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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第330話:あたしの狂いなき眼よ万歳!

「ふいー、慣れないことは疲れるねえ」

「フェイクね。疲れてないね」

「ダンテ正解。これくらいではあたしを疲れさせるには至らないのだ。何故ならあたしは美しいから!」


 うちの子達が何だそれって顔してるけど。

 ま、あたしよりもあんた達の疲労度が心配だったのだ。

 人間が多かったからね。


 レイノスのまよねえず講習会から帰宅後、海の王国へ行って明日の分の魚を発注し、その後軽く魔境で稼いできた。

 パワーカード『るんるん』とバトルスキル『豊穣祈念』の戦闘中のアイテムドロップ・レアドロップ確率が増える効果は、どうやら加算されるっぽいということがわかったのは収穫だ。

 魔宝玉狩りが捗るな。

 大儲けの予感だ。


「魚フライフェスの言い出しっぺはあたしだから、賞品は出さないと申し訳ないね。優勝透輝珠三個、準優勝透輝珠二個、三位透輝珠一個でいいかな?」

「いいでやすねえ」


 不意にクララが聞いてくる。


「集会所の最後、逃げちゃったみたいに戻ってきましたが、あれでよかったんですか?」

「あたしばっかりが働くのは割に合わないよ。苦労は分かち合わないと」


 うちの子達は苦笑するが、あれはあれでいいのだ。

 ピンクマンもラルフ君も苦労してろ。


「ボス、そろそろ時間ね」

「よし、行こうか」


 ソル君がレッドドラゴンを倒してギルドに戻っている時間だろう。

 祝ってやらねば。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「ユーラシアさん、いらっしゃい。ソール君がドラゴン倒してきたんだよ」

「うん、オニオンさんに聞いた。お祝いに来たんだ。ところで『チャーミング』は一日一回限定なの?」

「あはは、どうぞ、チャーミングなユーラシアさん」


 ポロックさんがチャーミングって言ってくれないと、何だか物足りないからね。


「さてと……換金はまだいいか」


 食堂へ。

 もうソル君達はいるな。

 先行してたヴィルを可愛がってくれてる。


「おめでとう、ソル君。信じてたぞ」

「「「ユーラシアさん!」」」


 アンセリが飛びついてくる。

 あ、ヴィルも飛びついてきた。

 よしよし。


「ユーラシアさんのおかげです」

「実力だよ? 早いか遅いかだけの問題だったぞ?」


 ダンが話しかけてくる。


「カールとラルフ知らないか? あんた今日、一緒だったんだろ?」

「えーと、面倒ごと押しつけてきちゃった」


 こら、またかよみたいな目で見んな。


「レイノスで調味料作りの講習会だったんだよ。どーゆーわけか魚フライのフェスをやることになって、新聞記者に囲まれて逃げた」

「さっぱりわからねえ」

「嬢はまたおかしなことに巻き込まれておるの」

「理解してくれるのは、マウさんだけだなー」

「お、来た。答え合わせしようぜ」


 ピンクマンとラルフ君パーティーが到着した。

 ぷりぷり怒ってるじゃん。


「師匠、ひどいですよ!」

「ユーラシア、あれから大変だったんだぞ!」

「うん、どうなった? 皆にわかるように最初から説明してよ」


 まよねえずという調味料の講習と、それが魚のフライに合うこと。

 オルムス副市長の許可を取って、魚の購入ルートを確保したこと。

 イシュトバーンさんの了解を取りつけ、レイノスでの魚フライフェスの開催にこぎつけたこと。

 新聞記者に絡まれフェスの開催を公表したことを、ピンクマンとラルフ君が代わる代わる話す。


「……ユーラシアさんが最もハードワークなのでは?」


 セリカの言葉に皆が頷く。


「かもしれないが、あそこで逃げるのは無責任だろうが!」

「ラルフ君にならともかく、ピンクマンにそう言われるのは心外だなー」

「どういうことだ?」

「あたしがあの場に居続けたら、あたしばかりが喋る展開になって、薄っぺらくなるでしょーが。講習会の参加者皆が答えるからこそ、多角的で説得力のある、読み応えのあるフェスの記事になるんだぞ?」

「ユーラシアの言う通りかもしれんが……」

「もっとまずいのは精霊様騒動の話題を蒸し返されることでさ。それやられるとフェスの印象が消し飛ぶじゃん? あのタイミングであたしがいなくなるのが一番良かった」


 無言になるピンクマンとラルフ君。

 大体あの記者達の言い様が『犯人』だの『疑惑』だの『怪しげ』だの、好意的なとこなかったしな。

 あたしがあのまま居続けたら、精霊の批判から最悪魚人への反感を煽る展開に飛び火しかねなかったのだ。

 悪くするとフェス自体がパーになる。


「『適当にあしらえ』って言ったのはピンクマンだぞ? ああいう手合いは都合のいいように使えばいいよ。あの後、どうせフェス関係のことしか聞かれなかったでしょ?」

「……ああ」

「よーし計算通り! 明日の新聞楽しみだな。フェスの成功は間違いないよ!」

「あ、市内で町売りの号外が出てました」

「え?」


 ラルフ君が取り出した号外を広げる。


『精霊使いユーラシア氏が語る。妖姫の月一四日、イシュトバーン杯フィッシュフライフェスを開催! 各店が格安で魚のフライを提供。ナンバーワン店はどこだ?』


「……これだけなのか。なるほどわかるようでわからん。明日の新聞買いたくなる。こーゆー引きは参考になるなあ」

「ユーラシアの感想はどこかおかしい」

「明日の新聞はちゃんと『美少女精霊使い』に訂正されてるかなあ?」


 ようやくピンクマンとラルフ君パーティーにも笑顔が浮かぶ。


「ところでユーラシア」

「ん、何?」


 ダンはこういうところでいらんことを言うやつだ。


「ずっと喋ると薄っぺらくなるとか精霊様騒動を蒸し返されるとかってのは、今考えた理屈なんだろ?」

「当たり前だろーが」

「師匠ぉ!」


 アハハ、まあ怒るなよ。

 今考えたかそうでないかは全然重要じゃないんだ。


「どうでもいいことより、今日はソル君パーティーのめでたい日じゃないか。皆揃ったなら始めようよ。そうお腹が不平を鳴らしています」

「ただ腹が鳴ってるだけじゃないですか!」


 ラルフ君のツッコミは直球で好きだなあ。


「ユーラシア、乾杯の音頭取れよ」

「え、マウさんいるじゃん」


 大先輩がいるのにあたしが出しゃばっちゃ良くないでしょ。


「マウ爺の神経痛を悪化させるつもりか? 鬼だな」


 オーケー、あたしに任せなさい。


「ソル君とアンセリのドラゴン退治の功績を祝って乾杯! ソル君を見出したあたしの狂いなき眼よ万歳!」

「何だそれー!」


 楽しく騒がしい夜がすぐ近くまで訪れている。

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