第341話:お兄さんズを仲間に引き入れる
フイィィーンシュパパパッ。
ほこら守りの村から帰還したあと、魔境にやって来た。
うちほどバタバタ動き回る……落ち着きのない……働き者のパーティーって、どうも他にはないみたいだな。
「オニオンさん、こんにちはー」
「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」
オニオンさんはタマネギ頭をした小男で、いろんな知識が豊富な魔境ガイドだ。
本名は何だったかな?
ちょっと思い出せないけど、まあどうでもいいことだ。
「魔境はいいねえ。心がささくれた時は魔境だよ」
「そんなのはユーラシアさんだけですけれども」
オニオンさんが笑う。
いや、あたしは大マジでそう思ってるけどな?
ドーラ一の観光名所でありリゾート地。
「ユーラシアさんはしょっちゅう魔境にいらしていただけてますが、次のクエストとかはどうなっていらっしゃるんです?」
「オニオンさんに言わなかったかな? ドリフターズギルド・セットっていう転送魔法陣になっててさ」
「ああ、はいはい。まだセットのクエストが続いていらっしゃるんですか」
「うん」
一々クエスト完了のアナウンスがあるけど、ドリフターズギルド・セット全体については何をもってお終いなのかわからん。
でも新しい『地図の石板』が来ないから、まだ続いてるんだろうなあ、としか。
「例の魔宝玉クエストもセットの一環で?」
「多分」
魔宝玉クエストはただの依頼所クエストの可能性もある。
でも最初請けた時の経緯がおかしかったしな?
おっぱいさんの反応も変だし。
おそらくセットの中の一つなのだろうとは思っている。
「もうかなりクエスト片付けたんだけど、あといくつセットになってるのか見当がつかないの」
「ははあ、ギルド関係の厄介事や、困難な依頼所クエストを全部振られてる可能性がありますねえ」
楽しいし、クエスト終わると達成感あるからいいんだけど。
クエスト完了時のボーナス経験値だけはもったいないと思う。
うちのパーティーはレベルカンストしてるから意味がないんだよな。
「ユーラシアさんに対する信頼の証ですよ」
自分で言って頷くオニオンさん。
石板クエストを振ってくれるのはおっぱいさんだろう。
おっぱいさんに信頼されてると思うと嬉しいな。
「魔境では何か変わったことあるかな?」
「特には。今日は剣士のキーンさんと魔法使いのヤリスさんがいらしてますよ」
バエちゃんに言い寄ってたあの二人か。
「ところであのお兄さん達はどっちが『アトラスの冒険者』なの?」
「二人ともですよ」
「あ、両方なんだ?」
『アトラスの冒険者』同士でつるんでるのか。
珍しいな。
「キーンさんとヤリスさんは、ほぼ同時期に『アトラスの冒険者』となったんです。最初はライバル同士だったのが後に互いを認め合い、行動をともにするようになったと聞いています」
「おお、熱いね!」
人に歴史あり。
あの二人は信頼できるから仲間に引き込もう。
帝国との戦いの事情を話しておくべし。
「行ってくる!」
「行ってらっしゃいませ」
ユーラシア隊出撃。
◇
「姐御、今日はどうしやす?」
「お兄さんズを見つけて共闘しよう。帝国戦が避けられないなら、信頼できる高レベル者が欲しい」
「パワーレベリングね?」
「うん、得意技。いやお家芸かな?」
自分で芸扱いするのも微妙な気分だ。
あの二人がいるとすると、あまりベースキャンプから離れていないオーガ帯に違いないが?
いたっ!
「おーい、お兄さん達ー!」
「やあ、精霊使いじゃないか」
「どうした、何か用か?」
「共闘しよっ!」
剣士と魔法使いの二人が顔を見合わせる。
「君達のわけのわからない……輝かしい実績は知っているよ」
「わけわからないゆーな」
「オレ達にとってはありがたいことではあるが」
「うん、君達にメリットがないだろう?」
「帝国と戦争になるんだ」
ズバッと言うと、二人が息を呑む。
「戦争の経過としては帝国艦隊とレイノスの砲撃戦がメインになると思う。でも帝国には海の一族の監視を抜けてドーラに上陸する技術があるんだ。小舟にしか応用できないけど、おそらくそれを使って西域とレイノスの間の流通を麻痺させにかかる。『アトラスの冒険者』は防衛のために西域に動員される」
「ちょっと待った! どうして君が防衛作戦を知ってるんだ?」
「パラキアスさんと情報交換してるの」
「『黒き先導者』か……」
魔法使いが呻く。
帝国軍工作兵が小舟で上陸するだろうという情報の入手については、パラキアスさん関係ないけどな。
「パラキアスさんは既に戦争があることを知ってる冒険者には伝えろって言ってたけど、西域って広いでしょ? 数が全然足りないんだよ。だから信頼できる冒険者には教えとこうと思って」
「要するに俺達の力を貸せってことだね? 君に信頼できる冒険者って言われるのは嬉しい。で、具体的にはどうしたらいい?」
「今日付き合ってよ。お兄さん達のレベルを一〇以上上げるから」
◇
「雑魚は往ねっ!」
よしよし、『逆鱗』は剥がしておかねば。
「レッドドラゴンって、あんなに簡単に倒せるものなんだな……」
剣士が呆けたような声で言う。
「最初苦労したけど、段々楽に倒せるようになったんだよ。でも経験値上げには人形系レア魔物を狩るのが早いけどね」
「遅早の問題……」
「ドラゴンって倒れる様が格好いいから、倒すとこ見せるのはアトラクションになんないかなあ?」
苦笑する二人。
「もう少し北へ行くよ。真ん中近くよりも人形系レアがよく出る場所があるんだ」
手当たり次第に魔物を倒しながら、急ぎ足で北辺西部へ。
「ほら、デカダンス三体いるでしょ? カモだよカモ。あたしあれ、真経験値君って呼んでるんだ」
「あ、ああ」
レッツファイッ!
実りある経験! 薙ぎ払い! よしオーケー!
「あっ、黄金皇珠二個ドロップだ。ラッキー!」
装備してる『るんるん』の効果で、『豊穣祈念』なしでも結構レアドロップがあるなー。
魔法使いが情けない声を上げる。
「……待ってくれ、自分のレベルがわからなくなった」
「よくあることだよ。あとで確認すればいいって」
「「ないよ!」」
「そお? あたし達とレベル上げすると皆わかんなくなるみたいだよ?」
複雑な顔してるなあ。
コブタ肉の魔法の葉包み食べた時の顔と表現すべきか。
「ほらほら、真経験値君二体だよ。時間がもったいないよ」




