第342話:ボーナスアトラクション
結構魔物を倒したと思う。
大して長時間じゃなかったけど、お兄さんズのレベルも一五は上がってるんじゃないかな?
まずまず満足。
お兄さんズが口々に言う。
「普通はベースキャンプから遠く離れてレベル上げするものじゃないだろう?」
「経験値効率のいい魔物を倒そうと思うと、自然に北へ行きたくなるけどな?」
「だからと言って……」
「ダン君がユーラシアはデタラメだって言ってたわけがよくわかったよ」
「ダンは失礼なやつだよねえ」
「いや、失礼かそうでないかって話じゃないんだけど」
どーゆー話だったろ?
とりとめのない雑談をしながら、ベースキャンプまでの帰途に就く。
北辺は遠いので、長いこと戦っていられないしな。
実はクララの飛行魔法で行き来すりゃもっと早い。
しかし帰りも魔物狩り&アイテム採取していくのは、冒険者の心得でありマナーでありエチケットであるから。
注:北辺人形系多発地帯はあんまり素材を得られない。
「あ、マンティコアだ」
ドラゴン帯まで戻ってきたか。
あと半分くらいだな。
「ダンテ、『豊穣祈念』使って!」
「イエス、ボス」
まあ通常攻撃に毛の生えたよーな何かを食らったけど、結局『雑魚は往ね』で蹴散らしました。
どうだ? 『豊穣祈念』の効果が出たか?
「やたっ! 凄草ドロップしたぞー! 計算通りだ!」
「「えっ?」」
「すぐ食べて。魔力が抜けるとシナシナになってまずくなっちゃうんだ」
「わ、わかった」
ともにドロップ率の高くなるバトルスキル『豊穣祈念』とパワーカード『るんるん』の効果のおかげで、結構な確率でアイテムを落としていく。
取り決めで、薬草の類を手に入れたらお兄さん達のものなのだ。
ステータスアップ薬草の摂取でパラメーターを上げることを狙っているらしい。
向上心の高いお兄さんズは偉い。
「あ、甘い!」
「凄草って、こういう食感なのか!」
「すごくおいしいでしょ。でも根っこの味はふつーだから、スープの具か何かにした方がいいよ」
「お、おう」
マンティコアはおそらくレアドロップ枠で凄草を落とすことがあるが、マンティコア自体が割とレアなのであまり遭遇しない。
もうちょっと遭えれば、カカシの凄草畑をすぐに充実させることができるんだけどな。
あたしがゆーのも何だけど、物事そう簡単じゃない。
「帰ろう」
魔物を叩きのめしながら真っ直ぐベースキャンプへ。
「ただいまー」
オニオンさんが迎えてくれる。
「お帰りなさいませ。……キーンさん、ヤリスさんお疲れですね?」
「……何か色々常識が崩壊した」
「……大事なものを失った気分だ」
「大げさだよねえ?」
大事なもの(レベル)を得たでしょ?
オニオンさんが笑う。
「俺達が今まで魔境でやってたことは何だったんだ、という気にさせられたね」
「うむ。あっという間にドラゴンスレイヤーになり、レベルカンストする冒険者とはこういうものなのだとな」
「いや、あたしは運がいいだけなんだよ」
都合よく経験値の高い人形系魔物と出会うことができた。
で、人形系を倒せる手段を手に入れただけ。
「ハハハ、ユーラシアさんとの共闘はボーナスアトラクションと思えばいいですよ」
「ペコロスさん。あんたいつから達観してるんだ?」
「ワタクシ、ユーラシアさんのやることなすことは、一種の現象だと理解することにしたんです」
珍現象扱いだぞ?
せめてラッキーイベントと思ってくれないかなあ。
どの辺がラッキーかって、当然美少女が絡む部分だが。
「ちなみに現在の状態を一言で表すといかがです?」
「解脱」
「二階級特進」
ははあ、ちょっと面白い。
「以前共闘した時も驚いた、大したものだと思っていた。が、今日はまた理解のできない圧倒的な実力を見せられたな。素直に脱帽だ」
「褒めてくれるんだったら、『美少女』とか『可愛い』って言葉を使ってもらえないかなあ」
「……『化け物じみた』って言わなくてよかったよ」
「言ってるじゃんかよー」
皆で笑う。
和やかな雰囲気だ。
「レベルは……五六になった」
ギルドカードを確認した魔法使いヤリスさんが呟く。
うん、よしよし。
帝国軍ゲリラと遭遇戦になっても、おそらく圧倒できるだろう。
「あたし達が初めてドラゴン倒した時より上のレベルだよ」
「キーンさんもヤリスさんも、確か今日の戦闘で魔物一〇〇体を倒す魔境クリア条件を満たすのではなかったですか?」
「そうだね、するとボーナス経験値でレベル五七か」
剣士のキーンさんも感慨深げだ。
オニオンさんが聞いてくる
「ユーラシアさんから見てどうです? キーンさんヤリスさんのコンビでドラゴンに勝てそうですか?」
「キーンさんが『セルフプロデュース』を、ヤリスさんが『ハイヒール』を使えるならば、かなり優勢に戦えるでしょ。随分とステータスアップ薬草も食べてるみたいだし。でも安全策を取るなら、もういくつかレベル上げて、狙うドラゴンもきっちり決めればいいと思うよ」
レッドドラゴンは、こっちのステータスを下げてくる『カースドウインド』という嫌らしい技を使ってくるので、ハッキリ言って強い。
二人だとかなり厳しいんじゃないかな。
ソル君は持ってるスキルの関係であえてレッドドラゴンを標的にしたようだが、普通は初めて戦うんだったら他のドラゴンを選ぶのがいいと思う。
「ついにドラゴンを倒せるレベルなのか……」
「感慨深い?」
「俺達も大物っぽくなってきたね。それより君、レイノスのフィッシュフライフェスの仕掛け人なんだって? 新聞で見たよ。メチャクチャ話題になってるじゃないか」
「まよねえずっていう酢を使った調味料の講習会だったんだけど、何でかお祭りになっちゃったんだよ」
経緯を詳しく話す。
「ユーラシアさん、オルムス・ヤン副市長とも知り合いだったんですか?」
「いや、その時の打ち合わせで初めて会ったの。パラキアスさんはちょっと前から知ってたけど」
「ふうん、君は色々手を出してるんだなあ」
「不思議と多くの出来事に関わることになっちゃうんだよね。普段の心掛けがいいからだな。『アトラスの冒険者』になれて本当によかった」
『普段の心掛けがいい』のところは、笑うタイミングじゃないんだが?
「明日フェスだから楽しみなんだ。じゃ、あたし帰るね。さよならー」
転移の玉を起動して帰宅する。




