第315話:シスターと仲良くなれた
「汁は水と具入れて温めるだけでいいから、焼きに比べれば簡単だよ。鍋物煮物かれえは皆このジャンルね。特にそっちの世界には、味付けのアシスト材料やレシピたくさんあるんでしょ? 使えるものは最大限に利用するのだ。アレンジは慣れてからでいい」
「師匠、ありがとうございますありがとうございます!」
「シスター、汁物は水の量と焦がすのさえ気をつければ大丈夫ですよ」
「そうなの?」
「うんうん、バエちゃん成長した。かれえやシチューみたいなとろみのあるやつは焦げやすいから、火にかける時は必ずかき混ぜること。煮物が固いな味が染みてないなと思ったら、朝作っといて食べる時にもう一度火入れるくらいでちょうどいいよ」
魔道コンロは火を使うの異常に簡単なのが素晴らしい。
こっちの世界にも魔道コンロが欲しいものだ。
薪&かまどは煙いし火加減難しいし火事の危険が大きいしな。
あれ、バエちゃんまで真剣に聞いてるじゃないか。
よしよし、モテ要素の伝道師ユーラシアのありがたい言葉を聞きなさい。
「続きいくよ。世の中には絶対アカン要素とゆーものがあって、汚部屋や料理しないはそれに当たります。料理は簡単なものからゆっくりやっていけば、すぐにできるようになるから大丈夫。部屋は今度の休みに片付けるんだよ?」
「ぎくっ!」
だから擬音を口にするな。
シスターが汚部屋の主なのは想像できるから。
……でも擬音トークは案外面白いな?
慣れればありかも。
「三つ目、加点要素について説明します」
「加点要素?」
「あればあるほど魅力的に見える要素ってこと。あ、でも絶対アカン要素が一つでもあると、いっくら加点要素あったってパーだから肝に銘じて」
「は、はい」
こんだけ脅しとけば気をつけるだろ。
汚部屋はダメだわ。
何の生産性もないわ。
「バエちゃん、カツラ外してみて」
「え? あ、うん」
あ、大分髪の毛伸びてきたね。
もうハゲ子って言えないくらいだ。
青の族長セレシアさんに作ってもらった、花冠をモチーフにした頭飾りを被せる。
「これは?」
「ちょっとしたお礼だよ。とても似合ってる」
「いやん、ユーちゃんハンサム!」
出ました、高速クネクネ。
「見た?」
「え? 今のやり取りってことですか?」
「違う、バエちゃんの素晴らしい腰のキレを。あの高速クネクネを可能にするしなやかな身体は、確実に加点要素だよ」
あたしから見ても魅力的だもん。
クネクネフェチの男はイチコロだぞ?
「イ、イシンバエワ、あなたどこで腰のキレを身につけたのっ!」
「多分、あのテストモンスターだよ。初めはバエちゃんのクネクネ、あんなにすごくなかったもん」
「意識してなかったけどそうなのかな? テストモンスター変態設定の殴る蹴るは毎日やってるの。時間があるから」
やはり。
他にやることがないとはいえ、バエちゃん侮れん。
継続がちゃんと身になっているじゃないか。
「とゆーわけで、テストモンスターは確実に効果ありまーす」
「私も手に入れて毎日やれば……いや、でも……」
「ま、加点要素はさておき、身体を動かすことは健康にいいよ。あのテストモンスター民間仕様がヒットするくらいなら、そっちの世界は外で運動するのは難しいか、運動の習慣がないかなんでしょ?」
「はい」
「絶対ムダにはなんないよ」
「なんないぬ!」
「そ、そうですね」
「何をためらっているのだ。大丈夫だよ、部屋片付ければテストモンスターは入るから」
「どきっ!」
擬音コミュ面白くなってきたよ。
「とゆーか今から始めるなら、使用前使用後の記録取ればいいじゃん。初めはシスターこんなんでしたけど、使ったらこんなに奇麗になりましたって、宣伝に使えばいい。効果あることわかれば今以上に売れるぞ。ボーナスも入るし、魅力的なシスターをアピールできるでしょ」
「なるほどっ!」
「ユーちゃんアイデアマンねえ」
「アイデアウーマンだとゆーのに。いくらハンサムだからって」
笑いが起きる。
「ユーラシアさん、ありがとうございました」
「ストイックにやる必要はないんだよ。ムリしない範囲で」
「シスター、ムシャクシャしたら変態を蹴り飛ばすのがオススメです」
きっとバエちゃんはちょっとずつ続けてきたんだね。
何にムシャクシャしたんだか知らんけど。
「ところでこっちの世界では修道女全般をシスターって呼ぶけど、そっちは違うの?」
「修道女が任官試験に受かるか、一定の業績を残した者がシスターの資格を得ますね。イシンバエワもこの『アトラスの冒険者』チュートリアルルームを三年以上勤め上げれば、シスターと呼ばれます」
「ふーん、つまり資格みたいなもんなんだな?」
「一種の認定ですね」
知らんかった。
聞いてみるもんだ。
「ユーラシアさんはチュートリアルルームに対して、何か御要望はありますか?」
「要望か。……スキルスクロールの種類を増やしてくれるといいかな」
「なるほど、例えば?」
「ノーコストのスキルは意外と使いやすいんだよ。『プチウインド』とか『プチファイア』とかのプチ系の魔法は、その系列魔法の固有能力持ってても覚えられないから売れると思う」
というかプチ系の魔法は知名度が高くないんじゃないかな?
知られていてしかもスクロールから習得できるとなれば、覚えたい人は少なくないと思う。
掘り出し物屋さんが『プチウインド』を一〇〇〇ゴールドで売ってたところ見ると、お値段高くないだろうし。
「ああ、プチ系の魔法は、誰でも使える汎用スキルとしてスクロール化できますね。可及的速やかに手配いたします」
「お願いしまーす」
そーか、習得に条件があったら売れないもんな。
「冒険者としてじゃないけど、そっちの世界の米を使ったレシピをいずれ教えて欲しいな。ドーラはこの前の魔物掃討戦で、大きい川までノーマル人の可住域が増えたんだ。米を作れるようになったんだよ。来年、試験栽培してみるんだ」
「ユーちゃん、ほんと色々やってるのねえ」
「うん、やってみると面白いことは多いよ」
シスター・テレサを弄ってたら、すっかり長居してしまった。
「ごちそーさま。今日は帰るよ。またね」
「うん、またね」
「お世話になりました。本当にありがとうございました」
シスター・テレサと仲良くなれたのはよかったな。
転移の玉を起動し帰宅する。




