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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第314話:煮物とは具だくさんの汁物なり

 シスター・テレサがバエちゃんを睨んでるけど、あたしがシスターの婚活がはかばかしくないのに気付いたのはバエちゃんのせいじゃない。

 有り体に言えばカンだ。

 異世界うんぬんから話題を遠ざけたいっていう意図もある。


「バエちゃん、ステータス見るパネル起動してくれる?」

「え? はい」


 青っぽいパネルに掌を当てると文字が浮かび上がる。


「固有能力は『自然抵抗』『精霊使い』『発気術』『ゴールデンラッキー』『閃き』、えっ、五つも?」

「ユーちゃんこの前『ゴールデンラッキー』が加わって四つになったんだったよね?」

「何かまた増えた。いつだかはハッキリしないけど、レベルがカンストした時だったかもしれない」

「信じられない……」


 シスター・テレサが呆然とする中、話を続ける。

 シスター・テレサを玩具にしろとカンが囁くから。


「最近増えたのが『閃き』、すごくカンがいいってやつ。バエちゃんが何も言わなくてもシスターの現況くらい想像できるぞってこと。さて、レベル九九『閃き』能力者のアドバイス、聞く?」

「聞きます! ぜひお願いします!」


 よーし、食いついたっ!

 クララが、ユー様また玩具にしようとしてるって目で見てるがその通りだ。

 玩具とは遊ぶためにあるものなり。


「じゃ、まず一つ。認識の乖離とゆーやつがあるね」

「認識の乖離?」

「シスターは自分がバエちゃんと同類だと思ってるかもしれないけど、大きな勘違いです。バエちゃんはモテる側の人です」

「うそっ、私と何が違うのっ!」


 シスターも結構な美人なんだけどな。

 多分バエちゃんと一緒で、言われたことはこなせる人。

 放っておかれると自堕落になる傾向あり。

 でもバエちゃんとは決定的な違いがあるのだ。

 証拠を見せてやるか。


「ヴィル、おいで」

「はいだぬ!」

「バエちゃん、ヴィルをぎゅーしてみてくれる?」

「ぎゅー」

「ふおおおおおおおおお?」

「どうだった?」

「すごく気持ちいいぬ……」


 さもありなん。


「じゃ次、シスターがヴィルをぎゅーしてみて?」

「ぎゅー」

「……」


 あれ、ヴィルのそーゆー反応初めてだな?


「どうかな?」

「余裕がないぬ。無味乾燥だぬ」

「ヴィルは好感情が大好きな悪魔なんだよ。その子にこう言われちゃうようでは、内面から滲み出るものにバエちゃんとは大きな差があると考えざるを得ない」

「がーん!」


 衝撃を受けているようだ。

 自分じゃわかりづらいことかもしれないからな。


「シスターも美人なんだけど、張り詰めたような雰囲気が印象よくないんだよね。隙のありそうな人はモテます。バエちゃんなんか、隙が服着て歩いてるようなもんでしょ?」

「確かに……」

「ひどーい」


 バエちゃんは怒ってるようで怒ってない。

 のほほんとしてるのもプラス要素だよな。


「シスターはできる女オーラを前面に出すのがいいかも。性格は変えようのないところはあるけど、態度に出すか出さないかで全然違うことは覚えておいてね。余裕のないところを他人に見せるのは絶対ダメ」

「勉強になります」


 シスターメモ取ってるけど、必要かな?

 頭でっかちはモテないぞ?

 身体で感覚を掴み取るのだ。


「続いて二つ目、隙とポンコツは違います」

「く、詳しく!」


 メッチャがぶり寄ってくるなあ。

 余裕ないのはダメだってば。

 ポンコツの自覚があるんだろうか?


「今日の焦がしたかれえがそうだけど、いつもできてることをたまに失敗するのは隙の内。ドジっ娘属性として加点です。いつもうまくできないのはポンコツで減点」

「ぐさっ!」


 さっきから何だそれ?

 擬音を口に出すな。

 減点するぞ?


「バエちゃんも二ヶ月前は紛うことなきポンコツだったよ? 料理はできないし汚部屋の主だし」

「ユーちゃん、ひどーい」

「ただの事実だとゆーのに。でも今は大体克服してる。バエちゃんの偉いところだね」

「料理や掃除をイシンバエワが? とても信じられない……部屋が片付いてるのは、たまたまじゃなかったのね」


 ハハッ、バエちゃんが得意げな顔してる。

 できなかったことができるようになるのは自信に繋がるのだ。


「当然シスターは料理できないんだよね?」

「はい」


 普通は『当然料理はできるんだよね?』って聞くのが正解なんだろうけど、答えが火を見るより明らかなんだよなー。


「こっちの世界では料理できないのに結婚とかおこがましいんだけど、そっちは?」

「お、同じデス」

「覚えようか」

「は、はい」


 途端に自信なさそうな顔になるなよ。

 しょうがないなあ。


「料理とは高等魔術ではありません。元々食べられる食材を、より食べやすくするだけです。いいかな?」

「はい」

「料理は生、焼く、汁、三つだけで十分」

「えっ?」


 料理人じゃないんだから、難しいレシピをいくつも覚えてりゃ偉いんじゃないんだよ。

 ややこしい手順のいる料理なんか時間がもったいないわ。

 そっちの世界は料理アシスト材料がたくさんあるでしょ?

 活用しろ。


「想像してみてちょうだい。葉野菜とトマトのサラダ、目玉焼き、パンとスープ、どこから見てもちゃんとした朝食でしょ?」

「本当だ!」

「生は切るだけだから問題ないよね。ナイフと包丁に慣れるだけ。続いて焼きにいきます。じゃあ目玉焼き作ってみようか」

「はい師匠! 目玉焼きなら……」

「昔習ったことがあるから楽勝? いいからやってみて」


 フラグを見事に回収、黒色炭化物を錬成しました。

 これと鶏卵一個が等価交換かと思うと笑えてくるね。

 泣き顔のシスターに声をかける。


「昔のバエちゃんを見るようだ。バエちゃん、教えてあげて」

「えっ? はい。まずフライパンを熱して油引いて……」


 ふむふむ、いい感じ。


「できた……!」

「よし、シスターはやればできる子だ。卵は火加減難しいから侮れないよ」

「そうなんですね?」

「そうそう。でも逆に卵を上手に焼けるなら、焼き肉も野菜炒めも普通にできる。これで生と焼きは卒業」


 シスターの目がキラキラしてきたぞ。

 希望が見えてきたろ?


「最後の汁いきまーす」

「師匠、世の男性は煮物というジャンルの料理に憧れるようですが……肉じゃがとか」

「煮物なんてジャンルは考える必要ない。物事はシンプルに捉えようか。煮物とは具だくさんの汁物なり。はい、復唱して」

「煮物とは具だくさんの汁物なり、言われてみれば……」


 目から鱗が落ちたか?

 『茹で』は汁を使わない汁物だ、という迷言。

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