第338話:問題作
「交換レート表だよ」
新しく交換対象となったパワーカードは以下の通り。
『ライトスタッフ』【殴打】、攻撃力+一〇%、魔法力+一〇%
『天使の加護』HP再生一六%
『テンパランスチャーム』攻撃力/防御力/魔法力/魔法防御/敏捷性全て+五%、MP再生二%
『風林火山』攻撃力+二〇%、MP再生三%
『益荒男』攻撃力+四〇%、魔法力-一五%、敏捷性-一五%
上四つの交換ポイントは一〇〇、『益荒男』は一五〇ポイント限定一枚だ。
『風林火山』は、あたしの注文から交換対象のカードにレギュラー化したものだから、改めて特筆すべき点はない。
ラルフ君が魔法剣士に寄せるなら装備してもいいかもしれないな。
『ライトスタッフ』は本来後衛用のカードに攻撃属性をつけたようなタイプ。
うちのパーティーは完全に前衛後衛が分業だけど、某撲殺系ヒーラーなんかには持って来いのカードだと思う。
『天使の加護』は言うまでもなくヒットポイント自動回復全振りのカード。
『テンパランスチャーム』は『ボトムアッパー』と非常によく似ている。
各パラメーターの上昇値が小さい代わりに、マジックポイント自動回復がある。
この手のカードは魔法戦士が最も生かせるだろう。
「はい『益荒男』。問題作です。ヤバくない?」
「ヤバいですね」
「ヤバいな」
「ヤバいね」
「ヤバいぬ!」
今回はあたしがヴィルのセリフを再現してみた。
『益荒男』の何がヤバいってその攻撃力補正。
+四〇%は今まで最高だった『スコルピオ』の何と一〇%増し。
前衛盾役にあまり必要のない魔法力や敏捷性を削って、攻撃力を盛る意図はわかるが……。
「うちのパーティーでは使いづらいねえ」
「わかりやすぜ」
あたしが装備すると敏捷性のマイナス補正で、攻撃順がアトムと入れ替わりそう。
ウィッカーマンを倒す時、アトムの装備する『刷り込みの白』付属のスキル『コピー』を使用するのに、あたし~アトムの攻撃順が必須なのだ。
あたしが『雑魚は往ね』を使うなら、攻撃力+四〇%はそもそもオーバーキルで必要ない。
アトムが装備しても攻撃順がクララと入れ替わるんだよなあ。
となるとこの『益荒男』、魔宝玉ハンターのあたし達には必要ないカードということになる。
「メッチャ強いことは理解できるけれども」
「ヘビーアタッカーにはナイスなカードね」
「利用価値はありそうですけれど……」
「ヒットポイントが高くて物理しか効かねえ敵には必要かもしれねえ」
将来そーゆー魔物が出てきた時は欲しいかもしれないな。
「カードと交換していくかい?」
「いや、今はいいでーす」
ある程度交換ポイントの余裕が欲しいことも学んでいるしな。
「忙しそうだねえ」
ゼンさんもバタバタ動いてるしな?
「ま、アンタ達の活躍が原因であることは間違いないねえ」
「ごめんなさい」
「いやいや、働き甲斐があるんだよ。ありがとうよ」
職人としては自分の働きが認められるって嬉しいんだろうな。
「じゃ、あたし達帰るね」
「またおいで」
転移の玉を起動して帰宅する。
◇
「サイナスさん、聞こえる?」
寝る前、ヴィルを介した定例の通信だ。
『ああ、聞こえるよ』
「レイノスでセレシアさんに会ったよ。一人で帰ろうとしてたからさあ。緩衝地帯のショップまで送った」
『御苦労だったね』
「本当だよ。カラーズからレイノスまでの道、この前結構なレベルの盗賊が出たところなんだよ。魔物が出ないとも限らないし、危ないじゃんねえ?」
もっとも危険があるからこそ、優秀な輸送隊の出番があるわけだが。
「セレシアさんさ。空き店を貸してくれるイシュトバーンさんに服の注文もらったんだ。満足する出来だったら、イシュトバーンさんが店うまくいくよう手を貸してくれるって。服は数日で完成するって話だったから、サイナスさんのところへ持ってくると思う。そしたら取りに行くから教えて」
『ああ、わかったよ』
セレシアさんがイシュトバーンさんの要求に対してどんな回答を出してくるか、すごく楽しみなのだ。
「明後日の魚フライフェス、レイノスでもう大分話題になってるって、新聞記者が言ってたんだ。酢はどーんと売れるようになる。間違いない」
『好調な時ほど気を引き締めろよ?』
「うん、わかってる。調子のいい時ほど波に乗れだね」
『極めてユーラシアらしい文句に変換されてるなあ』
見逃してくれよお。
「カラーズでは何かあった?」
特にフェイさん何も言ってなかったけど。
『白の民の村が革を売れないかって言ってきてる』
「革? あ、そっか」
白の民は比較的大規模に酪農を行っている。
お肉などの食料は戦時にレイノスに送る協定をパラキアスさんと結んでいるため、現在カラーズ~レイノスの交易には参加していないが、考えてみれば食料品以外の物品もあるんだな。
「商人さんの息子に伝えておくよ」
『頼むぞ』
「うん。今日は以上かな? サイナスさん、おやすみなさい」
『ああ、おやすみ』
「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」
『はいだぬ!』
明日はお肉、マーシャ、ギルドってところか。
◇
――――――――――七四日目。
「カカシー、もう一二株だよ。増えたねえ」
「おう、そうだな。魔力量もオイラの管理にもまだ余裕がある。もっと増やせるぜ」
今日は凄草株分けの日だ。
畑番カカシの機嫌もいい。
「計算上四八株になると、四人が一日一株食ってもなくならねえ。永久に食い続けられることになるな!」
「本当だ! 大変なことだねえ。新鮮な凄草はすごく甘くておいしいんだよ。これ、毎朝食べることにしよーっと」
六日に一回株分けのパターンだからな。
もっとも凄草メインになると、他のステータスアップ薬草の場所を割り当てなければならなくなる。
そっちの栽培は止めて全部食べちゃうんだろうな。
今まであたし達のパワーアップに地味に貢献してきてくれたと思うと、ちょっぴり切ない。
「腐葉土用の落ち葉も、もう少し持ってこないといけないんだっけ?」
昨日、うちの子達がかなり運んできてくれていたがどうか?
「いや、十分だぜ? あればあるだけいいのは違いねえが」
「穴がえらく大きかったから、たくさん必要なのかと思った」
「ハハハ、サービスだぜ」
誰の何に対するサービスだ。
「さて、肉狩り行ってくるよ」
「おう、気をつけてな」




