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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第326話:魚フライ

 ポテトフライの評価が高い、ここまでは良し。

 しかしまよねえずのポテンシャルがこの程度のものと思ってもらっては困る。

 ここで戦略食材である魚の投入だ。


「ポテトサラダはおいしいですけれども、所詮付け合せに過ぎません。メインとして自信を持ってオススメできるのはこちら、魚のフライでーす」

「「「「魚?」」」」


 怪訝な表情を浮かべる参加者達。

 だろうね。

 レイノスでも魚を常食しているのは船乗りくらい。

 食べ方も生か塩焼きがせいぜいらしい。

 しかし食べられていないこととおいしさとは関係がないのだ。

 揚げたてホクホクの魚フライを、講習会参加者の前に差し出す。


「精霊使いを信じて食べてみてくださいな。損はさせませんよ」


 恐る恐る一人がシイラのフライに手をつけ、まよねえずを塗って口に運ぶ。

 もぐもぐ。

 ハハッ、表情が変わった。


「……一個じゃわからん、もう一つ」

「独り占めはダメですよ。皆さん、どうしました? なくなっちゃいますよー?」


 皆が一斉に食べ始める。


「あっ、こりゃ美味い!」

「臭みなんて全くないじゃないか!」

「肉よりずっと食感が軽いな。サクサクして食べやすい」

「女性にウケるぞ」


 いつの間にかラルフ君パーティーやラルフ君パパママも食べている。

 ピンクマンやサフランもお気に召したようだ。

 結構デカいシイラだったのに、あっという間になくなったな。

 皆の表情見る限り、食べてみて受けつけないって人は一人もいないようだ。

 イコール魚フライは万人ウケすると見ていい。

 これならイケる! 


「いかがです? おいしいでしょう?」

「とても。ビックリしました!」

「これは素晴らしいですな。うちでも導入したいです」


 ハハッ、大ウケじゃねーか。

 魚はレイノスで流行るべきなのだ。

 もう少し煽ったろ。


「実はこの魚のフライ、西の果て塔の村では既に人気料理となっていまーす。でも向こうにまよねえずはありませんので、こっちもレイノス独自の魚フライをウリにできますよ。お肉に比べれば安く仕入れることができます。利幅も大きくなるでしょう」


 どっと沸き立つ参加者達。


「さて、魚の捌き方は独特です。今日参加してくれた皆さん達だけに伝授しましょう」


 今の内に技術を習得しといてちょうだい。

 小魚を配ってクララの三枚おろし講座の開始!


          ◇


「どうです? 骨までおいしいでしょう?」


 皆に魚のおろし方を教え、さらにその身と骨を揚げて試食した。

 何か最後はまよねえず関係なくなっちゃったが、別に支障ないだろう。

 まよねえずとの合わせ技が強力なのは証明済みだしな。

 参加者の一人が言う。


「これは大ヒット間違いねえな。魚はどこで仕入れりゃいいんだい?」

「塔の村では海の王国から仕入れています。海の王国は地上との交易に積極的で、もちろん支払いは地上のゴールドで可能でーす。レイノスでも当局が港を交易用に許可してくれれば、すぐに仕入れが可能になると思いまーす」

「今すぐじゃねえのか……」


 あ、テンション下がっちゃった。

 取り引き相手が魚人になるってところが問題になると思ってたんだけど、そーでもないのかな?

 中町住人の上級市民以外は、さほど亜人にも抵抗がない?


「商機なのに、無念だな」

「うむ、仕方ない。待つしかないのか……」


 ラルフ君パパが話しかけてくる。


「ユーラシアさん、どうにかなりませんかな?」

「いや、どーにかって言われても……」


 魚フライまよねえずがけを食わしたろってのも、こんなものが可能だよという思いつきだった。

 そもそもレイノスに魚導入するのは時期尚早だって考えてたから、これほど皆さんが前向きになってくれるのは完全に予想外だったよ。


 でもなー、港湾の使用許可のいる魚人との交易なんて、偉い人に申請出してそれが通って初めて可能になるんじゃないの?

 いきなりどうにかしろって無茶振りが過ぎるだろ。


「あーあ、残念残念」

「魚さえあればいくらでも酢買えるのによ」

「惜っしいよなー」


 おいこら、どーしてあたしが煽られる立場になってるんだ。

 美少女精霊使いだってできることとできないことがあるんだぞ?


「ユーラシア、精霊様騒動の時は副市長の許可がすぐ出たんだろう? 港湾はオリオン・カーツ船団長の管轄だが、船団長は副市長とツーカーだ。何とかならんか?」

「ピンクマンまで無茶言うなあ」


 何かサフランも祈るような目付きだし、しょーがないなー。

 うまくいかなくても怒るなよ?

 赤プレートを取り出して話しかける。


「ヴィル、聞こえる?」

『聞こえるぬ!』

「パラキアスさんって、もうレイノスに入ったかなあ?」

『レイノスにいるぬ。ちょうど今わっちが見てたところだぬよ。この前の大きな役所の同じ部屋ぬ』

「しめた! オルムスさんもいるね? パラキアスさんに繋いでくれる?」

『わかったぬ!』


 しばらくの後。


『パラキアスだ。オルムスもいるが構わないな?』

「とゆーか、オルムスさんに用があるんだよ」


 かくかくしかじか。

 魚を魚人から買いたいどうのこうの


『ははあ、港湾の使用許可は難しいが、いい返事はできると思うぞ。今レイノスにいるんだろう? オルムスが君に会いたがってるから、ドーラ総督府まで来てくれないか?』

「りょーかいでーす、すぐ行きまーす。ヴィル、ありがとうね、ここへ来てくれる?」

『了解だぬ!』


 ふー。

 おお? 周りの皆さんが固唾を呑んでるやんけ。


「どうだ?」

「オルムス副市長に呼ばれたから総督府行ってくる」

「「「「「「「「おー!」」」」」」」」


 どっと沸く参加者一堂。

 そこへ幼女悪魔が何もない空間から現れる。


「ヴィル参上ぬ!」

「百獣の王のポーズ!」

「がーおーぬ!」

「はーい皆さん注目! この子はうちの連絡係を務めている悪魔です。とてもいい子ですので、可愛がってあげてください」


 可愛い悪魔だな? との声。

 どよめきが聞こえる。

 あたしだってここでヴィルまで披露する気はなかったが仕方ない。

 今日はハプニングがあるような気がしてたしな。

 今日『は』じゃなくて今日『も』か。


「オルムス・ヤン副市長と話がつき次第、ヴィルに連絡を入れますので、皆さんここでしばらくお待ちください」


 ヴィルに指示する。


「あとで連絡するから、内容を皆に伝えてね。それまでここで待機、ピンクマンやラルフ君に遊んでもらっていなさい」

「わかったぬ!」

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