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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第321話:かなーりすごそうな魔宝玉

 さて、御飯が出てくるまではまだ少し時間がありそうだな。

 もうちょっとイシュトバーンさんと話してるか。

 いや、別にサービスするつもりじゃなくて、お腹減ったのを紛らわすため。


「昨日魔境でかなーりすごそうな魔宝玉手に入れたんだよ。見る?」

「おう、オレに見せるつもりで持ってきたんだろ?」

「うん。話のネタにちょうどいいかと思って」


 その魔宝玉をテーブルの上に置く。

 イシュトバーンさんの口からため息が漏れ、お付きの女性達も目を丸くしている。


「邪鬼王斑珠か。世界にそういくつもない秘宝だな」


 七色の斑の入った美しい珠を見つめ、撫で回している。


「いや、いいものを見せてもらったぜ。目の保養になった」

「これは前座だよ。本命はこれから出すやつだってば」

「えっ?」

「じゃーん!」

「じゃーんだぬ!」


 見るたびに表情の変化する、不思議な輝きを示す珠をテーブルの上に置く。

 うむ、やはりこの未知の魔宝玉は、世界にいくつもない邪鬼王斑珠と比べても遥かにランクが上で間違いない。

 こーゆーものに対して見る目のないあたしでもわかる。


「この石、正体がわからないんだよ。イシュトバーンさん知らない?」

「こ……れは?」


 ふっふっふっ。

 イシュトバーンさんも驚いてるぞ? 

 気分がいいなあ。


「見るからに気品があるでしょ? さっきのよりうんとすごいでしょ?」

「……おう、確かにな」


 イシュトバーンさんったら、超絶魔宝玉から目を離さないじゃん。

 よっぽど気に入ったかな?


「……こりゃあ、何だ? あんたこれをどうやって手に入れた?」

「『アトラスの冒険者』がトレーニングの場として使ってる魔境の一番大きなエリアの、ベースキャンプから遠い北辺に、未知の人形系レア魔物がいたんだよ。そいつのドロップアイテムでさ」

「ほう?」

「邪鬼王斑珠とこれを落としたんだ。多分こっちがレアドロップなんじゃないかな」


 興味津々のイシュトバーンさん。


「未知の人形系レア魔物かよ」

「ウィッカーマンに似てるんだけど、赤くてどことなく女性っぽさを感じさせるやつだった。実際に戦ってみてもウィッカーマンよりずっと強かったよ。倒すのに三ターンもかかった」

「逃げないタイプの人形系だったのか?」


 あ、やっぱイシュトバーンさんは、人形系が儲かる魔物だけど逃げることを知ってるな。


「いや、逃げようとしたよ? でも周りが岩に囲まれてて逃げられない地形のところで戦闘になったんだ。運が良かった」

「運、ねえ……」

「そーゆー事情だから、もういっぺん倒せって言われても難しいな」


 絶世の美女のような、あるいはいたずらっぽい妖精のような魅力を醸し出すその魔宝玉を眺めるイシュトバーンさん。


「で、何だろ、これ? メッチャいい魔宝玉だと思うんだけど」

「何だじゃねえよ。人類が初めて目にする魔宝玉だな。値段などつけられない。褒め言葉さえ見つからねえよ」

「やっぱそーか。未知のメチャ強人形系だったもんなー」


 ウィッカーマンでさえ倒した者がいないと言われていたのだ。

 あの赤いやつのレアドロップなんて、当然初めてのものだろう。

 残念だなあ、すごくいいものに違いないのに。


「イシュトバーンさん、これ預かってくれない?」

「……どういう意味だ?」


 警戒するんじゃないよ。

 いや、イシュトバーンさんはあたしと価値観似てる人だから、もらってくれだと貸し押しつけられたみたいで嫌がるだろうしな?


「値段のつかないものじゃ、例の魔宝玉クエストの依頼対象にならないんだよ」

「評価の基準がないってことか。まあこれほどのものをバカな依頼者にくれてやるのはもったいないわな」

「あたしもおゼゼになんないものいらないしさあ」

「いや、だからと言って……」


 躊躇するイシュトバーンさん。

 別にいいのに。

 ただの石だぞ?


「せっかくだから立派なお屋敷に飾られれば、この石も幸せだと思うんだよ」

「石か……石ね」


 不意に目が合い、そしてともに笑う。


「ハハッ、わかった。預かろう」

「よかった。もう一つ、頼みがあるんだよ」

「何だ? 遠慮せず言ってみろ」

「あたしがいない時、この石を役立てるべき場面があったら、イシュトバーンさんの判断で使ってよ。それで構わないから」

「ん……この魔宝玉をオレの判断で使えだ?」


 イシュトバーンさんが無言であたしを睨む。

 あたしもどうしてと問われると困るのだが、言っておかなければならないことのような気がしたのだ。

 イシュトバーンさんならば、この超絶魔宝玉の価値に相応しい出番を用意してやれるような。 


「……他ならぬ精霊使いの頼みとあれば仕方ない。承ろうじゃねえか」


「やたっ! ありがとう! これで安心だなー!」

「礼を言われるようなことじゃねえよ。しかし……」


 言いかけて口ごもるイシュトバーンさん。


「あんたはどこまで……」

「ん、何?」

「何でもねえよ。そろそろ飯だ」

「やたっ! 御飯だ! 楽しみだなー!」


          ◇


「ごちそうさまっ! おいしかった」

「気に入ってもらえて嬉しいぜ」


 腹一杯食べさせてもらって満足至極だ。


「今日の野菜って『オーランファーム』産?」


 イシュトバーンさんが驚く。


「おいおい、食っただけでわかるのかよ?」

「いや、違くて。『オーランファーム』の息子が冒険者やってて知り合いなの。イシュトバーンさんと取り引きがあったって言ってたから」

「ああ、確かダナリウスとかいう、生意気なガキだったな……」


 懐かしそうな顔になる。

 あれ? イシュトバーンさんはダンに対して隔意ないじゃないか。

 むしろ気に入ってるみたいだぞ?


「母親を亡くして泣きそうな顔してたから、よくからかってやったわ」

「ダンはからかいがいがあるよねえ」

「まったくだ」


 変なとこで意気投合してしまった。


「どうだ、やつは元気でやってるか?」

「イシュトバーンさんのこと、すげえ悪口言ってたよ。『キングオブクソジジイ』だって。『ドーラで最も失礼なやつ』だって」

「ハハハ、褒め言葉かな?」


 メンタル強え。


「おう、忘れるところだった。最後にクエストな」

「クエスト?」

「まあな。『アトラスの冒険者』の『地図の石板』には、原則クエストがつきもんだぞ?」


 言ってることはもっともだけど、こんなに押しつけがましくクエストだって言われたのは初めてだぞ?

 ま、いいや。

 請けてやろうじゃないか。

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