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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第327話:『西域の王』という存在

 さて、ドーラ総督府へ行ってくるか。

 副市長オルムスさんが、美少女精霊使いの訪問を待ち焦がれているみたいだから。

 ヴィルがでっかい建物って言ってたけど、どこにあるんだか知らないな。

 港のほう?


「総督府ってどこにあるんだったっけ?」

「近いですよ。北へ行ってすぐにある階段を昇ると中町ですが、そのまま真直ぐ突き当たりにある大きな建物です」

「ありがとう、行ってきまーす!」

「頑張れよ!」


 何を頑張るんだか。

 海の王国との交易を実現させるための許可を出すのはあたしじゃないわ。

 外へ出てクララに言う。


「歩いてて絡まれると面倒だから飛んで行こう。この際目立っても構わない」

「わかりました。フライ!」


 びゅーんと飛んで総督府のある方向へ。

 すげー指差されてたけど、知らんよもう。

 考えるだけ時間のムダだ。

 レイノスの港側に来たのは初めてだな。

 おお、確かに立派な建物がある。

 フワリと着地して、受付のお姉さんに話しかける。


「こんにちはー。精霊使いユーラシアとうちの子達だよ。副市長に呼ばれたんだ」

「は、はい。話は伺っております。こちらへどうぞ」


 まあ精霊連れなんで、あたしの身分を疑う余地もないのだろう。

 とゆーか飛んできたからビックリしたのかな?

 受付のお姉さんの一人に案内される。

 そして『副市長室』のプレートの張られている二階の奥の部屋へ。


「副市長、精霊使いユーラシア様をお連れしました」

「通してくれ」


 広い部屋に通される。


「こんにちはー」

「早かったね」

「今日うちの子達連れてるから、飛行魔法で来たんだ。市民に絡まれるのが嫌で」


 頷く部屋の中にいた二人。

 パラキアスさんと、もう一人が……。


「彼がオルムス・ヤン。レイノス副市長だ。何か感想あるかな?」

「女の人にすごくモテそう」


 雰囲気が和やかになる。

 色が黒くてがっしりした、いかにも旅人風のパラキアスさんに比べ、オルムスさんはグレーの髪をピシっと固め、帝国風スーツに身を包んだ長身の男だ。

 あんまりドーラ人っぽくない。


「君が評判の精霊使いユーラシアか。会いたかったよ」

「え、いい評判かな? 悪い評判かな?」

「とってもチャーミングだって」

「その評判、副市長権限で大いに広めといてちょうだいよ」


 笑いのあと、オルムスさんが話す。


「海の王国から魚を仕入れたいということだったね」

「うん。カラーズ産の酢の販促講習会をやって、参加者の皆さんに魚のフライを食べさせたんだ。そしたら魚の仕入れどうにかしろって話になっちゃった。あたしも予想外だった」


 何故? って顔を二人がしてるけど、ありのまま起こったことなんだってば。

 あ、どーして冒険者のあたしが、酢だの魚フライだのに関わってるんだとゆー疑問かな?

 成り行きだよ。

 エンターテインメントに身を任せていただけ。


「結論から言うと、レイノス港の使用許可は迂闊に出せないんだ。海の一族の入港をどこまで認めるかの問題がある。船団長オリオンのいないところでは議論さえできない」

「要するに魚さえレイノスに運べればいいんだろう? レイノスの西強歩二〇分、ドリフターズギルドの真南に当たる海岸に天然の良港がある。そこに水揚げして陸路で運べばいい」


 都合のいい場所だな。

 もし帝国艦隊にレイノス港が封鎖されても使えるじゃないか。

 パラキアスさんがニッと笑顔を見せる。


「地図だとここ」


 オルムスさんが地図を持ってきてくれた。


「この地図はあげるから、打ち合わせに使って」

「ありがとう、助かるよ!」

「助かるのはこっちだ。戦時の食料のことも考えてくれてるんだろう?」


 やっぱこの二人は感付いてるわ。

 あたしは頷く。


「机上の空論かなーと思ってたけど、こうポンポン話進めてくれるならあたしもやり甲斐があるよ」


 オルムスさんは心配そうだ。


「しかし、魚は一般に馴染みがない食材だろう? 大丈夫かな?」

「その辺はどうにでもなるよ。任せて!」


 パラキアスさんが面白そうにこちらを見る。


「精霊使いがここまで言うんだ。問題ないのだろう。が……」


 えらく真剣な表情に変わったね。


「戦時のレイノスへの食糧供給、君はどう見る?」

「カラーズと『オーランファーム』は大丈夫。他のレイノス近郊は危ないかもしれない。西域が丸っきりわかんないねえ。西域街道を引っ掻き回されると、魚を計算に入れたとしても食べ物足りなくなるかな」


 オルムスさんが意外そうだ。


「ほう、『オーランファーム』は大丈夫なのかい?」

「あそこの息子が『アトラスの冒険者』になったんだよ。その頼みでファームの従業員の固有能力持ちをパワーレベリングしたの。オーランファームにはレベル四〇以上が七人いるんだ」

「「えっ?」」

「装備とか実戦の立ち回りがこれからなんだけど、『オーランファーム』の息子は帝国戦があることを知ってる。間に合わせると思うよ」


 オルムスさんが唖然としてるし、パラキアスさんは含み笑いしてる。


「やはり君は自由に動いてくれるといいな。思ってる以上の結果を出してくれる。これからも任せるよ。適当にやってくれ」

「はーい」

「ということは、重要なのはやはり西域か。『アトラスの冒険者』は西域の街道防衛が任務となる」


 うん、予想通りだ。


「『アトラスの冒険者』は戦争があることを知ってる者も多いんだろう? 君が信頼する冒険者には話しておいてくれよ」

「りょーかいでーす」

「私はバルバロスを説得してくる」


 パワーナインの一人、『西域の王』バルバロスさんか。


「バルバロスさんってどんな人なの?」

「「鬼だ」」


 おおう、予想外のワードで声が揃ったぞ?

 怖い人? 厳しい人?


「頑固で他人の言うことを聞こうとしない。君に似たタイプなのかもしれないが……」


 ナチュラルに失敬だな。


「問題は西域に関する彼の価値観が独特だってことだな。最悪でも、帝国に味方することだけは止めさせないと」

「帝国に味方? そんなヤバい人なん?」


 オルムスさんが口をへの字に曲げる。


「ヤバいってことならパラキアスもペペちゃんもマルーの婆さんもヤバい。というか、今ドーラで一番ヤバいのは精霊使いユーラシアだろうけど……」


 マジで失敬だな。


「ヤバいの方向性がね。相容れないというか迷惑千万というか」

「ふーん」


 とりあえずあたしは関係なさそうだから、パラキアスさん苦労してろ。

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