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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第328話:イシュトバーン杯フィッシュフライフェス

 あたしの用は終わった。

 レイノスに魚を入れることができる。

 食堂や料理屋の皆さんには喜んでもらえるだろ。


「あたし達は帰るね。地図ありがとう!」

「うん、よろしく」


 部屋を出て赤プレートに話しかける。


「ヴィル、聞こえる?」

『聞こえるぬ!』

「ピンクマンに繋いでくれる?」

『わかったぬ!』

『どうなった?』

「レイノス港は使えないけど、ギルドから真っ直ぐ南へ行ったあたりの海岸に、天然の良港があるんだって。そこから魚を水揚げして、レイノスに運べばいいってことになった」

『魚の供給は可能ということだな?』

「うん、詳しいことは戻ってから説明するよ。ヴィルもありがとうね」

『どういたしましてぬ!』


 よし、戻ろう。


「帰りも『フライ』よろしく」

「はい」


 総督府の建物を出たところでクララの『フライ』。

 ……さっきよりも人が集まってるような気がするけど、見なかったことにする。

 精霊様騒動についてカミングアウトしときゃいいだろうって?

 魚の取り引き開始についての報告が先だわ。

 講習会の行われていた集会所へ。


「ただいまー」


 皆を集めて地図を広げ、早速説明する。


「……ここで陸に揚げて、レイノスに運べってことなんだ」


 ピンクマンが質問する。


「海の王国から魚はどうやって持ってくるんだ?」

「わかんないけど多分クジラ船かなあ?」

「クジラ船?」


 伝わんないか。

 そりゃそうだ。


「訓練されたクジラなんだけど、口から乗り込む船みたいなもんなの。海の王国では輸送とか運搬に使ってるんだってさ。前あたしん家の近くの海岸で見た時は砂浜だから岸まで来れなくて、小舟でクジラ船まで行かなきゃだったんだ。地図のここだと岸まで来られるのかな?」


 ピンクマンが答える。


「図体が大きいということだな? どれほどの大きさなのかにもよるが、おそらく大丈夫だろう。というかここでダメならレイノス港でも入れない」


 そーなんだ?

 ピンクマンは地形まで知ってるのか。

 ほんとに博識で頼りになるなあ。


「よーし、イベントやろう!」

「「「「イベント?」」」」


 もうタメ口でいいだろ。

 今日は丁寧語使い過ぎて口が疲れたわ。


「魚のフライおいしかったでしょ? でも、やっぱりメニューに載せておいても、食べつけないものは注文してもらえないんだよ」


 あちこちで頷いてる人がいる。


「徐々に広めるなんて悠長なことは嫌いなので、祭りで魚は美味いんだってことをいっぺんにレイノス市民に周知させるよ。いいね?」

「おお? そんなことができるのかよ」

「やり方次第で可能だね。とゆーか魚フライの美味さを市民に知らしめないと、皆さんが儲かんないぞ? 協力して」


 ハハッ、ちょっと真面目に聞く気になったらしい。

 魚食が一般的になれば、戦時の食料不足解消の一手段になり得る。

 レイノス市民達にとっても利益だよ。

 ウィンウィンだ!


「イベントか。面白そうだな」

「新メニューが最初から売れるのは歓迎だ」


 ラルフ君パパが聞いてくる。


「具体的にはどのように?」

「今日参加してる皆さんの店で、五ゴールドの魚料理を提供してもらう」

「えっ? 五ゴールド?」

「随分と半端な値段だな……」


 ざわめく参加者達。


「各店でちょこっとずつ料理を食べてもらって、どの店が一番売れたか、ナンバーワンを決めるイベントだよ!」

「おっ、なるほど!」

「だから五ゴールドなのか!」

「血が騒ぐぜ!」


 ふっふっふっ、納得したようだね。

 競争になれば皆やる気出るだろ。


「ヒント出しまーす。店の中で一品料理出すより、数売れるのはテイクアウトだよ。それからありきたりのよりも特徴があった方がいい」

「「「「特徴?」」」」

「例えば魚の種類。今日でも最初の魚と、あとで皆におろしてもらった魚とで味が違ったでしょ? まよねえずでもカラシや果汁、みじん切りタマネギなんかを加えると雰囲気変わるよ。揚げたままがいいのか切った断面を見せた方がいいのか。揚げる油の種類はどうか。あるいは揚げたあと、何かに漬け込んでもおいしいかもしれない」


 考えてる考えてる。


「ルール決めまーす。法律に反する行為、商道徳に悖る行為は論外。フェス用の料理は一店につき一品のみ、必ず揚げた魚を使ってください。まよねえずは必ずしも使わなくてもいいけど、おいしいし目新しいので、使えば有利になると思うよ。儲け度外視でゴージャスなやつ出すとかはなし。必ず五ゴールドで儲けが出るようにね」


 皆が頷く。


「で、魚フライのイベントはいつやるんですか?」

「ダンテ、天気は?」

「四日後からレインね」

「じゃあ三日後」

「「「「「「「「三日後!」」」」」」」」


 ビックリするんじゃない。

 こーゆーのはホットな内にやるもんなんだよ。

 ヴィルを飛ばす。


「条件は皆一緒だから、時間がないなんて泣き言は聞かないよ」

「早過ぎるが……」

「三日後か。いや、魚さえ手に入るなら何とか」


 赤プレートに反応がある。


『御主人、聞こえるかぬ?』

「聞こえるよ。ありがとうね」

『代わるぬ』

「イシュトバーンさん?」


 イシュトバーンさんの名が出てぎょっとする参加者一同。

 ハハッ、ビッグネームは効果あるなあ。


『おう精霊使い、面白いことか?』

「面白いことだよ。レイノスの協力してくれる飲食店と、魚の揚げ物のイベントやるんだ。各協力店で五ゴールドの魚フライを売ってさ。どこの店が一番売れたか競うの」

『魚のフライは食ったことねえな。美味いのか?』

「今こっちに飲食店の皆さんがいるんだけど、最初おっかなびっくり口にしてたのが、最終的に魚どーにかして仕入れろって言い出すくらいにはおいしいよ」

『ほお、大したもんだな』

「だからこの際祭りにして、レイノスの人達に魚は美味いってことを知らせようってなったの」

『よし、わかった。いつだ。オレは何をしたらいい?』

「三日後だよ。イシュトバーンさんには名前を貸してもらいたいの。やっぱ大物の名前を冠してると盛り上がるからさあ」

『おう、構わねえぞ』

「ありがとう。あとで詳しい人に説明行ってもらうよ。で、三日後には『イシュトバーン杯フィッシュフライフェス』開催で迎えに行く」

『楽しみにしてるぜ』

「じゃーねー。ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 これでよし、と。

 あれ? 皆さん声が出てないけどどーした?

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