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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第337話:人間っぽくない声

 セレシアさんを連れて帰宅。

 やはり我が家は落ち着く。


「ただいまー。ごめんね、イシュトバーンさん家で御飯食べてきちゃった」

「お邪魔します。いいところねえ」

「いいでしょ? ここ灰の民の村の南で、海に近い場所なんだ」


 セレシアさんが物珍しそうに畑やカカシを見ている。

 カカシが精霊だとは気付いていないようだが。

 ……カカシが喋ったら腰抜かすかな?


「じゃ、送ってくよ」

「お願いします」


 カラーズ緩衝地帯から掃討戦で得たクー川右岸までの道が完成している現在、あたしん家から青の民の村に行くなら、灰の民の村を経由せず行くのが早いが?

 まあ歩くより飛んでくべきだろ。


「クララ、いい機会だからあれ試そう。全速『フライ』」


 試験的に魔境内の移動で高速の飛行魔法を使ってみてはいる。

 ただし、まだクララの本気の飛行魔法を体験したことはない。

 せっかくのエンターテインメントだから、セレシアさんにも体験してもらおう。

 

「セレシアさん、青の民の村でいいのかな?」

「いえ、できれば緩衝地帯のショップへ連れていってくださる?」

「わかった、クララお願い」

「はい。フライ!」

「わわわわわわわわ?」


 フワッと皆の身体が三、四ヒロ浮かび、びゅーんとものすごいスピードで飛ぶ。

 セレシアさんが人間っぽくない声を出してるけど気にしない。

 この魔法、飛んでる最中ほとんど空気の流れを感じないんだよな。

 空気の繭に包まれてる感じ。


 あっという間に緩衝地帯へ。

 ほぼ中央に降り立つ。


「やっぱ速いな。一五秒くらいか」


 加速と減速の時間があるから最高速までは出なかったと、クララがこそっと教えてくれた。

 まだまだ上があるのか。

 魔境みたいな広いところの移動に使うのがよさそーだな。


「はあはあ、死ぬかと思った……」

「大げさだなー。セレシアさん、何語喋ってるんだかわからなかったよ。青の民のスラング?」

「悲鳴よ? 悲鳴だからね?」

「精霊使いユーラシアよ」


 黄の民のモヒカンの大男が声をかけてくる。


「あっ、フェイさん。こんにちはー」

「セレシア殿を送ってきたのか?」

「うん、セレシアさんはレイノスで借りた店舗の確認に行っててさ」

「うむ、そこまでは聞いていた」

「輸送隊と離れて一人で帰るとか言ってたんだよ。危ないじゃん?」


 フェイさんが頷く。


「輸送隊はどうだったか知らんか?」

「輸送隊にはあたし会ってないんだ。セレシアさん、わかる範囲で教えてよ」

「女の子が一人いたでしょう? 髪の毛を二つお団子に結っている。あの子が隊商の皆さんに色々質問したり、雰囲気良くしようと気を使ったりしてたわよ」


 インウェンだな。

 うまく立ち回って、仲を取り持つと同時に輸送における注意点などを教えてもらっているようだ。

 フェイさんが見込んでいるだけはある。


「心配なさそーだね」

「早期にものになりそうだな」

「何回か隊商について行く経験を踏ませたら、パワーレベリングしてカラーズの輸送隊単独で出すこと、ヨハンさんに提案してみてはどうかな?」

「うむ」

「セレシアさん、青の民からも輸送隊希望者出してよ。基本は兼業になるけど。黄の民だけだと弱点が偏るから、もし盗賊に弱みを突かれたりすると危ないんだ。多色構成なら輸送隊自体の透明性も上がるしね」

「わかったわ。希望者を募ってみる」


 セレシアさんも随分やる気になったね。

 店を見たのがよかったのだろうか?

 フェイさんが言う。


「灰の民からは人員を出してもらえんか?」

「どーだろ? 出したいのは山々なんだけど、今掃討戦でもらった土地の開墾に全力なんだよ。しかも固有能力持ちとなると……」


 元々灰の民は人口少ないのに、西への移住でさらに人減っちゃってるしな。

 戦時食料の関係で開墾の手を抜くわけにはいかない。

 畑からは人員を引き抜けない。


「ムリか」

「一人心当たりがないこともないんだ。でも本人の希望がわかんないな?」


 あたしの弟分アレクのことだ。

 輸送隊自体には関心を示さないだろうけど、レイノスには興味あるようなこと言ってたし、どうなんだろ?


「ユーラシアが誘っても難しいのか?」

「あれ? あたしの手腕にかかってるとなると、期待に応えざるを得ないね。やるだけやってみるよ」

「強いて出せということではないが、できればよろしくお願いする」

「うん、頑張ってみる」


 アレクはやらないことは絶対やらないけど、この件についてはアプローチのしようはある。


「あたしに用がある時はサイナスさんに言付けてね。セレシアさんも服できたら現物持ってきて値段知らせて」

「わかったわ」

「じゃ、帰るね。さいならー」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「アルアさーん、こんにちはー!」

「いらっしゃい。アンタは声が大きいからビックリするね」


 カラーズ干渉地帯から帰ったあと、魔境でまったりリラックスし、素材の換金にアルアさんのところへ来たのだ。

 ちなみに同行者はいつもと同じで、パワーカード大好き精霊アトム君。


「これお土産、コブタ肉だよ」

「おや、すまないね。まずは素材の換金でいいかい?」

「お願いしまーす」


 交換ポイントは三四三になった。

 結構素材を溜め込んでたものだ。

 最近は『逆鱗』や『巨人樫の幹』のような高価なレア素材もいくつか持ってきてるから、収入も結構なものになる。

 そろそろ元盗賊村の残りの黒妖石の台も買えるけど、冬越してからお金落とすのが、村のためになるかもしれない。

 まとまったおゼゼで何かしたいってこともあり得るから、何とも言えないけどな。


「アルアさん、これイシュトバーンさんからもらったパワーカードなんだ」


 『ファラオの呪い』と『るんるん』のカードを見せると、アルアさんが珍しそうに弄り回す。


「『るんるん』はアタシの婆様のカードだよ」

「やっぱそーか。名前も効果もおっかしいカードだなって思ってたんだよ。今魔境で高級魔宝玉集めしてるから、ドロップ率上がる効果はありがたいの」

「かかかっ。こっちの『ファラオの呪い』は婆様の兄弟子の手だね。パワーカードに状態異常付与を盛り込むことは、実はかなり難しいんだ。即死・麻痺・スタンの三つも付与するとは、大した技術だよ」


 ふーん。

 あたし達は使用者目線オンリーだけど、パワーカードは製作者の目で見ても面白そうだなあ。

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