう手配してくれたシスター・テレサには感謝だな。


「今は何してるの?」

「可憐な少女が戦っているので、見物しているのだ」

「だろうなーと思ったよ」


 新人『アトラスの冒険者』であろうその少女は、ロリの国の変態紳士が注目するだけの容姿を持っていた。

 エルに敵視されない体形と言い換えてもいい。

 とゆーかこの子歳はいくつなんだろうな?

 成人してるように見えないんだけど、『アトラスの冒険者』の採用基準ってどーなってんだろ?


 バエちゃんが少女を鼓舞するように、努めて明るい声を出す。


「おめでとう! エルマさんの勝利です。これでチュートリアルは終了、新しい『地図の石板』が届き、転送魔法陣が出ますので、あとは実戦で頑張ってくださいね」

「あ、ありがとうございます」


 薄いグレーのナチュラルソバージュが汗でべったりと頭に張りついている。

 うーん、テストモンスターに勝ったといっても、やっとこさだぞ?

 次相当苦労するぞ?


「ピンクマンはどう思う?」

「厳しいな。幼気な少女が絶望するのは、小生見たくないのだが」

「あたしだって見たくないわ」


 新人が脱落すりゃバエちゃんの収入にも関わるんだろうしな?

 エルマと呼ばれたその少女があたしに気がつき、目を見開く。


「ひょっとして、精霊使いのユーラシアさん?」

「かの有名な精霊使いユーラシアだよ」

「わ、わたしユーラシアさんに憧れてるんです!」

「ヘロヘロじゃないか。休息は大事だよ。座って話を聞こうじゃないか」


 テストモンスターを片付けた後の地べたに皆が座り、バエちゃんが説明してくれる。


「『アトラスの冒険者』に女性ってほとんどいないでしょ?」

「ほとんどってゆーか、あたし以外にいないわ」


 アンセリみたいにパーティーメンバーにはいるし、塔の村の冒険者には女子が多いので気にしてなかったけど。


「やっぱり普通の女の子は『アトラスの冒険者』に選ばれましたって言われても、なかなか一歩を踏み出してくれないでしょう? だから男子を選ぶことが原則になってたの」

「……何だろう、普通の女の子じゃないってディスられてるような気がする」

「ユーラシアは普通の女の子じゃないだろう?」


 実に無神経な物言いだこと。

 ダンなら『あんたは普通の女の子じゃなくて超絶美少女だろう?』って言ってくれるのになー。

 ピンクマン、もうちょっと女の子には優しい言葉をかけようよ。

 サフランに見捨てられるぞ?


「ユーちゃんは最初から超レアの『精霊使い』含め、三つの固有能力持ちだったから特別よ? この前シスター・テレサと会ったでしょう? シスターがユーちゃんに感心して、女性も『アトラスの冒険者』に選定対象にすべきだって上層部に掛け合って、エルマさんが試験的に採用されたの」

「ええ? 他にも候補はいたんでしょ?」

「いたけど、これまで軽視されていた女性冒険者の復権を目指すぞって」


 ははあ、なるほど。

 微妙にあたしのせいということか。

 男女に関係なく、向いてる子をメンバーにすりゃいいのに。

 『アトラスの冒険者』の選定基準は、どーもピントがずれてる気がする。


「緑の民エルマ・ハニッシュと申します。アルハーン平原掃討戦の女傑、ドラゴンスレイヤーたるユーラシアさんにお会いできて光栄です!」

「緑の民って、髪の毛が緑の人ばかりじゃないんだねえ」

「族長の一族は鮮やかな緑ですけど、他はばらつきが大きいですよ。わたしのように全く緑の入らない髪色の者も結構います」


 ほう?

 とゆーことはラルフ君のあの鮮やかな緑髪は、緑の民族長の一族ってことか。

 ま、それはさておき。


「エルマはかなりレアな能力の持ち主みたいだけど?」

「『大器晩成』っていう、成長は遅いけどかなり多数のスキルを覚えるっていう固有能力なの。もう一つ『マジックポイント自動回復二%』を持ってるわ」


 バエちゃんの説明にピンクマンが呻く。

 おそらくあたしと同じように複数の固有能力持ちだから、女の子だけど『アトラスの冒険者』に選んだってことなのだろう。

 でもなあ。


 能力同士の相性は非常にいいのだが、現在の実力と釣り合っていない。

 テストモンスターに苦戦するのであれば、とっとと経験を積んでレベル上げてステータス値をマシマシにしたいところ。

 だがしかし、レベルアップが遅いとあっては最初の段階で躓く可能性が高い。


「どお? 見込みありそう?」


 バエちゃんも薄々ヤバいと感じてるんだろう。

 あたしに振ってくる。


「……ピンクマン、この子がどんなスキル覚えるか興味ない?」

「まことに興味深いな」


 よし、決まりだ。

 エルマに向き直る。


「あんた、冒険者は諦めなさい。向いてないから」

「「どうしてっ!」」


 バエちゃんとピンクマンの叫び声が重なる。


「いや、だってさっきのテストモンスターとの戦闘見たでしょ? しかも成長遅いんでしょ? 冒険者なんて苦行でしかないって。人間諦めも肝心だ」

「いや、理屈はわかるのだが……」

「シスター・テレサが責任取らされちゃうのおおおおおお!」

「バエちゃんは責任取らないのな? いや、あたしは『アトラスの冒険者』を辞めろなんて言ってないじゃん」

「「えっ!」」


 職業選択の成功失敗は一生がかかってるからね。

 ここは真摯に。

 そりゃ向いてる者を向いてる職業に就けるべき。

 むやみと女の子増やそうなんてのは違うと思う。

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