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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第352話:つまんないこと

「サイナスさん、こんばんはー」


 寝る前のヴィル通信だ。

 今日は雨だったから、カラーズでは大した話もないんだろうけど。


『うん、こんばんは』

「昨日植えつけ終わっててよかったねえ」

『いや、本当に』

「うちのダンテによると明日も雨なんだよね。でも塔の村はやむみたいだから、ちょっと様子見に行こうかなと思ってるんだ」

『そうか。タイミングがいいのか悪いのかわからんが、アレクが今、塔の村に行ってるんだ。泊りがけで』

「ははーん」

『何だろう、余計なこと言ったかな? すごく悪い予感がする』

「気のせいだよ。あたしはすごくいい予感がするもん」


 苦笑してるな?

 楽しみができたぞ。

 アレクとエルの恋模様ニヤニヤ。


「カラーズは何もなかった?」

『雨だったしな。店も休みだ。君も大人しくしてたのか?』

「海の女王にフェスの報告と、地上で帝国との戦争があることを話しといた」

『ん? 助太刀の依頼か?』

「援軍は頼めないな。代償にレイノスから外洋への航行権要求されたりしたら困るじゃん」

『ハハッ、困るな』


 女王はそんなこと言わないだろうけどな。

 何故なら地上と海底の交易が始まった今、移民がたくさん来てドーラのノーマル人消費人口が多くなることは、海の王国にとって嬉しい状況だから。

 とゆーかもしドーラが航行権を失って封鎖されたら、植民地としての意味すらなくなって戦争も起きないんだろうけど。

 考えてみりゃ色々面白いことはあり得るもんだ。


「魚買うばっかりになって、売れるものがあんまりないけどごめんねって言っといた」

『なるほどな。海の王国って何を欲しがってるんだい?』

「海の王国は塔の村と取り引きしてるんだよ。塔の村からは魔物肉とポーションを買ってるみたいだね。それからエルフや獣人との交易に魔宝玉を使うとか、武器や防具用に『逆鱗』欲しいとかって言ってたから、魔境行って取ってきたよ。魔境は雨じゃなかったから」

『『逆鱗』って、ドラゴンの顎の下に生えてる鱗のことだろ? 君そんなに簡単にドラゴン倒せるのか?』

「普通のドラゴンだったら大丈夫。今日一〇体倒したよ」

『ドラゴンも災難だなあ』


 アハハと笑い合う。

 人形系の魔物はもっと災難なんだよ。


『こっちは明日、隊商が来る予定だ。三回目だな』

「雨なのに御苦労さんだね」


 雨の日の注意点を学べる側面もあるか。

 道が雨でも大丈夫か、知る機会でもある。


「じゃあ、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 よしよし、ヴィルは喜んで仕事してくれるとてもいい子だ。

 またよーく可愛がってやらねば。

 明日は塔の村か。

 どうなってるだろうな?


          ◇


 ――――――――――七七日目。


 フイィィーンシュパパパッ。

 塔の村にやって来た。

 エルが海の王国に攻め込んだ時以来か。


「久しぶりだねえ。随分と人が多くなってる気がする」


 塔の村の知名度が高くなって、評判とかも伝わるようになってるんだろうな。

 ある程度の腕があれば、日銭を稼ぐのにはベストの場所だろうから。

 デス爺も村域広げることを考えて柵などを設置してないんだろう。

 この村は周りが比較的平らなので、広げる時も困んないわな。


「あっ、あんた、精霊使いユーラシア!」


 不意に声をかけられる。

 四人組だ。

 見覚えがあるような気がするが……。


「誰だったっけ?」

「以前、ここであんたに絡んで叩きのめされた……」

「ああ!」


 拳士、剣士、ヒーラー、魔法使いの四人パーティー。

 そういえばそんなんいた。

 どーでもいいことだったから記憶からこぼれ落ちてた。


「覚えてる覚えてる!」

「今『誰だったっけ?』って言われたばかりのような気がしたけど……」

「男の子はつまんないこと気にしちゃいけないよ。同じように女の子もつまんないことは忘れるもんだ」

「要するにつまんないことだから忘れられた、と?」


 合ってるけど。

 憮然とした顔すんな。


「……あんた、ドラゴンスレイヤーになったらしいじゃないか」

「おお、商人から聞いたぞ。何でもメンチ切ってきたレッドドラゴンが気に入らなかったからとか」


 どんだけ尾ひれついてんだ。

 気に入らなかったくらいでドラゴンと戦うほど、あたしは無分別じゃないわ。


「違うってば。あたし達も引けない状況だった。誇りとメンツを賭けた戦いだったんだ」

「じゃあ貴重なアイテムを踏み潰されそうだったからって噂が本当か」

「知ってんじゃないかよもー」


 皆で大笑い。


「君達も活躍できてるんでしょ?」


 この塔初心者にも向いてるし、情報も出回ってるはず。

 バランスのいいパーティーが苦戦することはないはずだ。

 パッと見、中級冒険者くらいにはレベル上がってるし。


「まあ……」

「ねえ……?」


 あれ、返答が微妙だね?


「オレ達、かなり頑張ってるつもりなんだ」

「うんうん、見ればわかる。全員レベル一五は超えてるよね」

「ああ、朝から晩まで潜って戦い尽くめでさ」

「でもやつらのほうがレベルアップが早いんだ」

「やつらって、エル達のこと?」


 四人が頷く。


「塔の村の精霊使いもそうだが、赤毛の魔女のパーティーも変なお嬢もだ」


 ははあ、レイカもリリーも頑張ってるみたいだな。

 しかし?


「おかしいな。レベルは低い人ほど上がりやすいでしょ?」

「だよな。しかし……」

「どんな魔物倒してる? 具体的に言うと、踊る人形をしっかり倒してる?」


 四人が顔を見合わせる。


「踊る人形は……倒せたことないな」

「うん。魔法が当たると吹っ飛ぶけど、ダメージが入らない」


 へー、人形系に魔法が当たると吹っ飛ぶんだ?

 そんなムダなことしたことなかったから知らなかったよ。


「結局逃げちゃうし」

「踊る人形もだけど、人形系レア魔物は経験値がすごく高いんだ。しかも絶対に魔宝玉をドロップするから儲かるの。あれ倒さないと冒険者やってる甲斐がない」


 あくまでも私見です。

 でもいずれ一般的な意見になるような気がしている。


「どうやって人形系を倒せばいいかわからないんだ」

「あれ? 塔の村では人形系の情報出回ってないの?」

「オレらあまり他の冒険者と話はしないから……」

「どーして!」


 情報を得ずして冒険者なんかやってられんだろーが!


「最初あんたらに鼻っ柱折られてから、ちょっと怖くて」

「何かごめん」


 責任を感じるじゃないか。

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