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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第340話:語られぬ吉凶

 フイィィーンシュパパパッ。

 まばらに木が生えた森の中の、ポカッと開けたような集落に着く。

 ほこら守りの村はおとぎ話に登場する村のようなところだ。

 こういうところに住むのもいいなあ。


 ま、うちの子達は精霊だ。

 ノーマル人とは相性が悪いから、今みたいなポツンと一軒家がいいとはわかっちゃいるけど。


「こんにちはー」

「精霊使い殿、いらっしゃい」


 村長に挨拶する。


「これ、お土産でーす」

「ありがとうございます。なかなか肉は食べる機会がありませんでな」


 だろうね。

 おいしい魔物肉をいつでも狩れるあたし達が恵まれ過ぎているのだ。

 村長が続ける。


「精霊使い殿はドラゴンスレイヤーになられたそうではないですか」

「そーなの。あんまり褒められた経緯じゃなかったんだけど」

「何の何の。いや、お強いのは承知しておりましたが、可愛らしいのに素晴らしいです」

「うーん、『素晴らしく可愛らしいです』のほうが嬉しいかな」


 笑い合う。

 どうやらほこら守りの村には魔宝玉を欲張った件については伝わっていないようだ。

 いやでもここの村長は、他人の褒め方わかってるね。

 『可愛らしい』ときたもんだ。


 もっともこの前ほこら守りの村に来た時、あたしは既にドラゴンスレイヤーだった。

 でも情報の伝達速度なんてこんなもんだぞ?

 パラキアスさんみたいな、何でもすぐに知ってる人がおかしい。


「ところでここは、地理的にはドーラのどの辺に当たるのかな? あたし達いつも転送で来るからわかんなくって」

「大きい集落との位置関係ならば、カトマスの北西強歩四時間くらいになりますぞ」


 カトマスから比較的近いのか。

 強歩四時間なら、クララの全速『フライ』使えば数分で行けそうな気もする。

 カトマスに用事ができたら、ほこら守りの村から飛んでくのがいいな。


「変わったことはないかな?」

「平和でございます。気にかけてくださって嬉しいですな」

「うんうん、いいことだねえ。マーシャは今、御神体のところに行ってる?」

「この時間だとそうだと思います」

「マーシャにお土産持ってきたんだよ。いつも占ってもらってるから」


 青の民セレシアさんに作ってもらった、頭巾みたいな帽子を見せる。

 マーシャが被ったら可愛いだろうな。


「大分髪の毛も生えてきたと思うけど、これから冬で寒いからね。頭が風邪を引くといけない」

「とても喜ぶと思います」


 村長が破顔する。

 マーシャも村では大事にされてるんだなあ。


「ちょっと会ってくる。村長さん、さよならー」


 土地神様の碑を拝んでから参道へ。


「ここはいつ来ても厳粛な感じだよねえ」


 集落側とは森の密度が違うのだ。

 真っ直ぐ通った参道だけに陽の光が当たる。

 周りから浮き出たように目立つ参道は、否が応でも神秘的な雰囲気を醸し出す。


「ワンダーゾーンね」

「心が洗われる気がする」

「姐御は少し、心を洗うといいぜ」

「そうだねえ、っておいこら。今以上に心が奇麗になったらありがた過ぎるわ。祀られてしまうわ」


 クララも笑うな。

 まったく失礼な。


 門を潜ってほこらへ。

 静けさと重々しさのナイスマッチング。

 ここもいいところだ。


「こんにちはー」

「あっ、ゆーしゃさま!」


 マーシャが飛びついてくる。

 そーだ、どうも既視感があると思ったら、やることがヴィルに似てるんだ。


「リタも落ち着いてる?」

「ええ、今はとても平穏です」


 確かに少女霊リタはすごく安定して見える。

 神様が板に付いてきたというか。

 考えてみりゃあたしは神様と知り合いなのか。

 すげえ。


「マーシャにプレゼントがあるんだ」


 あの帽子を被せてやる。


「うんうん、可愛い。これから寒くなる季節だからね。それ被ってなさい」

「ゆーしゃさま、ありがとうございます!」


 よく似合ってるよ。

 さすがセレシアさん作。

 ちっちゃい子向けのギフトってのはセレシアさんの店に合ってるかもな。

 経営を梃入れせにゃいけなくなったら提案してみよ。


「リタは何か欲しいものはないの?」


 神霊が欲しがるものなんて見当つかないしな?


「いえ、今私はとても満たされておりますので」


 村人の信仰が厚いのだろう。

 いいことだ。


「マーシャ以外の人もちゃんと来てくれてる?」

「はい、でもマーシャ以外の人にプライベートを荒らされるのもちょっと……」


 おっと、微妙な問題ですね。

 霊験灼然なことが今以上に知れ渡って参拝客が多くなると、バカにならん問題になりそう。


「じゃ、ほこらの前に参拝用の何かを設置するのがいいかな?」

「いいですね。助かります」

「オーケー、村長に伝えとくよ」

「ありがとうございます」


 リタも嬉しそう。


「ゆーしゃさまはどうしましたか?」

「マーシャに占ってもらいたいな」

「はい、なにをうらないますか?」

「明日のレイノスのことと、それから一ヶ月くらいあとに大きな出来事があるかもしれないんだ。あたしがどうなるのか知りたい」

「はい、では、わたしをじっとみてください」


 マーシャをじっと見つめる。

 頭をくすぐるような魔力が心地よい。

 マーシャは何という固有能力の持ち主なんだろうか?


「こんなんでました!」


 マーシャが元気よく叫ぶ。


「あしたはだいだいきちです! のちのちまでかたりつがれるいちにちになります!」

「やたっ!」


 よーし、マーシャが言うなら大成功間違いないな。


「いっかげつくらいあとは……」


 マーシャの顔が曇る。


「……たいへんなたたかいになります。そらのてきにちゅうい!」

「空の敵?」


 どーゆーことだろう?

 飛ぶ敵ならクララの『フライ』があるから、あたし達が相手することはあるかもしれない。

 あっ、ひょっとして帝国の秘密兵器は空を飛ぶ?


「ありがとう、マーシャ」

「ゆーしゃさまのぜんとにさちあれっ!」

「じゃあ、あたし達は帰るよ」

「「さようなら」」


 村に戻って、リタの要求を村長に伝える。


「ははあ、プライベートですか。全然考えておりませんでしたな。わかりました。早速参拝所を用意いたしましょう」

「お願いしまーす」


 村長と別れる。

 さて、帰るとするか。

 クララがポツリと言う。


「一ヶ月後のこと、吉凶を話してくれませんでしたね」

「……うん」


 気付いてはいた。

 夢に出てきたおっぱい女神によれば、あたしが命を落とすかもしれない戦いだ。

 やはり簡単にはいかないらしい。


「ま、帰ろうか」


 転移の玉を起動し帰宅する。

 帝国戦まであと24日。

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