第322話:いきなりクエスト
クエストとなれば真剣にこなすよ。
あたしは可愛くて根が真面目にできているから。
本当だわ、可愛いことに疑う余地はないわ。
イシュトバーンさんったら、またあたしをえっちな目で見て。
「何をすればいいかな?」
「おう、パラキアス知ってるだろ? 『黒き先導者』だ。あいつと会って話をしたい。ただやつはいつもほっつき歩いていやがるんでな。連絡取るのさえ至難の業なんだ。何とかならねえか?」
「なるよ。ヴィル、パラキアスさん見つけてくれる?」
「わかったぬ! 行ってくるぬ!」
ヴィルの姿が消え、あたしは赤プレートを手に持って待つ。
イシュトバーンさんは何か言いたそうだが、例のえっちな視線をこっちに向けるだけでニヤニヤしている。
その目はセクハラだぞ。
わかってる?
『見つけたぬ! カトマスからレイノスへの道の途中だぬ!』
「よーし、ヴィル偉い! こっちから話しかけても大丈夫そう?」
『一人で歩いてるから大丈夫と思うぬ』
「じゃ、話しかけてくれる?」
『了解だぬ!』
しばし待つ。
『パラキアスだ。ユーラシアだな?』
「そうそう、曇りなき美少女精霊使いのあたし」
『何か用か?』
「今あたしレイノスにいるんだけど、元商人のイシュトバーンさんが、パラキアスさんと連絡取りたいって言うんだ」
『イシュトバーン殿が? そちらにいるなら代わってくれ』
「りょーかいでーす」
イシュトバーンさんに赤プレートを渡す。
「おう、オレだ。あんたとこんなに簡単にコンタクトできるなんてな、目が点になってるところだぜ。どうなってんだ、この精霊使い?」
『ハハッ、興味深いですよね』
「面白過ぎるぜ。ま、それはさておき、あんたに一つ用ができた」
『ほう、イシュトバーン殿が私に用ですか? 珍しいことですが』
「精霊使い本人も愉快極まりねえんだけどよ。とにかくあんたと会って話をしてえんだ。いつこっちへ来られる?」
『ちょうどいい。現在レイノスに向かってるところですので、明日の夜にでもお宅へ伺いましょう』
「すまんな。待ってるぜ」
イシュトバーンさんがあたしに赤プレートを戻す。
「パラキアスさん、じゃーねー」
『ああ、またな』
「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」
『はいだぬ!』
赤プレートをしまう。
「依頼完了!」
「ビックリするほど便利だな、あの幼女悪魔」
「いい子でしょ? パラキアスさんはパワーが強いから見つけやすいんだって」
「ほう、パワーってことはレベルか?」
「どうなんだろ? ヴィルがパワーって言い方をするんだよね。レベルなのかステータスパラメーターなのか、正確なところはわかんないけど」
ヴィルが対象の相手を見つけて、その人と連絡を取れるということが大事なのだ。
どーゆー手段かはどうでもいい。
実際あたし達の行動範囲が増え、やるべきことが多くなってくるに連れ、ヴィルの重要性が増してきている。
ヴィル偉い。
「もうあの幼女悪魔は戻ってこねえのか?」
「今日はね。いつも適当にあちこちをチェックしてもらったりしてるんだ」
「放し飼いかよ」
笑うイシュトバーンさん。
ヴィルと知り合った時よりもあたしのレベルは格段に上がっている。
もうヴィルが虐められてる時にあたしが助けてやれないことはないと思うから、もう少しあちこち連れていってやってもいいかもしれないな。
一方で帝国と戦争になる。
あたしがヴィルを連絡係として自由に使えるという情報は、帝国に与えるべきじゃないのかもしれない。
考え過ぎだろうか?
「おい、アレを」
イシュトバーンさんが指示を出す。
するとお付きの女性が、肩幅くらいの大きさである程度の厚さのある何かを持って来た。
文箱かな?
「一昨日の詫びと今日の依頼料だ。開けてみてくれ」
「何だろ?」
箱の蓋を開ける。
あっ!
「パワーカードじゃん! こんなにたくさん?」
得たりとばかりにイシュトバーンさんが笑顔を浮かべる。
「オレが現役の時に使ってたやつだ。かなり珍しいカードもあるんだぜ? あんたが一番有効に使ってくれるだろ」
「もちろんだよ。ありがとう!」
「ゆっくり確認し、使用を検討するといいぜ」
「そーする。今日は帰るよ」
「おう、また来い」
今日は大収穫だなあ。
手持ちのパワーカードの数が増えたのはすごくありがたい。
転移の玉を起動し帰宅する。
◇
「さー、チェックするぞー」
帰宅後にイシュトバーンさんにもらったカードの内訳を確認する。
以下の通りだ。
『ナックル』【殴打】、攻撃力+二〇%
『ニードル』【刺突】、攻撃力+二〇%
『スラッシュ』【斬撃】、攻撃力+二〇%
『アンデッドバスター』【対アンデッド】、攻撃力+二〇%
『ドラゴンキラー』【対竜】、攻撃が遠隔化、攻撃力+一五%
『サイドワインダー』【斬撃】、攻撃力+一五%、スキル:『薙ぎ払い』
『ファラオの呪い』攻撃力+二〇%、即死/麻痺/スタン付与
『風月』攻撃力+二五%、スキル:『颶風斬』、『疾風突』
『鷹の目』命中率+五〇%、攻撃力+一〇%、敏捷性+五%
『スナイプ』攻撃が遠隔化、攻撃力+二〇%
『シールド』防御力+二五%、回避率+七%
『シンプルガード』防御力+二五%、クリティカル無効
『ハードボード』防御力+三〇%、暗闇無効
『武神の守護』防御力+二五%、HP再生五%
『スカロップ』防御力+八%、魔法防御+八%、回避率+一〇%、毒無効
『ファイブスター』火耐性/氷耐性/雷耐性/風耐性/土耐性三〇%
『ボトムアッパー』攻撃力/防御力/魔法力/魔法防御/敏捷性全て+七%
『ポンコツトーイ』経験値獲得率+五〇%
『るんるん』 戦闘中のアイテムドロップ・レアドロップ確率上昇
特徴としては、ほぼ全てが前衛向けのカードだということが挙げられる。
イシュトバーンさん、きっと若い時はパワー系だったんだろうなあ。
「思ったよりあっしらの持ってるカードと被ってないでやすね?」
「ちょっと意外だね」
うちのパーティーは役割分担がハッキリしてるからかな。
同じ前衛でもあたしが火力担当でアトムは盾だし。
普通の物理アタッカーだとイシュトバーンさんみたいに、攻撃用防御用のカード両方をバランスよく揃えたくなるのかもしれない。
攻撃属性を持つカードを二枚、防御系を二枚、残りが『スナイプ』『ポンコツトーイ』『るんるん』というのが通常編成だろうか?




