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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第336話:家まで抱っこして連れてけ

 セレシアさんにアドバイスしろと言われても。

 一番どうにかするのが難しい商売の基本の一つ、店の立地は押さえたじゃん。

 仕入れはラルフ君パパの担当だろうし、これ以上どうすりゃいいんだ。

 セレシアさんのファッションセンスがレイノスでウケるかなんて知らん。


「あたし、ファッションのことはわかんないもん。イシュトバーンさんこそ、商人の立場から何かないの?」

「オレだってファッションのことはわからねえ、が……」


 が? 何かあるのか?


「美人の力にはなってやりてえじゃねえか」

「おお、ブレないね」


 さすがだね。

 でも自分とこの使用人に笑われてるぞ?


「まあファッションはともかく、基本はものがいいか悪いかだろ」

「ものはいいよ。あたしのこのチュニック、セレシアさんとこで買ったんだ。気に入ってる」

「ほう?」


 イシュトバーンさんがちょっと興味を示したようだ。


「あんたが乱暴に使って問題ないなら相当だな」

「でしょ? ってこら」


 失敬だな。

 まあ冒険者ユースに耐え得る服ではあるよ。


「じゃあ、客の要望に対する対応力はどうだ」

「さっきの注文、出してみる?」

「どういうことですの?」


 セレシアさんが聞いてくる。


「うちの女性従業員の服を作ってもらいてえんだ」

「はい、どういった具合にいたしましょうか?」

「扇情的な感じに」「「清楚な感じに!」」


 イシュトバーンさんとお付きの女性二人の声が被ってるやないけ。

 相反する要求にセレシアさんが困ってるぞ?

 いや、あたしに説明を求められても。


「……つまりイシュトバーンさんはえっちな目で女性を見たい。女性側は恥ずかしくない服を着たい。従業員だから動きやすい服じゃないといけない、ってことなんだけど。条件満たせそう?」

「ええ、そちらの女性二人の服でよろしかったかしら? 寸法いただきますね」


 あれ? セレシアさんかなり自信ありげだな。

 お付きの女性二人のサイズを測り始めると、イシュトバーンさんが話しかけてくる。


「おい、結構難儀な注文じゃなかったか?」

「難儀ってゆーかメチャクチャだったね。でもセレシアさんには何か腹案があるみたいだぞ?」

「腹案ってどんなだ? あんた別嬪さんが作る服の系統知ってるんだろ?」

「知らなくはないけど」


 おそらくエルの服、異世界の服みたいな機能的で目新しいファッションをベースにするんだとは思う。

 でもそれ以上のことは何もわからん。

 ここはお手並み拝見といこうじゃないか。


「では、村に帰って早速製作にかからせていただきますね。数日あれば十分完成いたしますので」

「いや、セレシアさんどうやって帰るつもりだったの? 確認したかったんだけど」

「当然歩いて」


 歩いてって、当たり前みたいにゆーな。

 隊商と一緒に来るのとはわけが違うんだぞ?


「一人は危ないってば。この前盗賊が出た道だし」

「と、言われても……」

「魔物が出ないとも限らないんだって。だからカラーズでも有志を募って輸送隊を作ろうとしてるんだぞ?」


 困り顔のセレシアさん。

 でも気持ちはわかる。

 一刻も早くこの店を見たかったんだろうな。


「今日はあたしが送ってくけど、今後一人は絶対にダメだからね」

「わかったわ」


 ちょっとはカラーズの外の世界の危険性を理解して欲しいもんだ。


「じゃ、あたしはセレシアさん連れてカラーズへ戻るよ。イシュトバーンさんは護衛の人におんぶしてもらって帰って」

「あっ、あんたそのつもりで護衛について来いって言ったんだな?」

「正解」

「ひでえじゃねえか、オレが男の背中で満足するとでも思うのか?」

「思わないけど仕方ないじゃん」


 歩いて帰れなんて言ってないんだから、ひどくはないわ。

 大体気付くのが遅いわ。

 レベルカンストのあたしが護衛要求した時点で察してよ。


「昼飯美味いやつ食わせてやるから、家まで抱っこして連れてけ」

「ありがとうございまーす! ゴチになりまーす!」


 何か笑ってるけど、使用人の教育なってなくない?


          ◇


「おいしかった。ごちそうさまっ! 大満足です!」

「おう、満足してもらえてよかったぜ」


 イシュトバーンさんの屋敷に戻り、腹一杯昼御飯をいただいてしまった。

 うちの子達も連れてくればよかったかなあ。


「すみません、ワタシまで御馳走になってしまって」


 セレシアさんが恐縮する。

 カラーズではほぼ食べられない、豪勢な食事だったしな。


「いいんだよ。エンターテインメントは提供してるからウィンウィン」

「間違っちゃいねえが、あんたが言うな。相方はオレじゃねえか。半分はオレで構成されてるエンターテインメントだぞ?」

「おお、芸人の自覚はあったんだねえ」

「職業選択の自由はどこ行った?」


 セレシアさんもイシュトバーンさんお付きの女性も護衛の人も笑う。

 楽しいなー。


「イシュトバーンさん家は広いことも広いんだけどさ。それ以上に和やかで居心地がいいねえ」

「あんたが来るようになってからだぜ?」


 んなことないでしょ。

 だってイシュトバーンさん芸人じゃん。


「じゃ、帰るね」

「おう、また来い。別嬪さんよ。あんたの作る服には期待してるぜ」

「あたしも見たいな。どんなんができてくるか楽しみでしょうがない」

「お任せください」


 余裕の笑みを浮かべるセレシアさん。

 自信満々だな。

 完成まで数日って言ってたから、おそらくあんまり凝ったことはしないと思うけど。


「セレシアさんが要求満たす服作ってきたら、イシュトバーンさんも出す店の力になってあげてよ」


 イシュトバーンさんが愛嬌のある丸い目を細め、口角を上げる。


「ファッションのことはわからねえし、商売に絶対はねえ。ただ、当てる可能性の高いやり方はなくもないんだぜ?」


 へー、さすがだな。


「オレの眼鏡にかなう服持ってきたら協力しようじゃねえか」

「やったね、チャンスだよ! この人こんなんだけど、影響力は大きいから」

「こんなん言うな」

「ええ、期待に沿えられるよう、努力いたしますわ」


 本当に落ち着き払っている。

 マジで任せとけっていうオーラを感じるな。


「イシュトバーンさん、じゃーねー。次はフェスの日に来るからね」

「おう、またな。今日も楽しかったぜ」


 わざわざエンターテインメントを提供しているわけじゃないが、喜んでもらえるのはあたしも嬉しい。

 ハッピーイコールピースなり。

 転移の玉を起動し帰宅する。

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