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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第333話:頼みがあるよ

「では師匠、失礼いたします」

「じゃあね。気をつけて」

「レイノスまでだから問題ないですよ」

「油断したやつが屍を晒すものなのだ」

「縁起でもないですよ!」


 アハハ、決して冗談でもないけどな。

 各店の料理人の皆とラルフ君達を見送る。

 ばいばーい。


「ソル君もアンセリも、手間かけさせちゃって悪かったねえ。あたしの弟子ラルフ君が不甲斐ないせいで」

「いえいえ。魚フライフェス、楽しそうじゃないですか」

「あたしが絡むと大事になるんだよ。どーしてだろ?」

「面倒なものを引き寄せてるとしか」


 アンがそこはかとなく失礼なことを言う。


「あたしも楽しみなんだ。結構焚きつけてきたから、各店目一杯工夫を凝らしてくると思う。絶対おいしいものが食べられるよ」

「二日後ですよね。オレ達もフェス行こうかな」

「ぜひ皆に参加を呼びかけてよ。外町中心にかなり盛り上がるはずなんだ」


 中町の上級市民にも楽しんでもらいたいものだ。

 いや、新聞が号外出すくらいフェスの周知に力入れてくれてるんだった。

 識字率高くて新聞読んでるだろう上級市民だって、興味を持つんじゃないかな。


「このフェスも、やはり何か目的が?」


 ソル君が探るような目付きで見つめてくる。

 ソル君はハンサムだなあ。

 初めて会った時は少年っぽいと思ったものだけど、もう一人前の冒険者の顔だ。


「……帝国には海の一族の監視を抜けてドーラに上陸する技術があるんだ。小舟に適用するのがせいぜいで、艦隊がどこにでも現れるっていうんじゃないんだけどね。ゲリラ部隊が密かに上陸して、西域~レイノス間の流通を壊される可能性が高い」


 アンセリは目を見張るが、ソル君はある程度予想していたようだ。

 というか、あたしの行動から見当つけたんだろうな。


「戦争始まると、レイノスで食べ物が足んなくなりそうなんだよね。だから今の内魚食に慣れておいてもらおうかと思って」

「だから魚フライフェスみたいな大掛かりな仕掛けを?」

「戦争だけが理由じゃないけど。海の王国との交易を推進することは経済を活性化させるし、亜人差別もなくしていきたいし」

「ユーラシアさん、すごい……」


 買いかぶり過ぎだよ。

 最初から狙ってたわけじゃない。


「いや、フェスはたまたまなんだ」

「と言うと?」

「昨晩話した通り、魚フライフェス開催が可能で、やるのがメリット大きい流れになったからやってしまえと。総督府行った時にパラキアスさんとオルムス副市長にも、レイノス市民に魚食に親しんでもらうため何かするってことは伝えて来たんだよ。でもこうなったからには、フェスを潰されるわけにはいかないんだよなー。できれば新聞記者捕まえて、もう少し煽っときたいけど」


 沈黙するソル君パーティーの三人。


「前、マウさんやピンクマン達と話してた時、帝国には何かの隠し玉があるから攻めてくるんだろうって言ってたでしょ?」

「不気味な予測だったから覚えてる」

「それがその、海の一族の監視を抜ける舟ですか?」

「どうやら違うんだ。別に存在していて、試作機が一ヶ月以内に完成するんだそーな。ただし正体が丸っきりわからない」


 ソル君が聞いてくる。


「試作機が一ヶ月以内に完成することがわかっているのに、正体が不明というのはどういうことでしょう?」

「あたしもハッキリしたこと言えないんだけど、情報源が本の世界のマスターなんだ。『全てを知る者』と言われている」

「『全てを知る者』……クエストで知り合ったんですね?」

「うん、とっても可愛い金髪人形だよ。彼女は記録とか本とかになってることは把握できるみたいなんだ。『全てを知る者』にして試作機が一ヶ月以内としか把握できないならば、公文書に残されている情報の断片がそれだけしかないんじゃないかな。かなり厳重に機密が守られていると思っていい」


 アンが言う。


「隠し玉に関してわたし達ができることはないんだな? ということは、西域防衛が任務になるのだろうか?」

「『アトラスの冒険者』の任務としては西域、特に街道の防衛になるって、パラキアスさんは言ってたけど……」


 うーん、ソル君はレベルも高いしできるやつだ。

 西域防衛なんて地味な役かな?

 もっとこう……。


「ソル君達は別の仕事を振られる気がするな? ただのカンだけど」

「ユーラシアさんのカン、当たるじゃないですか」

「当たるんだよね。最近また固有能力増えててさ。『閃き』っていうの。すごくカンがいいだって」

「もう驚かないですけれども」


 ソル君パーティーが苦笑する。


「ソル君達にはもっと重要な役割があるな。間違いない」

「オレ達にできることはありますか? レベルを上げておくこと以外に」

「頼みがあるよ。スキルハッカーの習得枠、あたしのために一つ空けておいてくれないかな。すごく重要なことのような気がするんだ」


 何でこんなことが口を突いて出てきたのかわからない。

 本当に思いつきでしかなかった。

 ソル君があたしを見つめる。


「わかりました。習得枠一つ、ユーラシアさん用に空けておきます」

「おお、決断が早いね。さすがソル君」


 ソル君パーティーがすっきりした顔になる。


「では、オレ達は行きます」

「戦争が思ったより早まりそうってのは頭置いといてね。それから明後日のフェスはうんと楽しもうぜ!」

「「「はい!」」」


 さてと、あたし達も帰ろ。


          ◇


「姐御、今日はこれからどうしやす?」


 一旦帰宅して小会議だ。

 アトムが聞いてくる。


「素材、結構溜まってきやしたぜ?」

「溜まってきたねえ。アルアさんとこも行かなきゃだし」

「塔の村の様子も見ておきたいです」

「肥溜めガールにフェスの成否を聞くといいね。プレゼントもあるね」

「むーん?」


 魔宝玉クエストに加えてカラーズ~レイノス間の交易開始、さらに魚フライフェスとやること盛りだくさんだ。

 どーしてあたしはこう忙しいのか。

 あれもこれも参加できるってことは素晴らしいけどな。


「よし、やっぱりセレシアさんが心配だから、あたしは今からレイノス行ってくる。あんた達は家でのんびりしててね。早く帰ってこられたら魔境とアルアさんとこ行こう。ほこら守りの村のマーシャには明日会いに行く。塔の村はフェス終わってから、デス爺に報告がてらだな」

「「「了解!」」」

「じゃ、行ってくるよ」

 暇よりも忙しいのがマシってのはありますね。

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